「消費者は再びモノを買うようになるのか?」という話について

久しぶりにブログを書いてみます。というのも、だいぶドライアイが改善したからです。ありがとうございます。ということで、早速ドライじゃない目線で書き綴ってみたいと思いますw。

さてさて、旅行とかリフォームとかわりと堅調なようですけど、やっぱり個人消費がぱっとしないようです。ニトリの創業者、似鳥昭雄さんも「個人消費が腰折れしている」とおっしゃっていますが、最近はあの小売業の勝ち組「しまむら」ですら苦戦しているというニュースが流れてきました。

日銀は2%の物価上昇目標を先延ばしにばかりしていますが、現実的にモノが売れないと困る企業は、イオン、セブン、無印、ユニクロなどなど、未だに低価格化路線をひた走ります。賃金が少し上昇していている中で企業努力で価格を下げてくれるわけですから消費者としてはありがたい限りですよね。企業としては苦しいですね。政策的に値上げされた酒類にはそっぽをむくなどなかなか手厳しいですよ。消費者は。

そんなわけで本日は、なぜモノが売れないのか、何が消費社会で起きているのかということを少し考察をしたいと思います。

1.モノ余りだからモノが売れない
これは確かにそうですよね。日本人のほとんどが欲しいものを手に入れてしまった。大量生産大量消費時代は終わったということですね。

2.将来が不安だからモノより貯金
健康寿命がどんどん延びている中で、年金はあてにならないし、どうやって老後を送ろうかと考えると、消費なんてしてられないですよ。やっぱり貯金でしょ。これは高齢者中心に確実にありますね。

3.通信料負担でモノが売れない
ネットやスマホの通信料の負担が家計にのしかかりその分、みんな節約している。これも確かにありそうですよね。スマホ関連に月額2万円くらい使っている人は若い人を中心にいそうですよね。最近は格安スマホも普及しはじめていますがね。

4.欲しいものがないから買わない
企業努力が足りないというやつです。ちゃんとマーケティングしてくれれば買ってやるよ。ほら、iPhoneとか爆発的に売れたでしょという話ですね。まあ、これはいつの時代でもありますよね。

5.コト消費のためにモノは買わない。
世の中、「インスタ映え」時代です。やっぱりインスタできるレジャーを楽しまないとね。モノなんて買っている場合じゃないですよ。これも若年層を中心にありですよね。

6.モノを持つことがダサい
時代は断捨離ですよ。スマホ一台もって世界を旅するのがおしゃれなんだよね。高級車やら宝飾品やら買い込んでいるのはダサいですよって。まあ、時代の空気としてありかもしれませんね。


細かい話を上げればきりがないんですが、この6つの切り口は良くニュースなんかにもなりますよね。それで、このモノが売れない時代を象徴しているのが、デパートの凋落なんですよね。ここ数年ずっと売上が右肩下がりです。地方のデパートなんてどんどん閉鎖されてもいます。デパートの業績が厳しい最大の原因は、アパレルが売れないことです。今まで売り上げの7割近くをアパレルに頼ってきましたからね。アパレルがダメになると一緒にダメになるという構図です。

昨日、7月の最終日曜日に新宿伊勢丹を覗いてみたんですけど、日曜日、夏休み、セールとかなりスペシャルな日のはずなのにアパレル売り場には人混みはありませんでした。まあそういう時代なんでしょうね。

じゃあ、ユニクロしまむらが人気なのかというと最近はそうでもないというわけです。しまむらで買い物することを楽しんでいた「しまむらー」と言われる人たちも最近は勢いがないらしいのです。アパレル全体が厳しいんですね。やっぱりモノが売れてないわけです。

唯一、売上を伸ばしている分野はネットなんです。ZOZOは破竹の勢いで業績を伸ばしていますし、アパレルメーカーもネット直販に力を入れているんですが、リアルの落ち込みはぜんぜんカバーできないという状況です。もうみんなファッションに興味なくなっちゃったんですかね?。

この小売業界が厳しいという話は、日本だけじゃなくて米国も同じらしいんですよね。先日、こんなニュースが流れていました。

「アマゾンではなかった。アメリカの小売業を低迷させた2つの元凶」(Business Insider)

記事の内容を要約すると、米国のデパートをはじめとする小売り業がバタバタと閉鎖や破産に追い込まれているがこの理由は、一般的に言われるネットに消費を奪われたということでなく(なぜなら全体の小売市場に占めるネット消費はまだ8.5%程度でそこまで大きな影響はない)、原因はほかにある。一つは過剰出店、需要を完全に読み違えている。そしてもう一つは、消費態度の変化、人々はモノよりコト消費に走っているという話です。

米国は人口がまだ増えていますし、経済成長も日本を上回っている、というか、米国の消費が世界経済をけん引しているといってもいいはずなのに、やっぱり小売業は困っているってことになると、日米で共通にある現象が「モノが売れない原因」として、とても怪しいですね。やっぱりキーワードは「コト消費」であり「インスタ映え」ってことになるんでしょうね。

ここ10年あまりで消費社会に大きなインパクトを与えたものが「スマホ」と「SNS」であることは間違いないです。そしてこれは根底を流れる小売業のリアルからEコマースへのシフトという現象よりも、「速く劇薬的に社会の消費のあり方を変えている」と考えざるをえなくなります。

ストレートに言うと、SNSでつながっている人たちに自分の生活を自慢したいアピールしたいと考えると、消費者が向かう先は、モノではなく完全にコトなのです。モノはSNS上ではなかなか自慢しずらいのです。レストランや旅行、スポーツそれはイキイキとした自分の生活を嫌味なくみんなに知ってもらうために格好の小道具となっているわけです。


ちょっと話がずれますけど、ぼくが若かりしころ、デザイナーズブランドブームというのがありました。なんだかよくわからないでけどみんな狂ったように新鋭のデザイナーブランドの服を買い、身にまとったものです。日本は単一民族でマスメディアが行き届いているからブームを作りやすいといいますが、まさにとんでもないブームでした。でも、あとから何であんなに熱狂したんだろう?と考えてみると、ブランドの服を着て学校や職場で友人知人に自慢するというのもあっただろうし、合コンやデートで異性に自慢するというのもあっただろうけど、「そのデザイナーブランドをを買う行為そのものがカッコ良かった」んだと思います。つまり、当時はショッピングそのものがアクティビティーでありコト消費だったわけです。

振り返って、いまショッピングすること自体がコト消費になっているものありますかね?ブランドショッピング?ピンときませんね、みんなの憧れのモノであるはずの自動車?あまり胸躍らないでしょw、それを買う行為そのものがかっこいいことってあまりないんですよね。唯一アップルの新製品を買うとか、村上春樹の新作を買うとかいう行為にはそんな匂いが残っているかもしれませんw。つまり、モノが売れない理由はモノそのものに魅力がなくなってしまったというよりも、モノを買う行為そのものの魅力の欠落、モノとともに存在していたコトを失ってしまったことにあるのではないかと思います。


さらにSNSが普及することで、消費者がコト消費にむかうと、タイムシェアにも大きな影響が及びます。まったくコト消費的な魅力を失ったモノのショッピングを消費者は邪魔者扱いしはじめているわけです。つまり「お店に行って買い物する時間がもったいない」ショッピングの時間を節約して、その時間を「インスタ映えすることに充てたい」そう考えて、人々はEコマース(ZOZOやメルカリ)にシフトしている気もするわけです。Eコマースの普及は便利で手軽だからという必ずしも前向きな理由ばかりではないということです。少し後ろ向きなコトのための節約術なのですw。

大量生産時代を揶揄したデュシャンだったらインスタ映え消費をどう芸術にするのかw

なんかダラダラと書いてきましたが、そろそろまとめます。「消費者を小売店にもう一度呼び戻すためには何をすればいいのか?」と考えれば考えるほど、そのために新しいブランドや珍しいモノをいくら取り揃えてもダメじゃないかと思います。ショッピングそのものが自分の生活をいきいきと表現でき他人に自慢できるコトの要素を持たなければその復活はないんじゃないかと思います。

ぼくはデパートの催事が大好き少年でした。特に今も印象に残っているのはアポロが月面着陸したと年に、全国を巡回していたアポロ展で月の石を買ったことです。絶対偽物だと思いますwでもその石ころを握りしめて、月を眺めたものです。自分が月の上を地球の重力の1/6で移動している姿を想像したものです。すばらしいショッピング体験でしたw

売店の皆様にはぜひ「インスタ映え」に負けない素晴らしい付加価値のある物語を紡いでいただいてぼくらをワクワクさせていただきたいと思います。

最後に、スマホの使い過ぎのみなさん、ドライアイにはくれぐれもお気をつけください。