世の中は事業のタネで溢れているという件について

私が初めて日本代表を国立に応援しに行ったときには、客席に数百人しかいなかったんですよ。それに比べればどんなに盛り上がらないワールドカップも私の中ではいつも吉野家の牛丼特盛。なかなか勝てないサッカー日本代表が叩かれていますが、人それぞれ、まあ、様々な思いがこの4年間にあって、言いたいことは山ほどあるでしょうが、今週はもうワールドカップロシア大会の開幕ですよ。みなさん、せいおっぱい、いや違う違う、精一杯、応援していきましょうw久しぶりにブログを書きますが、サッカーの話ではありません。今日は事業を起こすということはどういうことかというお話です。なぜこんなことを書くかというと、いまうちの会社でビジネスコンテストをやっているんですが、参加する人に少しでも頭を使って考えてもらおうと、私が主催で社内勉強会を開きました。先日。それで、せっかくだからその話を少しブログにまとめて、事業企画で悩んでいる人に少しでも参考にしてもらえればと思ったからです。

マーケティングのたとえ話に、「ドリル」「穴」の話がありあす。これは聞いたことありますよね。「顧客はドリルが欲しいのではなく、ドリルで開けた穴が欲しい」という話です。ドリルメーカーはドリルを売るために一生懸命努力をする。例えば性能を上げたり、デザインを良くしたり。販売方法を考えたり。ところが、このドリルを買う顧客はそんなことはどうでもよくて「穴さえ開けばいい」と考えている。このミスマッチがマーケティングを失敗に陥れるというわけです。ありがちな話ですよね。
だから、マーケティングを志すものは、自分たちの都合や思い込みで商品を作ったり売るのではなく、顧客の声をしっかり聴いて顧客が望んでいることを実現しなければならいという戒めのような話なわけです。この話をもう少し突き詰めていくと、マーケティングから事業の話に変化していきます。
いいですか。顧客がドリルで開けた穴を求めているということに、気づく人がいれば、こんな事業が誕生します。「そうかドリルを売る必要はないな、貸し出そう」ドリルレンタル事業の誕生です。「顧客にドリルを渡す必要はない。穴を開けに行こう」と思えば、「ドリル穴開け」サービスの誕生です。
さらに、顧客の一人がこんなことに気づくかもしれません。「ドリルの穴を開けるなんて、1年に一回あるかないかだな」と。じゃあ、ドリル穴開けサービスなんて利用しなくても、ドリルを持っている人が近所にいればそれを借りた方がいいな。ドリルを貸してくれる人のリストを作ろう。こんどは「ドリル・シェアリング」サービスの誕生です。このように、穴を開けるためのドリルを売るという行為は、「穴が欲しい」という顧客の求めているの価値を本質的に捉えなおすことで、新しい事業を生み出していくわけです。さらにですよ。そもそも論で言いますと、そもそも、ドリルの穴は何のための必要だったのか?という話になります。家具を組み立てるために必要だったのか?家に配線するために必要だったのか?その利用の目的があるわけです。今度は「穴の向こう側」ですよね。もし家具を組み立てるための穴を求めているなら、ネジで止めずに組み立てることができる仕組みを考案すればそれは事業になりますし、極端な話、家具そのものを売ってしまえば、そもそも組み立てる必要すらなくなるじゃないか。そう、この話は無限に広がっていきます。たった一つのドリルの穴からこんなにも様々な事業やサービスが生まれる可能性があるのです。


その起点になるのが「本質的な価値の捉え方」です。


先日こんな話を聞きました。天体望遠鏡メーカーの話です。高い技術力で天体望遠鏡の高いシェアを持っている会社ですが、市場がなかなか広がらない。危機感を持った社長さんがうちは「星を見せる会社である」と宣言をしたそうです。この宣言によって、この会社の優先順位は大きく変わります。「人々に星を見せるにはどうしたら良いか?」という新しい価値観の導入によって、性能の良い天体望遠鏡を作ることよりも、星を見せる場所にどう人々を連れてくるか?とか、どう興味を持ってもらうか?というこの方が優先順位が高くなるわけです。またこの価値観を持ち続けるということは、ファンを増やし、天体望遠鏡の購入者が増え、自然と市場が広がっていくことにつながる。この新しい価値の発見は、まさに新しいユーザーの発見であり、新しい事業の発見だったといえるわけです。


こんな感じで、今まで頑なに「ぜったいこうあるべきだ」と考えていたことが、ある日、ふと「いや待てよ。本当はこうじゃねーか?」と、新しい価値観に出会うことで、まったく新しい事業が生まれるわけです。


もう少し、みなさんが良く知る事業で、どんな新しい価値の発見があってその事業が生まれたのかを考えてみましょう。例えば「ライザップ」です。「ダイエット×ジム」で一躍急成長し、大きな市場を作りました。今ではこのビジネスモデルで新規参入する事業者が後を絶たないよですが、このビジネスが始まった時の市場状況を考えてみると、「ダイエット」はあらゆるダイエット法が本になり、メディアで情報が垂れ流され、完全にコモディティ化しており、面白みも何もない市場です。ジムも既に街中に乱立している感があり、従来のやり方では飽和市場に見えていたと思います。何年かに一度、ダイエット法で一時のブームを作り出すことはできても、まさかライザップのように継続的な新しい市場を生み出せるとは誰も考えてなかったのではないでしょうか。

そこへ「結果にコミットする」という価値を引っ提げてライザップが参入するわけです。「痩せることに成功したら費用をいただく」という成功報酬型のダイエットサービスだから上手くいったんだと、今だから言えるかもしれませんが、誰でも考えるかもしれないこのアイディア、なかなか実行に移せないですよね?。だってみんな途中であきらめてしまいそうだし、思うように痩せない人多そうだしwそれでは創業者の瀬戸さんはどんな価値の発見があって実行に移せたのでしょうか?

それは、「ダイエット」を「自分で立てた目標にもっとも手軽にたどり着ける”自信”を手に入れる行為である」と置き換えられたからだと思います。人はいつも弱い。自分で目標を立ててもなかなかそれをクリアできない。ダイエットはその中でもっとも簡単にクリアできる目標の一つであり、自分の見かけが変わることを目に見えて実感できる。目標を達成する素晴らしさを体感できる。そして「私にもできるんだ!」という自信を手に入れることができる。だからこそ「うん十万円」という費用を出しても、この自信が買えるなら安いものだと考える。この価値の発見がライザップという事業を産んだのだのではないかと思います。実際、ライザップは急成長したがゆえに様々なメディアに叩かれたりするのですが、まったく需要が衰えませんでした。いまだに価格競争に陥る気配もありません。それはなぜか?(もちろん結果を見せるCMも効果的だと思いますが)それは体験者である顧客が「自信」を手に入れて、ライザップの良さを周りに伝えて、支えているからじゃないかと思います。「私はやり切ったんだぞ!」という思いは、やがて友人や家族に「あなたにもできる!」という自信の輪になって伝わっているのです。


次に、誰も知っているユニクロについて考えてみましょう。飽和消費社会、人口減少社会である日本では90年代後半からファッション市場が縮小し続けてきました。アパレルメーカーが次々に没落していく中、なぜユニクロは躍進、成長したのか考えてみましょう。今でこそ安いし、品質も良いし、お店も全国津々浦々にあるし、売れて当たり前でしょうという感じですが、ユニクロが成長した過去20年の歴史はそんな生易しいもではありません。アパレル苦戦の時代の中で創業者の柳井さんはどんな価値を発見することで事業を拡大できたのでしょうか?

最大の発見は、「ファッションは高所から提案するものでなく、消費者に同じ目線で選んでもらうもの」ということではないでしょうか。ユニクロが登場するまでの日本のアパレル産業はデザイナーズブランドやハウスマヌカンに代表されるように、ファッションリーダーが庶民にいち早く流行をキャッチして、提案してやっているんだよ感が満載だったと思います。「俺たちの言うことを聞け」的な状況は、消費者が店舗に入ることすら躊躇させるくらいお高くとまったものでした。それを柳井さんは、店頭にずらっと衣類を並べて、あたかも日用雑貨を選ぶように消費者に自由にファッションを選べるようにしたのです。「ファッションは特別なものではない。コモディティである。だとすれば売り方も雑貨屋と同じでいい」という新しい価値観の発見ですね。ユニクロやその後日本に参入してくるファストファッションにとって都合よかったのは、デパートの高所ビジネスとアパレルメーカーがべったり癒着していたことなどもありますが。(いまだにデパートでは入りずらい雰囲気の店ありますよねw)
もちろん、柳井さんの発見はそれだけではなくて、ヒートテック、エアリズムのよう「服に機能を持たせる」ということや、製造から販売まで一貫して行うSPA体制や様々あるわけですが、ユニクロのビジネスモデルの根底には「ファッションはコモディティだ」という価値観が脈々と流れているわけです。

後から振り返ると、「そんなの当たり前だよ」と思うことも、ちょっと想像力を働らかして、その時代の市場や時代背景を考えてみると、その当時にそんな新しい価値の発見が良くできたなと思える。そこに事業の起点があるわけです。


アパレルの話をついでにもう一つ。何かと話題の前澤さん率いるZOZOについて考えてみましょう。ZOZOはアパレルECモールとしては国内で不動の地位を築いています。そして満を持して登場してくるのが、プライベートブランドです。販売チャネルをコントロールできるようになったわけですから、次は当然PB商品を作り、さらにZOZO商圏を堅牢なものにしようと考えるのは当然の流れです。流行もいち早く取り入れられるし、利益率も高いですし、価格のコントロールもしやすい。なによりファストファッションはみんなそういうビジネスモデルなのですから。

しかし、前澤さんは単純にはZOZOブランドを出さなかった。世界の一流デザイナーとコラボするとか、企業や大学の研究室と共同で新素材を開発するとか、ユニクロのようなアイディアは当然あったと思います。ところが、皆さんもよくご存じのZOZOスーツの提供というまった新しいアプローチに踏み切った。ここが起業家としての前澤さんのすごいところで、新しい価値の発見がないと、事業としてうまくいかないことが良く分かっている。例えそれがリスクが高くても。起業家の性のようなもなんでしょうね。この場合、従来は「サイズはメーカーが決めていた」というのを「サイズは自分で決めるもの」への新しい価値観への転換です。従来の価値観を180度移動させるわけですから、すごいことですよね。しかもデータによる新しい商習慣はネットに販売チャネルを持っている強みを最大化するわけですからね。


こんな例を上げるときりがないんですが、事業や新しいサービスを立ち上げるときに一番大切なことは、「儲かる」ことでもなく「新しいテクノロジーを利用している」ことでもなく「斬新なアイディアがある」ことでもなく「今このテーマがトレンドだから」でもなく、「従来の価値観をひっくり返すような(あるいは否定するような)新しい価値観の発見がある」ということなんですよね。

そしてさらにいうと、この「新しい価値観の発見」を事業に展開して、誰かに説明したとき、その相手の人が「うーん」と腕組みしちゃって悩んじゃうような計画を立てないといけなと思います。ダメそうで上手くいきそうな、なんとも反対もできないような物語になっている必要があります。なぜかというと、もろ手をあげて賛成!みたいな話は、発見したと思った価値観に、あまり新しさがない可能性が高いからです。よく事業は反対されたものの方がうまくいくという話聞きますよね。反対とはまさにこの新し価値観に対する「人々の拒絶反応」なんですが、反対する人が多ければ多いほど、価値観が新しいという証明になるわけです。


そしてもう一つ、この「新しい価値観の発見」で大切なことは、新しい世界がぱーっと広がる世界観を持っていることです。よく「これは独自の世界観がある」とかいうじゃないですか。この世界観があるっていうのは、言葉で表すのはすごく難しいと思いますが、事業計画を見ただけで、価値が置き換わった後の新しい世界が想像できるといいますか、次々に情景が目に浮かび、物語が広がっていくといいますか、「こんな世界があったらいいなあ」とか「自分だったらもっとこうしてみたい!」とか、とにかくかくそんな感じですかね。

先日もツイッターでつぶやきましたが、私はスタバが事業を展開するときに設定した「第三の場所(Third Place)」というというコンセプトが大好きです。これは自宅ではなく、オフィス(学校)でもない、私たちの3番目の居場所を創ろうという考え方なんですが、もしスタバの創業者が「高級カフェ」とか「おしゃれなカフェ」を創ろうという話ばかりをしていたとしたら「ふむふむ、あんな感じかな」とイメージはすぐ浮かぶんですが、それ以上でも以下でもないんですよね。ところが、「第三の場所」と言われた瞬間、自分の新しい隠れ家というか、新しいリビングというか、新しいオフィスというかとにかく気持ちよくいられる場所ってどんなんだろうといろいろ想像してイメージがぐーっと広がるんですよね。これって、こらからこういうスタバを作るぞ!ってスタバで働く人たちにすごいメッセージ性があると思うんですよ。だって利用者に第三の場所だと認めてもらうわけですからね。ライバルは他のカフェじゃなくてリビングやオフィスなんですからね。スタバの世界観が伝わってきますよね。


こうした事業の「新しい価値観」から生まれる「世界観」が大切な理由は、創業者が自分の作る事業という物語にワクワクできるているのか?ということにもつながってきます。自分でお面白がっているかですよね。だって、いまは常識と思われる価値観がすでにあって、それで世の中動いているのに、自分の発見した価値観で世の中を少し動かすことができるかもしれないわけです。そうなった後の世界が想像できたりすると、これはもうワクワクするしかないですよね。逆にいうと、このワクワク感がない事業なんていくつ考えても意味がなくて、自分がワクワクできるまで何度も何度も事業を否定しないといけないと思うんですよね。なぜなら、自分がスタートポイントとなって事業をはじめるということは、協力者(出資者やスタッフ)も消費者も含めて、自分の新しい価値観に共感してもらわなければ、事業が前に進むことはないわけですからね。自分がワクワクしないことで他人をワクワクさせることできますか?それは日本がワールドカップで優勝するより難しいかもしれませんw


では、逆のアプローチで新しい発見がありそうで「それは新しい価値観の発見じゃあないよなあ」という例を少しあげましょう。

例えば、美容予約サイト(アプリ)事業を立ち上げたい。なぜか?少子高齢化の日本でも美容市場は成長市場でリクルートホットペッパービューティーが売上も利益も伸びている。でも、先日、美容室で美容師さんに聞いたらホットペッパービューティーを利用しているが集客単価が高く、非常に不満があると言っていた。市場調査をしたらみんな同じようなことを言っている。ホットペッパービューティーより価格を低く抑え、差別化したサービスを事業化したい。事業計画や資金調達はこんな感じです。ってよくありがちな事業計画です。

市場もあるし、競合もいる、美容師さんや自分の友人からニーズを聞いたりしていて独自の視点もある、これで十分事業として成立しそうに思えるんですが、何かが足りないんですよね。そう、もうお分かりですよねwユーザーから見た「新しい価値観」への転換が何もないんですよ。別にユーザーは、ホットペッパーだろうが新しいサービスだろうが関係ない。広告を出す美容室にとっても費用対効果で価値はあるかもしれないが、新しい価値観にまではまったくたどり着いていない。一言でいうと「なーんも今ある常識をゆさぶっていない」んですよね。


例えば、インバウンド向け情報サイト(アプリ)事業を立ち上げたい。なぜか、自分は旅行好きで、情報サイトを利用するが、自分が利用したいようなメディアがなかなかない。自分が助かるようなものを作りたい。日本への旅行者は3000万人、これからもっと増える。市場は大きい今のうちにブランドを確立したい。

この話も、市場性があり、自分の興味を起点にしているのでビジョンもある。でもでもですよ。やっぱり「新しい価値観」の発見がないんですよね。今の当たり前に基づいて組み立てているんですよね。旅行者にとって情報ってどんな意味があるのかという本質に踏み込んでいないような気がするわけです。


さて、これも例をあげているときりがないので、このへんにしますが、ここでもう一度、いままでの話をまとめますね。長くなりましたw

事業づくりで大切だと思うことは、

1.新しい価値観の発見がある
2.新しい価値観からぱっーと広がる世界観(物語)がある
3.新しい世界を想像して自分自身がワクワクできること


だと思います。


なんかこう書いてくると、事業を考えるということは、すごく難しいことをやらなきゃいけないような印象を持たれる方もいるかもしれませんが、逆に事業のタネは、私たちの周りに溢れていると思うんですよ。なぜなら、私たちはいつも「その時代の当たり前」に取り囲まれて生きているからです。これは人間社会の中で、あるいはメディア社会の中で生きていくには仕方ないことですよね。しかし、ちょっと立ち止まって、その常識といわれている価値観の本質的な意味を考えてみると、時代や環境の変化の中で価値観そのものがずれていたり、もっと本質に近づける道具(テクノロジー)が存在している可能性があるわけです。もう一度違う言葉で繰り返しますね。人間は生きている限り、快適に過ごすために常に何かの問題解決をしたいと考えている。この「問題解決をしたい」何か。この本質に迫ることができれば新しい価値観に出会うことができるはずなのです。これは何も特別なスキルを持った世界の人たちだけのものではなく、ぼくたちも毎日一人の人間として生活しているわけですから、ぼくたちの周りにもチャンスはゴロゴロしているはずだと思います。ただそれを見つけようとしていないだけなんですよね。


もちろん、事業を儲けるためにはじめて儲かっている人もいるでしょうし、トレンドにのって一儲けする人もいるでしょう。それは、人それぞれだと思いますが、やはり事業の醍醐味は、自分で発見した価値観で、社会が変わるということにあり、それで周りを巻き込んで新しい物語を作り出すことにあると思うんですね。


「いまどんな立場にあるか」「今まで何をやってきたか」人々はそれで人間を評価しようとします。それが現代社会の常識というものですねw。

けれども、事業を志す者は「これから何をやるのか」「いま何ができるのか」によって評価されるのです。これは現代社会から見ると、新しい価値観ですよね。どうです?こう考えると自分の住んでる世界が広がりませんか?自分の価値が高まりませんか?w

若いとか高齢とか、経験があるとかないとか、金持ちだとか貧乏だとか、偉いとか偉くないとか、まったく関係ない社会で評価されるわけです。それも事業を起こす素晴らしさですね。そして、なんと事業を考えることは無料w誰でもできる最高に楽しいゲームなんですよ。

ということで、私の話は終わります。はあー思ったより長くて疲れました。最後にくれぐれも言っておきますが、サッカー日本代表は勝っても負けても既に私たちの日本代表です。ロシア大会、思いっきり応援しましょう。


@ankeiy

なぜTwitterで拡散するのか、その構造について

ひどいドライアイでブログなど書けないというのもありますが、書かないとほんと書かなくなっちゃいそうなので、たまには書いています。Twitterでバズったツイートがあったので、そのツイートがなぜ拡散するのかということについて少し考えて、SNSで情報を拡散したいと考えている人たちの少しは参考になればいいと思います。

今回取り上げるツイートはこれです。


12月7日の朝投稿され4日経ちましたが9.4万リツイートされて、12.2万いいねされていますね。
詳しいアクテイビティは以下とおりです。

864万インプレッション発生して、36万7500回のなんらかのアクションが取られたということですね。1ツイートとしてはなかなかの数字ですが、興味深いのは13万4000回も詳細表示がされているということです。これは(よくわかりませんが)このツイートについた、リプライを確認しているんだと思います。実際、リプライの中にはそれ単体で1万リツイートを超えているものもあり、バズったツイートの返信もそれなりに拡散されて、その拡散からまた本家のツイートにユーザーが還元しているのではないかということも想像できます。

プロフィールのクリック数は14300回、だいたいこのツイートはどんな人がしているのだろうと確認しているんだと思います。これも推測ですが、だいたい10人に一人くらいが発信元の信頼性を確認しているんじゃないでしょうか。プロフィールを確認して、私をフォローしてくれた人は、なんとたったの23ユーザーw。プロフィールを確認した人の0.16%です。もっともぼくのプロフィールは「犬好きです。猫好きです。美術史好きです」というわけのわからないものですから、これは仕方ないですね。フォロワーを増やしたい人は、やはり「叔母がプーチンの奥さんの姉で、叔父がビルゲイツの奥さんの弟です」くらい書かないとダメでしょうねw


前置きはさておき、本題の「なぜこのツイートが拡散されるのか」ということについて考えましょう。
まずは、このツイートの前提となるのは、NHKの受信料が合憲か違憲かの判断が最高裁であった翌日にされたものであるということが大きいことは言うまでもありません。みんなニュースで知っているし、Twitter上でも「#NHK受信料」のタグが話題になっていたんだと思います。

次にこのツイートは「NHKから未払い受信料30年分の請求が来たら」と実際にはありえそうもない例え話から始まっていますが、みんなの心の中に、受信料が合憲だとすると「今まで払っていなかった人はどうなるんだ?」という共通の疑問があったのだともいますが、まずはそれにヒットしているわけです。そもそも、30年前からNHKを見ていたことのエビデンスを取らなければならないのでNHKが実際そんなこと出来ないと思いますがw。

次にその皆さんの心配について答えを書いています。民法消滅時効を持ち出しています。時効の消滅を宣言すれば、受信料は5年分で済みますが、しなければ30年取られますよというように、少し脅し気味に書いています。これは実際NHKの受信料に当てはまるのかどうか、受信契約の概念が問われるので実際にアクションをしてみないとわかりませんが、新聞社も書いていたので、たぶんこういうことになるんだと思います。

この答を見た人はどう思ったかというと、「なるほど!」と同時に「知っている人は得をして、知らない人が損をするって不公平じゃねーか」となります。しかも相手は天下のNHKです。ここで巨大権力への怒りがむかむかと沸いてきますw。過去に自分がNHKから受けた理不尽が一気に噴出ですw議論はそもそもNHKが必要なのかどうかまで広がります。実際リプライもそれ系が多くついてくるわけです。

最後の「知識ってやっぱり大切ですね」という一言も拡散には欠かせません。情弱という言葉をみな自分に当てはめることを恐れているとともに、そうだ「これは、みんなに教えてやらなきゃいけない情報なんだ」という善意をくすぐることになります。これは直接リツイートにつながっていくわけです。


さて、それではそろそろまとめます。拡散するツイートの秘密は、


1.旬のニュースに絡める
2.たとえ話で共通の疑問をくすぐる
3.疑問の答えを意外な方向から持ち出す
4.巨大権力にたいする不平不満を引き出す
5.「みんなに知らせないといけない」と思ってもらう


ということになるかと思います。

私はこの4日間、このNHK問題で自分のTwitterの通知は埋め尽くされ、ひどい目にあいました。NHKというキーワードでミュートしても効かないのです。Twitterのバグでしょうか。NHKの陰謀でしょうかwとにかく私のこの体験がみなさんのTwitterライフの役に立てば幸いです。立つわけないかwそれではまた〜


@ankeiy

「消費者は再びモノを買うようになるのか?」という話について

久しぶりにブログを書いてみます。というのも、だいぶドライアイが改善したからです。ありがとうございます。ということで、早速ドライじゃない目線で書き綴ってみたいと思いますw。

さてさて、旅行とかリフォームとかわりと堅調なようですけど、やっぱり個人消費がぱっとしないようです。ニトリの創業者、似鳥昭雄さんも「個人消費が腰折れしている」とおっしゃっていますが、最近はあの小売業の勝ち組「しまむら」ですら苦戦しているというニュースが流れてきました。

日銀は2%の物価上昇目標を先延ばしにばかりしていますが、現実的にモノが売れないと困る企業は、イオン、セブン、無印、ユニクロなどなど、未だに低価格化路線をひた走ります。賃金が少し上昇していている中で企業努力で価格を下げてくれるわけですから消費者としてはありがたい限りですよね。企業としては苦しいですね。政策的に値上げされた酒類にはそっぽをむくなどなかなか手厳しいですよ。消費者は。

そんなわけで本日は、なぜモノが売れないのか、何が消費社会で起きているのかということを少し考察をしたいと思います。

1.モノ余りだからモノが売れない
これは確かにそうですよね。日本人のほとんどが欲しいものを手に入れてしまった。大量生産大量消費時代は終わったということですね。

2.将来が不安だからモノより貯金
健康寿命がどんどん延びている中で、年金はあてにならないし、どうやって老後を送ろうかと考えると、消費なんてしてられないですよ。やっぱり貯金でしょ。これは高齢者中心に確実にありますね。

3.通信料負担でモノが売れない
ネットやスマホの通信料の負担が家計にのしかかりその分、みんな節約している。これも確かにありそうですよね。スマホ関連に月額2万円くらい使っている人は若い人を中心にいそうですよね。最近は格安スマホも普及しはじめていますがね。

4.欲しいものがないから買わない
企業努力が足りないというやつです。ちゃんとマーケティングしてくれれば買ってやるよ。ほら、iPhoneとか爆発的に売れたでしょという話ですね。まあ、これはいつの時代でもありますよね。

5.コト消費のためにモノは買わない。
世の中、「インスタ映え」時代です。やっぱりインスタできるレジャーを楽しまないとね。モノなんて買っている場合じゃないですよ。これも若年層を中心にありですよね。

6.モノを持つことがダサい
時代は断捨離ですよ。スマホ一台もって世界を旅するのがおしゃれなんだよね。高級車やら宝飾品やら買い込んでいるのはダサいですよって。まあ、時代の空気としてありかもしれませんね。


細かい話を上げればきりがないんですが、この6つの切り口は良くニュースなんかにもなりますよね。それで、このモノが売れない時代を象徴しているのが、デパートの凋落なんですよね。ここ数年ずっと売上が右肩下がりです。地方のデパートなんてどんどん閉鎖されてもいます。デパートの業績が厳しい最大の原因は、アパレルが売れないことです。今まで売り上げの7割近くをアパレルに頼ってきましたからね。アパレルがダメになると一緒にダメになるという構図です。

昨日、7月の最終日曜日に新宿伊勢丹を覗いてみたんですけど、日曜日、夏休み、セールとかなりスペシャルな日のはずなのにアパレル売り場には人混みはありませんでした。まあそういう時代なんでしょうね。

じゃあ、ユニクロしまむらが人気なのかというと最近はそうでもないというわけです。しまむらで買い物することを楽しんでいた「しまむらー」と言われる人たちも最近は勢いがないらしいのです。アパレル全体が厳しいんですね。やっぱりモノが売れてないわけです。

唯一、売上を伸ばしている分野はネットなんです。ZOZOは破竹の勢いで業績を伸ばしていますし、アパレルメーカーもネット直販に力を入れているんですが、リアルの落ち込みはぜんぜんカバーできないという状況です。もうみんなファッションに興味なくなっちゃったんですかね?。

この小売業界が厳しいという話は、日本だけじゃなくて米国も同じらしいんですよね。先日、こんなニュースが流れていました。

「アマゾンではなかった。アメリカの小売業を低迷させた2つの元凶」(Business Insider)

記事の内容を要約すると、米国のデパートをはじめとする小売り業がバタバタと閉鎖や破産に追い込まれているがこの理由は、一般的に言われるネットに消費を奪われたということでなく(なぜなら全体の小売市場に占めるネット消費はまだ8.5%程度でそこまで大きな影響はない)、原因はほかにある。一つは過剰出店、需要を完全に読み違えている。そしてもう一つは、消費態度の変化、人々はモノよりコト消費に走っているという話です。

米国は人口がまだ増えていますし、経済成長も日本を上回っている、というか、米国の消費が世界経済をけん引しているといってもいいはずなのに、やっぱり小売業は困っているってことになると、日米で共通にある現象が「モノが売れない原因」として、とても怪しいですね。やっぱりキーワードは「コト消費」であり「インスタ映え」ってことになるんでしょうね。

ここ10年あまりで消費社会に大きなインパクトを与えたものが「スマホ」と「SNS」であることは間違いないです。そしてこれは根底を流れる小売業のリアルからEコマースへのシフトという現象よりも、「速く劇薬的に社会の消費のあり方を変えている」と考えざるをえなくなります。

ストレートに言うと、SNSでつながっている人たちに自分の生活を自慢したいアピールしたいと考えると、消費者が向かう先は、モノではなく完全にコトなのです。モノはSNS上ではなかなか自慢しずらいのです。レストランや旅行、スポーツそれはイキイキとした自分の生活を嫌味なくみんなに知ってもらうために格好の小道具となっているわけです。


ちょっと話がずれますけど、ぼくが若かりしころ、デザイナーズブランドブームというのがありました。なんだかよくわからないでけどみんな狂ったように新鋭のデザイナーブランドの服を買い、身にまとったものです。日本は単一民族でマスメディアが行き届いているからブームを作りやすいといいますが、まさにとんでもないブームでした。でも、あとから何であんなに熱狂したんだろう?と考えてみると、ブランドの服を着て学校や職場で友人知人に自慢するというのもあっただろうし、合コンやデートで異性に自慢するというのもあっただろうけど、「そのデザイナーブランドをを買う行為そのものがカッコ良かった」んだと思います。つまり、当時はショッピングそのものがアクティビティーでありコト消費だったわけです。

振り返って、いまショッピングすること自体がコト消費になっているものありますかね?ブランドショッピング?ピンときませんね、みんなの憧れのモノであるはずの自動車?あまり胸躍らないでしょw、それを買う行為そのものがかっこいいことってあまりないんですよね。唯一アップルの新製品を買うとか、村上春樹の新作を買うとかいう行為にはそんな匂いが残っているかもしれませんw。つまり、モノが売れない理由はモノそのものに魅力がなくなってしまったというよりも、モノを買う行為そのものの魅力の欠落、モノとともに存在していたコトを失ってしまったことにあるのではないかと思います。


さらにSNSが普及することで、消費者がコト消費にむかうと、タイムシェアにも大きな影響が及びます。まったくコト消費的な魅力を失ったモノのショッピングを消費者は邪魔者扱いしはじめているわけです。つまり「お店に行って買い物する時間がもったいない」ショッピングの時間を節約して、その時間を「インスタ映えすることに充てたい」そう考えて、人々はEコマース(ZOZOやメルカリ)にシフトしている気もするわけです。Eコマースの普及は便利で手軽だからという必ずしも前向きな理由ばかりではないということです。少し後ろ向きなコトのための節約術なのですw。

大量生産時代を揶揄したデュシャンだったらインスタ映え消費をどう芸術にするのかw

なんかダラダラと書いてきましたが、そろそろまとめます。「消費者を小売店にもう一度呼び戻すためには何をすればいいのか?」と考えれば考えるほど、そのために新しいブランドや珍しいモノをいくら取り揃えてもダメじゃないかと思います。ショッピングそのものが自分の生活をいきいきと表現でき他人に自慢できるコトの要素を持たなければその復活はないんじゃないかと思います。

ぼくはデパートの催事が大好き少年でした。特に今も印象に残っているのはアポロが月面着陸したと年に、全国を巡回していたアポロ展で月の石を買ったことです。絶対偽物だと思いますwでもその石ころを握りしめて、月を眺めたものです。自分が月の上を地球の重力の1/6で移動している姿を想像したものです。すばらしいショッピング体験でしたw

売店の皆様にはぜひ「インスタ映え」に負けない素晴らしい付加価値のある物語を紡いでいただいてぼくらをワクワクさせていただきたいと思います。

最後に、スマホの使い過ぎのみなさん、ドライアイにはくれぐれもお気をつけください。

クロネコヤマトの苦境を「創業者、小倉昌男さんだったらどう考えるか」という長いタイトルの話

クロネコヤマトの宅配便が苦しんでいます。ネット通販が成長する中で、特に昨年はアマゾンの躍進もあり、宅配市場の取り扱い個数が6.4%もアップしたそうで、年間総貨物個数は38億個にもなっているそうです。需要が加速しているんですね。最大手のヤマトホールディングスですら「急成長」「人手不足」の中で相当苦戦しているようです。

市場が拡大するというのはビジネスとしてはうれしい悲鳴なんでしょうけど、急激な変化に組織も仕組みも対応しきれていないというのが実情のようです。
実際ヤマトホールディングスの2017年3月期の1月〜12月までの決算を見ると、売上は1兆1181億円と前年より3.1%伸びているのにもかかわらず、経常利益は583億円と前年より8%も減少してしまっています。4割を超えるシェアも若干落としてしてまっているんですかね。

それで、これから宅配市場どうなるのかというと、日本の商取引に占めるEコマースの利用率ってのはまだたった5%前後、これからさらに増加することは間違いなく、この急拡大はしばらく続きそうなんですよね。

未来においては大規模物流拠点のロボット化や自動運転、あるいは地域住民を活用したシェアリングサービスなどテクノロジースマホの能力をフル活用して、生産性の大幅な改善やイノベーションが待っているんだと思いますが、しばらくは大変な状態が続きそうです。


クロネコヤマトの宅急便は、1976年2月にスタートしています。ちょうど今から41年前ですね。クロネコヤマトの宅急便が始まるまでは、郵便小包しかなかったんですよね。ぼくも子供のころの記憶がうっすらありますけど郵便小包って送っても到着まで1週間とか平気でかかる、それをクロネコヤマトの宅急便は翌日配送でしかも低料金という画期的な仕組みで市場をゼロから作ってきたわけです。いま私たちが日々利用している宅配システムはまさにクロネコヤマトの宅急便が作り上げたといっても過言ではないのです。

そこでいい機会なので、ぼくが大好きな経営者、宅配便の父、クロネコヤマトの宅配便を創業した小倉昌男さん(以下、小倉さん)をこのブログで紹介したいと思いたちました。

小倉さんには一冊だけ著書があります。「小倉昌男 経営学」(日経BP社)です。この本が魅力的なのは、小倉さんの名声やヤマトホールディングスのPRのために書かれたような本じゃないところにあります。ちょっと「まえがき」から小倉さんの記述を引用させていただくと

クロネコヤマトが成功した後)ヤマト運輸の社長だった私のもとに、本を書かないか、という依頼が次々に舞い込んできたのはちょうどその頃である。けれども、私は一切お断りした。成功した経営者が自らの経営談義を出版すると、やがて起業自体は不振に陥り、一転、失意に陥るーそんな例をいくつも見て来たらである。(中略)

経営者の頃にさまざまな決断をしてきたが、なぜそうしたかを社員に詳しく説明しないことが多かった。社長である自分がどうしてそう考えたのか。いま改めて話してみるのも意味があるのではないかー。そう思ったから本書を書こうという気持ちになったのである。生涯に最初にして最後の1回限りの著作である。

しかも私は、物を売ったり販売したりした経験はない。運送のことしか知らないから、一般のお役に立つとも思えない。サクセスストーリーを書く気はない。乏しい頭で私はどう考えたか、それだけを正直に書くつもりである。

引用長いです。すみません。でももう「まえがき」からしびれますね。この謙虚さ。生涯たった1冊の著書なんですよ。経営者なんて調子いい生き物ですからちょっと有名になると調子こいて何冊も本だしたり講演したりするんですがw、小倉さんはそんなことは決してしてこなかった。でも自分の経営判断や考え方が後進の役に立てばという思いで、70歳を過ぎてから書かれたものなのです。

この「小倉昌男 経営学」は1999年初版ですから出版から既に18年の月日が流れています。いまだに多くの人に支持され38刷まで版を重ねています。小倉昌男さんは残念ながら2005年6月お亡くなりになってしまいました。享年80歳。本当に名経営者、いや真のアントレプレナーだったと思います。

小倉昌男さん(以下、小倉さん)は、現ヤマトホールディングスの創業者というわけではありません。父親が1919年に創業したヤマト運輸を引き継いで社長となった方です。いわゆる二代目社長です。大塚家具の社長さんも頑張ってほしいと思います。あっ、関係ないかwしかし、小倉さんが引きついだとき、近距離路線で大きくなったヤマト運輸は、長距離輸送時代に乗り遅れ、じり貧状態だったわけです。そこで同じように長距離路線に進出するんですがまったく先行組に追いつけず利益がでない。そこで苦しむわけです。なんとか会社を成長させないといけない。そこで決断したのが「宅配」への進出なわけです。宅配便にすべてのリソースを集中しようと決断させた背景には牛丼の吉野家があったそうです。「吉野家が儲かるのは単品商売だから、だから私も一つのサービスに集中しよう」と考えたそうです。そこからは苦難の道のりです。みんなから絶対に成功しない、あいつはバカだと思われる中、自分のビジョン、経営理論を忠実に実行し、最後はあの誰でも知っている「クロネコヤマトの宅急便」に育てあげるわけです。まあ、その苦闘の経営については本書に譲ることにして、ここではでは、現在宅配市場で起きている問題に、この小倉さんが立ち向かったらどう判断するのかということについてを考えながら、その人となりを紹介していきたいと思います。

まずはこの問題、

「アマゾンの配送を引き受け「正直しんどい」 過酷すぎるヤマト運輸の実態」

とにかく日本でのアマゾンの躍進はすさまじいものがあります。年商が1兆円に到達したとかしないとか。この成長を支えているのは間違いなく日本の宅配システムです。しかし、あまりにも手軽なゆえに配送個数が増え、しかも宅配業者への手数料が安いので厳しいという話がニュースになっています。佐川急便はいち早く撤退をしてしまい、ヤマトホールディングスがいまやアマゾンを支えているという状況です。そこで単刀直入に小倉さんだったら「ヤマトホールディンスのアマゾン撤退はあるのか?」を考えてみましょう。

これは、間違いなく、

「あります」

というのも、小倉さんは宅配便に参入した直後に、ヤマト運輸の屋台骨を支えていた三越とのお中元お歳暮の宅送取引を切るという大ナタをふるっているからです。この時は、50年以上続いた最大顧客との契約解除だったので苦渋の決断だったようですが、三越サイドの理不尽な対応に相当頭にきていたようです。もし、アマゾンがヤマトホールディングに理不尽な条件を押し付けてくるようなことがあれば小倉さんならさっさとて撤退したと思います。もっとも三越を切った当時は、宅配ビジネスが急成長している中でできた決断すが、今回、アマゾンという顧客を失うことで、新しいサービスに注力できるかどうかがポイントなると思います。例えば宅配というサービスそのものを利用してネット通販事業よりイニシアティブを取れるような何かです。もちろん、アマゾンもヤマトを失うわけにいかなでしょうから、厳しい交渉になると思います。アマゾンプライムの料金が年間3900円ですから、これに2000円上乗せして、その分をヤマトに支払うなど対応があれば問題ないかもしれません。顧客側にとっては満足度後退ですが、これをベゾスさんがどう考えるかwこれはこれで許しませんよねwクロネコプライムでも作ったらどうでしょうかw

続いてこの問題、

「ヤマト運輸、荷物の抑制検討へ 人手不足で労働環境悪化」

小倉さんだったらこの「人手不足の問題をどう乗り越えるのか?」について考えてみましょう。

まちがいなく、従業員の報酬を上げても徹底的に人員を増やす投資を行うと思います。それは小倉さんの経営哲学の根本に「サービスが先、利益が後」という考え方があるからです。利益はでなくともとにかくサービスを優先しなければいけない、徹底した顧客志向を続けていけばおのずと利益は後からついてくるという考え方です。これは人材についても明確に「社員が先、荷物が後」と語っています。

こはちょっと引用しましょう

人員が増えると、人件費が増えるといって警戒する経営者が多い。それは人のデメリットに着目した考え方である。経営の健全化とか経営のリストラというと、社員の削減が施策の中心なっていることが多いが、私はそのことに常に疑問を感じている。(中略)
人員が増えると人件費が増えるというデメリットは結果であって、その前に生産性があがる、収入が増える、というメリットがあるはずである。もちろんメリットがなければ人など増やす必要はない。だが、人件費を増えるのは嫌だといって人を増やさなかったら、企業の活力は失われてしまうだろう

こんなふうに続けます。

私が唱える「サービスが先、利益が後」という言葉は、利益はいらないと言っているのではない。先に利益のことを考えるのをやめ、まず良いサービスを提供することに懸命の努力をすれば、結果として利益は必ずついてくる。それがこの言葉の本位である。

実際、ヤマト運輸は宅配便をはじめた最初の5年で3,620名を、次の5年で14,330人を採用し、10年で従業員を17,950人も増やしているのです。とんでもない一気の増員ですw

また、小倉さんは、労働環境を改善させるために「安全第一、営業第二」というキャッチフレーズでキャンペーンをしたことがあります。「営業もがんばれ、安全もがんばれって何でもかんでも第一にするから何が第一かわからなくなってうまくいかない」だから安全第一にしろと明確にメッセージしたと言っています。とにかく従業員あってのヤマト運輸という考え方を徹底的にもっていました。

こうした考えは後に「全員経営」という経営の目的と目標を明確にした上で、従業員に可能な限りの裁量権を持たせ仕事を責任をもって遂行してもらうスタイルにつながっていきます。

ここも良い話なので引用しましよう。

全員経営とは、全社員が同じ経営目的に向かい、同じ目標を持つが、目標を達成するための方策は社員一人ひとりが自分で考えて実行する、つまり社員の自立的な行動に期待するのである。社員に目標は与えるがやり方について命令したり指図したりせず、社員がその成果に責任をもって行動する、というものである

労働時間の管理責任はセンター長にあり、所属員が月間の労働時間の枠や年間休日を守っているかどうか、監視している。全員経営は会社の企業文化である。宅急便のSD(セールスドライバー)は、優しく親切な人が多いとといってお客様にほめられることも多い。もちろん社員に対する研修は一通りやっているが、サービスは受けるお客様の立場に立ち、どうすべきかを判断し実行するという、ヤマト運輸の企業文化が社員の体質にしみ込んでいるからだと思いっている。

と小倉さんは語っています。

「ヤマト、巨額の未払い残業代 7.6万人調べ支給へ」
こんなニュースも流れていますが、ここは小倉さんの原点に戻り、まずは過去を清算しあらためて「全員経営による生産性改善」に取り組むタイミングなのかもしれませんね。

最後はこの問題、

「クロネコも耐えられないネット通販、米国ではどのように対処しているか」

そうです。クロネコヤマトの宅急便のビジネスモデルが、ネット通販時代にもう時代遅れで、新しい仕組みに変えるべきではないかという話です。米国ではネット通販が始まってから仕組みがイージーになり、受領サインがなくなったり、安全な場所に荷物を置いて再配送をしないようにしたりしているし、配送はせいぜい2日か3日、即日配送なんて考えられなくなっているようです。日本もそうしたネット通販時代の新しい仕組みをつくるべきじゃないかという問題です。

ところが日本ではアマゾンはもう「PrimeNow」というサービスで2時間便や1時間配送まで手掛けはじめていますし、先日ドン・キホーテもアマゾンに対抗して58分で届けるとか言い始めていますし。さらに宅配時間を短縮する流れになっているわけです。もっともこの流れの一番源流はというと、それはクロネコヤマトの宅急便の「日本全国翌日配送」なのです。小倉さんは宅急便をどこにでも翌日に届けられるネットワークにサービス開始時からとてもこだわっていました。

小倉さんはこんなふうに語ります。

荷物の輸送で一番値打ちがあるのは、「早い」ことである。「確実」とか「安い」ということも大事だが、やはり早いのが一番だ。だが、ただ早いというのではセールスポイントにならない。具体的に「翌日着きます」と言わないとインパクトが感じられない。

もしネット通販時代なのだから、サービスの品質を少し落としてもいいんじゃね?っていう話になるなら間違いなく小倉さんの返答は「Nooooooooooo!」ですね。絶対に「サービスが先、利益は後」の精神に立脚して可能な限り高速で届けるようにするでしょうね。

こういう話をすると、「ちょっとまて消費者はそんな早く届けることを望んでいない」もっと遅くしても大丈夫だという人がいると思いますが、それはそうかもしれませんが、優れた経営は人間の本質について考えると思います。買ったものが手元に1分1秒でも早く届くっていうのは、ほかにメリットがない限り必ず誰もが持っている本質的なニーズだと思うんですよね。だとすればそこを目指して最大限努力するわけです。

さてさて、スゲー長くなってクロネコヤマトより自分も疲れてきていますので、ここらで話をまとめますとw

小倉さんなら今の宅配市場の混乱の中で「ヤマトホールディングスが赤字に転落しても社員を採用しまくり、時代背景にあった報酬を支払い、全員経営の精神で社員の生産性を上げつつ、サービスのレベルは一切落とさず、顧客に可能な限り早く届ける仕組みを作っていくと思います、それによって伸びる市場でシェアを広げる」というアクションを取るでしょうね。

「おいおい、そんなことできるかって?」小倉さんならあきらめずにやるでしょうねw何せヤマトホールディングスのセールスドライバーは既に6万人もいるんですからねw

小倉さんはテクノロジーやシステムにも強いですよ。いまのウォークスルーできるトラックもトヨタと開発しましたし、クール宅急便の冷蔵トラック、あれだってテクノロジーの塊なんですよね。人とテクノロジーを組み合わせてどんな未来の物流を作るか、もしこの時代に小倉さんが現役だったら、この苦難を前に

「いよいよ面白くなってきたぜ」

って感じじゃないでしょうか。

最後にクロネコヤマトの同じみのこのマーク、母親猫が子猫をくわえて運んでいるんですが、お母さんが子供を大切に運ぶように荷物を運びたいという小倉さんの創業の想いが込められているんですね。

ぼくたちも宅配便を利用するときは、そうした想いに感謝したいものですね。

@ankeiy

紺屋勝成さんの思い出について

先日、紺屋勝成さんのお別れの会に参加してきました。紺屋さんは昨年末53歳という若さでこの世を旅立ってしまったのだけれど、お別れの会に参加してこのブログに紺屋さんとの思いでを少し書いておこうという気持ちになりました。たいした話じゃありませんがw

紺屋さんがガンで闘病していることは知っていました。奥様が公職を投げて看病に専念されるということだったので相当厳しい状況であることは容易に想像できたのですが、胃がんで摘出手術に成功されて一命をとりとめたのだとばかり思っていました。闘病生活中にも何度かお会いしたのですが、そんな悲壮感を微塵も感じさせず、順調に回復しているものだとばかり思っていました。

昨年の夏過ぎにいよいよ大変な状況になって、厳しい科学療法を選択しなければならなくなったとき、その治療を開始する前日に本人が自ら録画したビデオがお別れの会で流されました。5年5か月前に発見されたガンはすい臓がんで発見されたときは、すでにステージ4のb(他の部位に転移がある)という末期の状態で、そこから家族とごく一部の医療チームとだけ情報を共有して戦ってきたこと、厳しい戦いだったゆえに誰にも病気の状況を伝えずここまでやってきたこと、心配してもらっているにも関わらず、伝えられなかったことを心苦しく思っていて、もし自分に万が一のことがあったらいけないのでこのビデオを撮り感謝を伝えたい、という内容を淡々と語っていました。。紺屋さんらしく、冷静に淡々と。そのビデオの中の紺屋さんのどこか一点を突き刺すようなそれでいてどこかやさしさのある目を見ながら、どれだけの恐怖を乗り越えてきたんだろうとか、限りある時間をどんなふうに使ってきたんだろうとか、いろいろ想像していたら、ぼくも涙をもらわないわけにはいきませんでした。

ぼくが紺屋さんと初めて会ったのは1996年ころだったと思います。もう20年以上も前の話です。ぼくがリムネットというインターネット接続サービスの運営会社の取締役をやっているときに、紺屋さんがマッキンゼーから転職してきました。マッキンゼーといえば、当時すでに大前さん率いる超優良コンサルティングファームでしたから、プロバイダーなどという時代の先端的な事業をやっているとはいえ社員数60名程度のベンチャー企業にそんなすごい会社から30歳前後で仕事がバリバリできる人がやってくるなんて、なんて変わった人だろうと思いっていました。しかも東大卒だというじゃないですか。紺屋さんがインターネットの可能性に並々ならぬ思いを抱いており、いてもたってもいられずにネット業界に飛び込んできたということがこの後だんだんわかるのですがね。(リムネットのオーナー社長が、ものすごくエキセントリックな人でその魅力に引かれてやってきたっていう面もちろんあったと思います)

それから約1年半くらい紺屋さんと一緒に仕事をすることになりました。紺屋さんからはマッキンゼー流のプレゼンの仕方や会議の進め方などいろいろ教えてもらいました。30歳前後で井の中の蛙になりがちなぼくにとってはとてもありがたかったです。しかし、年齢が近いこともあり、ぼくの方が先にネット業界に入っていて俺の方が知っているなどというくだらないプライドがあり、ちょっと距離をとってしまっていたところもあったと思います。今考えればあの時もっとがっつりといろいろ教えてもらえば良かったなと思います。ほんとくだらない自意識。


紺屋さんとぼくは取締役という立場で、社長を含め3人で毎週社長室に集まりミーティングをすることにしていたのですが、当時、みんな必死だったと思いますが、インターネット接続サービスにキャリアが次々に参入してくるとか景気があまりよくなく直接、間接金融市場からの資金調達が厳しくなる中で、ほんと激変の時代でしたけれど、会議中に社長と口論になることが頻繁にありました。それはそれは厳しいミーティングでしたw。そんなとき紺屋さんがよく間に入ってくれて、まあまあ二人とも落ち着いてという感じで、常に冷静に話を進めようとしてくれていたことをいまでよく覚えています。ぼくの話もしっかり聞いてくれました。

紺屋さんは時々黒のポルシェ・カレラでオフィスに来ていたんだけど(奥様のかな?)、そのカレラがいつもほこりだらけで、指で落書きされていました。後部座席にゴミがそのままになっていたりして、「ああ、こういうことはほんとあまり気にしない人なんだなあ」と思いました。ぼくも車なんて性能発揮して動けばいいと思っている方なので、これはこれで親近感を持ちました。付き合っているうちにだんだんわかってきたんですが、ほんと、あまりいろいろなことを気にしない人で、みんなが知っていることをよく一人だけ知らない感じで、ある意味天然入っていて、ものごとをロジカルでロボットのように進めるくせに、ドジな面があって人間らしい人だったなあ。と思うようになってきました。

そのカレラで紺屋さんの家まで行って酒をのんだことがありました。あれは1997年だったかなあ。アジアで通貨危機があってNY株式市場が急落して、世界中が連鎖して大変だったんだけど、ちょうどその日だったんですよね。そしたら、紺屋さん、自信たっぷりに「この相場はすぐ戻るからチャンスだ、俺は株をたくさん買う」と自信満々に言っていて、さすがだなあ、ビジネスマンだなあって思ったことを覚えていますよ。もちろんそのあと株価はV字で回復して儲かったと思いますよ。

あとこんな逸話もあります。紺屋さんが夜中に胃炎で病院に救急車で運ばれたときのこと。胃が痛くてどうしょうもないので、隣で寝ている奥様を起こしたらしいんですが、まったく起きないので、自分で救急車呼んで病院に行らしいんだけど、翌日、奥様から会社に電話があって「うちの紺屋が朝からいないんですが、出社していますか?」って「何言ってんですか、奥さん、大変ですよ。病院ですよ」って言ったら「えー!」ってことになって、なんとも紺屋さんとその奥様らしい話で、この話も紺屋さんと飲むときよく酒のつまみにしましたw

そうそう、青山墓地にリムネットの社長のキャンピングカーで乗り込んで、夜中にバーベキューやったこともありました。墓の前でさんざ騒いで、確か長谷川さんのお墓だったかなあ。帰り際に、これじゃあバチが当たるかもしれないと二人で手を合わせて声を出して「ごめんなさい」と謝ってきましたw
単なる酔っ払いですねw

そういえば、時々やったマージャンも冷静沈着で強かったなあ。



リムネットが外資企業にM&Aされることになって、ぼくはリムネットをやめることになってしまったんだけど、紺屋さんはその後何年かリムネットに残ってしばらく業務全体を執行していました。ほんと個人的には激動の時代で、ぼくは小さな子供二人抱えて無職になったわけですから、案外泣きそうで、何とか食っていかないといけないということで、仕事くれそうなところ回って、いくつかの雑誌や新聞に原稿書いたり、書籍出してみたり、知り合いの会社を手伝ったりなんてしてなんとか食いつないでいたわけで、その後、忙しさにかまけて紺屋さんともほとんど連絡を取らないようになってしまいました。

リムネットをやめた後の紺屋さんは外資ベンチャーキャピタルにいたり、自分でベンチャーの立ち上げをしたりしていて、風の便りではときどき聞いていたんだけど、ぼくも自分の会社を立ち上げていっぱいいっぱいで、連絡を取らないようになっていました。でも、一度日曜日の午後とかに「いま会議中なんだけど、柳澤さん○○詳しいよね。教えてくれる?」とか電話が突然あって、「ああ相変わらず休みなしで忙しく働いているんだなあ」と思ったことがありました。

次にぼくが時々会うようになったのは、USENの取締役に就任された後です。ギャガがUSENの子会社になり、集客にネット広告使えないかと相談があって、そのあたりからまた年に1、2度お酒を飲むようになりました。

ある時、紺屋さんの奥様がTVのバラエティに出演されていて、それは「うち飯は料理せずにネット通販で取り寄せして済ませている」とかいう「えーー!」て感じの衝撃的な内容で、「あれテレビの演出でしょ?」って聞いたら、さらりと「あのとおりだよ」というこれまた紺屋さんとその奥様らしい話で酒の席でだいぶ盛り上がりました。

またある時は、紺屋さんが酔っぱらって何度か財布やケータイ全部どっかに忘れて帰宅したりしていて、奥様がさすがに怒って「禁酒」を言い渡されて、さすがに酒飲めなくなったときがあったんですが、奥様がたまたま海外出張で、鬼のいぬまにということでたらふく飲んで夜中まで大騒ぎしたこともありましたw

いつだったか、たぶんぼくが上場して、そのあとライブドアショックがあって、世の中からネット企業が白い眼で見られていたようなタイミングだったと思いますが、紺屋さんの奥様もネット企業の社長なわけですがやっぱり苦戦していて、酒飲んでいるときに紺屋さんがぽろっと「うちのはアイディアと馬力はあるんだけど経営がいまいちで、柳澤さんは経営がうまいから、うちのやつの会社と一緒になったらきっとうまくいくと思うよ」と言ったことがあって、紺屋さんの奥様が経営が下手とはまったくおもいませんがw、そんな風にぼくのことを見ていてくれたのかと思うとすごくうれしかったことを憶えています。


さて、お別れの会では、紺屋さんをサポートした医療チームの先生が弔辞を読まれていて、その先生が紺屋さんのビデオを見た後に、そのようなビデオが残されていたことに驚き、5年以上、数週間おきに命をつなぐための決断を冷静にしてきた紺屋さんを称えていました。良い結果が出ても悪い結果が出ても、しっかりロジカルに捉えて前に進む紺屋さんらしい話だなあと思いました。奥様もご挨拶の中で「紺屋が関係者の中で一番冷静でした」と言っていました。とにかくそういう人です。

医療チームの先生が、紺屋さんの心配は2つある。一つは奥様のこと。そしてもう一つは自分のことをみんなが忘れてしまうんじゃないかということ。なんていう話もされていました。奥様は大応援団がついているのでまったく心配ないと思いますが、みんなが忘れないように少しでも紺屋さんの思い出をネット上に残しておこうとそのとき思いました。紺屋さんの名前で検索すると、死亡記事ばかりじゃ味気ないですしね。

奥様がご挨拶の中で、NHKの朝の連ドラ「あさが来た」の主題歌が好きだったというお話されました。
ぼくも毎日見ていたんですが、紺屋さんも見ていたのかな?ベンチャースピリット、ファーストペンギンの話ですからね。

主題歌「365日の紙飛行機」のさびの部分の歌詞に次のような言葉が並びます。

人生は紙飛行機
願い乗せて飛んで行くよ
風の中を力の限り
ただ進むだけ
その距離を競うより
どう飛んだか 
どこを飛んだか
それが一番大切なんだ

この「距離を競うより、どう飛んだか、どこを飛んだか、それが一番大切なんだ」の距離を自分の人生になぞらえて共感していたのではないかという奥様のお話しでした。53年は確かに少し距離は短かったけど、紺屋さんのその飛び方と飛んだ場所は素晴らしかったのではないかなあとぼくも思いました。特に闘病生活中の5年5か月の生活は、奥様の懸命の支えもあり辛く苦しくもあったでしょうけど、濃密な時間だったんじゃないかなあと思いました。紺屋さんが闘病中に50歳になったときに誕生パーティーをしたんですけど、その時お会いした紺屋さんと奥さんの照れくさそうな、それでいてすごくうれしそうな仲の良いお二人が忘れられません。

(写真は50歳のパーティでいただいた、闘病生活中に陶芸を一生懸命習われたという紺屋さんの作の箸置きです。)


お別れの会の会場の祭壇には紺屋さんの笑顔の大きな顔写真があり、ギョロっとした鋭い眼でこっち見ているもんですから、ついつい「紺屋さん、ぼくはこれからどんなふうに生きていけばいいかな」と聞いてみました。

そしたら

「柳澤さんは柳澤らしく、焦らないでやっていけばいいんじゃない」

って言われたような気がしました。

ありがとう。紺屋さん、安らかにお眠りください。


@ankeiy

「消費かよ」という視点でとりとめのない未来の話をしてみましょうか

突然ですが、世の中にモノがなかった時代は生産者がものすごく強かったわけです。手作りしていたものが工業化され、大量生産され、科学の進歩とともに何度も人間社会はイノベーションをおこしますが、主役はいつも生産者でした。

少しその景色が変わったのがアメリカでスーパーマーケットなどの小売業態が誕生したからです。この流れは戦後日本にもどっと入り込んできます。総合スーパーは規模のメリットを利用して消費社会で成長していきます。このときは売り方にイノベーションが起こったわけです。生産者は作ったものをたくさん売って儲けたい、消費者は生産者が作ったものを購入して生活をもっと豊かにしたい。その両者のニーズをつなぐものがまさに小売流通業だったわけです。しかし、はじめは良好に見えたこの生産者と小売業者との関係は時を経てぎくしゃくし始めます。両者の目的に次第にずれが生じてきたからです。

生産者は「できるだけ高く売って儲けたい」あるいは「生産と価格をコントロールしたい」、小売業者は「できるだけ安く売って消費者を喜ばせたい」あるいは「でいるだけ安く売って他の競合する小売業者に商売で勝ちたい」と考えるようになりました。「そんな安く売るんだったらお前のところには商品を卸さないぞ」という生産者、正規のルートじゃない、倒産品でもいいからとにかく現金で仕入れてきて自分たちの値付けで売る小売業者、そんなにらみ合いのケンカがはじまったわけです。

しかし、これもしばらくすると、結論が出ます。その答えを出したのは消費者です。消費者は「安いほうがいいに決まってるじゃん」と言ったのです。結果、小売業の大勝利で、小売業者は生産者から次第に価格のイニシアチブを手に入れることに成功します。「おいおい、消費者様がそう言っているんだぞ。生産者はその値段で作らなきゃ売れないぞ」「お前らの利益はお前らの知恵とコスト削減で出すように」と。こんな感じです。

この時に生産者が消費者に対する価格決定の優位性を手放すことになったもう一つの理由に生産者が直接小売流通をネットワークしてしまっていたこともあります。モノがない時代は自分たちの商品を直接消費者に届けるための独自のチャネルが有効に機能していたんですが、いざ多商品時代になると、他社製品と比較検討できないこの独自チャネルが逆にお荷物になるわけです。いわゆる「負の資産」です。生産者が持っていた小売機能が小売業者との戦いでお荷物になる皮肉な話です。

さて消費社会の一面をみているので誤解がないようにしてほしいんですが、もちろん生産者がまずモノを作らないと小売業は売れないわけなので、その生産者の地位が下がったというわけじゃないんですが、誰がモノづくりのイニシアチブを持ったかというと消費者とより近い位置にいた小売業だったということです。

そしてここからは小売業が消費社会のリーダーとなります。まずは総合スーパーがけん引し、次にドンキーのようなディスカウントストア形態、ヤマダ電機ユニクロニトリのような専門店による大規模チェーンストアへと進化していきます。自動車社会や居住地のドーナツ化など社会環境やインフラの変化をうまく取り込みながら消費者のニーズを満たしていくわけです。その最高峰に位置するのがコンビニです。もっとも消費者に近いラスト100メートルの商圏を築くことで消費者の懐に飛び込むことに成功したわけです。そこで吸い上げられた消費者の声はモノづくりの情報としてフィードバックされ、ヒットすることが当たり前のようなプライベートブランドが次々に誕生します。従来のような生産者と小売業者というようなカテゴライズすら破壊されてしまう新しいイノベーションです。小売業の生産者化です。小売生産業の誕生です。

現在も小売業がイニシアチブを取って消費社会は変化して続けています。そしてその最大の焦点はネット社会からテクノロジーとともにやってきたEコマースです。既にみなさんも当たり前のように利用しはじめているEコマースが小売革命の最前線です。そしてこんどは専門店チェーンストアから価格決定権はオンラインに移りはじめています。ヤマダでTVを購入するときにネットで検索して最安値より安いか調べるなんていうのがそれです。これをシュールーミングなどと言う人もいます。リアルのショップで商品を見て、ネットで購入するというスタイルです。米国のリアル小売業なんかはこれでアマゾンにどんどん顧客を奪われて破綻しはじめているわけです。

がんばってオムニチャネルとかいってリアル店舗に顧客を呼び込もうとすることを否定するわけじゃないですけど、オンライン化の波はもう誰にも止めることはできません。もちろんバックオフィスでの物流、Eコマースを支えるソフトウェアやクラウド技術、決済サービスなどオンランショッピングの便利さを引き出すそういう機能がないと成立しないわけですが、消費者にとって一番近い場所にいて何をどうすればよいのか一番わかっているのはEコマースという業態で、これからも利便性や効率化を武器に消費社会の秩序を破壊していくわけです。

ここまでは消費者社会の主役が生産者から小売業者に移ったという話ですね。そして小売業者がPB生産機能を持ったという話。そしてEコマースの登場がさらに小売業者の立場を強化しているという話。はい。以上、前置きです。長いですね。長すぎるw。しかし、ぼくがこのブログで書きたかった話はこの先です。ここからどうなっていくのかという話です。

結論から言うと、「消費社会のイニシアチブは次は小売業者から消費者に移る」という話をしたいと思います。何言ってんだかよくわかりませんよね。消費者は消費するんだから、購入するんだから、そもそも一番強いに決まっていますからね。それでもあえてなぜ「移る」なんて、そんな話をするのかというと、それはモノを作るあるいは値段をつける決定権を誰が持つかという話をしたいからです。

小売業者から消費者にその力が移る理由は、ネットによる消費情報の可視化です。はじめはモノの価値や中身は生産者が勝手に決めることができました。そしてそれをマスメディアを利用して一方的に消費者に送り付けた。消費者はそれを信じるしかなかった。ところが小売業者が力をもってくると、消費者はその店先で選別をはじめた。店そのものがメディアになることで小売業者が消費を支援した。そしてネット社会の到来とともに、今度は消費者は店舗の情報よりネット上の消費情報を利用するようになってきた、なぜなら消費者は消費したという名の体験者でもあり、消費者の書き込んだ情報の方が企業が発信する情報や店員が進める情報よりよっぽど信頼できるからです。そしてやがて消費者自身のフィルターを通した情報は、マス広告情報や店舗情報を飛び越えて、消費活動を支援するためのメディアとなってくるわけです。消費者の消費活動の決定権は、生産者ではなく、小売業者でなく、消費者による消費者が作るメディアが持つことになるというわけです。

こうした流れまでは確実に現在進行形でおこっていると思うわけですが、問題はここから更に先です。ブログやSNSというツールを手にいれたことで消費者が消費情報をアウトプットできるようになり、従来マスメディアが行っていた、利権を利用した商品の選別・告知機能が消費者に移り、その消費活動を支える。アフィリエイトやキャッシュバックのような個人の消費情報経済を支えるインフラができてくる。スマホの普及でCtoCアプリやマーケットプレイスなど消費者が商品を売ることができるインフラができてくる。消費者自身がモノづくりに直接参加できるクラウドファンディングというインフラができてくる。そして消費者活動のイニシアティブを得た消費者は、小売業がそうなったようにメディア化を進める。さらに次には小売業がプライベートブランドを作り始めたように生産者にもなっていく。と、思うわけです。この先は消費者自身が「モノを作りモノを売る」時代が到来すると思うのです。クラウド技術は圧倒的にサーバーのコストを下げ、3Dプリンタはモノづくりの低価格化を支援する。誰もがモノを作りメディアになり、モノを売ることができる。そういう消費社会になっていくのではないか。そんな未来を想像するわけです。

「みんながメディアになるなんてありっこない!」
「みんなが売るわけない!」
「みんながモノつくるなんて考えられない!」

今は確かにそう思えます。そんな能力がみんなにあるのか?そんな手間暇を消費者がかけるはずないというのは正論です。しかしですよ。これは30年後とか未来の話です。どんなイノベーションが起きるかわかりません。というか起きないわけがありません。「今はそれを実現するためのピースがたくさん欠けている」それはよくわかります。だけど30年前は今の「インターネットのようなもの」すら想像できなかったわけですからね。「タイプライター文化のない日本人にキーボードを操作する能力はない。パソコンを使うなんて信じられない」と言っていた90年代の人々を忘れることができませんw

17年前、1999年ころ、ポータルサイトビジネスがもっとも注目されていたとき、パーソナライズされたポータルサイトを想像した起業家がたくさんいました。ひとりひとりがポータルサイトを持ち自分の好きなことやコミュニティをみんなに発信する世界感です。けれども当時SNSもなかった、CGMすらなかった中で、そのパズルが組みあがることはありませんでした。いまフェイスブックなどはそれに近づいているかもしれません。でも何かが足りない、かもしれません。その何かがないと絶対それはできないわけです。できるためには次の何かを動かすイノベーションが必要なのかもしれません。

その昔、未来学者のアルビン・トフラーが、「第3の波」という未来予測の著書の中で、プロシューマーという概念を展開しました。プロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)の融合です。個人的にはまさにそこにむかっているのではないかという気がしてなりません。そして最近は「インターネットの登場が社会を変えた」という考え方すら怪しいと思っています。「社会は必然としてそうなるために、たまたまインターネットを連れてきた」という考え方の方が正しいような気がしてきましたw

「モノを作りと、そのモノを自身で消費する」というのは、原始時代から人間がおこなってきたシンプルな営みですが、壮大な消費社会を経て、次第にそうしたミニマムな世界に再びもどっていくのではないか、肥大化したコミュニティは、複雑化した市場は、テクノロジーの進化を経て再び「個」にもどっていくのではないか。そしてそれが人間社会の必然ではないのか。など考えながら最近は猫のフンをかたずけ、犬の散歩をしています。犬の幸せは猫の幸せとは違う。犬も猫も人間の幸せとは違う。みんな違う未来があるわけですね。何言っているか意味わかんないですよね。そんなわけでとにかく、ここまで読んでくれた皆さんにはひとりひとりそれぞれの幸せが訪れることを願うわけです。

@ankeiy

ニトリ創業者、似鳥昭雄さんに学ぶビジョンの力について

ニトリは、すでに誰でも知っているお店だと思います。ぼくも若いころからよく利用させてもらいました。特に、町田の16号線沿いのお店には、まだ子供たちが小さかったころよく行ったもんです。記憶にあるだけでもキッチンに置くサイドボード、子供のベッド、ソファ、学習机なんかを買いましたかね。

ここ10年くらいは、家具の巨人IKEAが参入してきて「ああ、ニトリもこれから大変なのかな」くらいに思っていたんですが、全然、ニトリの勢いが衰えず、逆にIKEAの方が弱ってきている感じじゃないですか。大塚家具なんて迷走している感じですし。日本の家具市場を見ると、ほんとニトリは強いですよね。と、業績をちらっと調べてみると、2016年2月期の売上高は4,581億円、経常利益で750億円です。この期まで29期連続増収増益を続けていて、この記録は上場企業の中で堂々の1位だそうです。2016年1月23日の終値ニトリホールディングスの株価を見ましても、時価総額1兆4,795億円、4,000社弱の上場企業の中で88位です。すごいですね。(ちなみに世界のIKEAはFY2016で売上高約4兆2000億円、ニトリの10倍の規模です)

この企業を一代で築き上げたのが、創業者であり、現在も会長職にある「似鳥昭雄さん」です。パチパチパチ!今回はこのブログで似鳥さんがいかにすごい人かということを紹介しようと思いますが、ぼくもそんなすごい人だとは、2015年に話題になった日経新聞私の履歴書を読むまでまったく知らなかったわけです。それで似鳥さんの著作をいろいろ読ませていただいて、これはとんでもない人だという結論に至ったわけです。

小売流通にはいろいろキャラが立っているすごい経営者がたくさんいるんですが、たとえばユニクロの柳井さんとか。セブンの鈴木さんとか。ぼくはどなたとも会ったことないのにこんなところで印象でいうのは非常に恐縮なんですが、柳井さんのイメージって学校の先生のようで、それもかなり厳しい先生って感じで。成績の悪い生徒をビシバシとしかっていて。成績の悪い生徒は退学!おお厳しい。セブンイレブンを作った鈴木さんは村長さんのようなイメージで、次々と面白いアイディアで村祭りを盛り上げてくれるような、いろんな具の入ったおにぎりを差し入れてくれるような感じですが、似鳥昭雄さんのイメージは一言でいうと村の片隅に住んでいる変人おじさんですwこの3人をわかりやすくレンジャーシリーズに例えると、柳井さんは赤レンジャーで、鈴木さんはレンジャーが集まる喫茶店のマスターで、似鳥さんは間違いなく黄レンジャーです。って話がそれました。そんなことを書きたいわけではありません。

まず、似鳥さんは「自分は頭が悪いけど、こんなバカでもできたんだから、誰でもできる」とみんなを元気づけてくれます。普通は「またまた、謙遜して」とか「自分のことバカとか言っておきながら本当はバカじゃないんでしょ?」とか、思うわけですが、著書で経歴を確認すると本当に頭悪いかもしれないという「とてつもない説得力」がありますw

ちなみに、小学校と中学校は成績表は1と2ばかりで、しかもいじめられっ子でもあったそうです。高校は受験したところ全部落ちて、最後に落ちた高校の校長に母親が米俵を届けて裏口入学をし、高校のテストはカンニングで乗り越え、大学は試験にはすべて落ちて、短大に替え玉受験で入ったそうです。なべやかんもびっくりの展開ですw

こんな似鳥さんはたまたま生活のために家具屋を始めます。家具屋をはじめた理由は近所に家具屋がなかったからというようなイージーなものです。しかし、似鳥さんは対人恐怖症だそうで、まったく接客がダメでいつ倒産するかというような状態だったそうですが、そんな似鳥さんに転機が訪れます。

それが、もう破産寸前まで追い込まれたときに一発奮起して参加した家具業界の米国視察ツアーです。似鳥さんはそこでアメリカ人の生活の豊かさやチェーンストアのすごさを思い知ります。その時のことを振り返って「他の参加者は、米国と日本は違うから、米国の良いところだけつまみ食いするぐらいの気持ちでいたと思いますが、私は米国で見たものすべてを日本で実現したいと思いました」と語っています。ツアー参加者の中で似鳥さんにだけにカミナリが落ちたわけですw

この米国ツアーで似鳥さんは生きる目的を手に入れました。それまでは生活のため、お金儲けのために、家具屋をやろうと思っていたわけですが、「日本人にアメリカ人と同じ生活をさせることができたら、どんなにみんな喜ぶだろう、感謝されるだろう」ということを具体的にイメージできたわけですね。27歳の時だそうです。
こういう話、ピンと来る人とこない人がいると思いますが、なんか電気が身体を走り抜け、自分が取り組めばわくわくするような未来が実現するということが自分だけに理解できるっていう体験、ぼくにもありますが、これはもうすごいことなんですよね。どうすればそこにたどり着くことができるかなんてまったくわからないのに、もうそこに行きたくてしかたないような。みんなにそのイメージを話したくていてもたってもいられないような。そんな瞬間ですね。

しかし、世の中は非情です。人生の目的を手に入れてもその方法はわからないわけです。そこからまた苦しみが始まるわけです。ところが、がんばる人にはまたまた転機が訪れます。それがペガサスクラブへの入会です。ユニコーンじゃなくてペガサスですwこれは渥美俊一さんという方が主催されているチェーンストアの勉強会ですね。渥美さんという方は、日本にチェーンストア理論を紹介したすごい人で、日本の小売流通の経営者はほとんどこの方に指導を受けています。渥美さんの著書を読むとわかりますが、なんかこうきちっとした哲学者のような方で、経営者のメンターでもあるわけです。この渥美さんが似鳥さんに言ったのが、「ロマン」と「ビジョン」を持ちなさいということです。

(似鳥さんは言います)
「運はあきらめない人に味方する」

この「ロマン」というのは「日本人を米国人と同じような豊かな生活に導く」という既に似鳥さんが手に入れている生きる目的のことです。それで「ビジョン」というのは、その目的を達成するための具体的な数値目標というわけです。

渥美さんの指導を受けて、似鳥さんは第1期30年計画を立てます。それが「30年間で1000店舗を実現し、売上高を1000億円にする」というもです。1972年のことだそうです。それで、この30年計画がどうなったか?

1年遅れの2003年、似鳥さん59歳のときに達成するんですよ。いやーほんとにすごいことですよね。30年ですよ。30年はただ流れただけじゃなく、財務や採用の困難、業界の圧力、乗っ取りなど似鳥さんは苦闘を重ねるんですが、そのあたりはぜひ似鳥さんの著書を読んでいただくとして、ここでお伝えしたいのは「日本人を米国人のような豊かな生活に導く」というロマン(夢)を手に入れた男の強さですよ。そして具体的な目標(ビジョン)を数値化し実現した男の執念ですよ。365日24時間ずっとこのことを考え続けたそうです。人生をかけた戦いのわけですよね。ずっと村の変人おじさんとしてw

それでこの30年計画を達成して、次はどうしたと思いますか?今度は第2期30年計画を立てるわけですよ。それは「2032年に3000店舗、売上高を3兆円にする」というものです。また新たに次の30年後を夢見るわけです。似鳥さんの車のナンバープレートは「品川3000」だそうです。トイレにも寝室の天井にも目標数値が貼ってあるそうです。
この数字を絶対に忘れないために。って子供かw

ちょっと話がずれますが、アマゾンの創業者ベゾスさんも2000年くらいのインタビューで、世界中で利用できる顧客満足度の高いEコマースで新しい需要を生み出すという話をしていて、記者からいつぐらいに実現できると思いますか?と聞かれて30年くらいかかるという話をしているんですよね。たぶんベゾスさんの中にも明確にイメージできる似鳥さん的な「ロマン」があるのだと思います。(これはみんなに見えるものではないですね)

だいぶ長くなってしまいましたwここらで話を強引に終わりにもっていきタイと思いますが。
似鳥さんは、ニトリのスタッフに向けて「成功の5原則」を掲げています。

1.ロマン(志)
2.ビジョン
3.意欲
4.執念
5.好奇心

ざっと解説します。「ロマン(志)」と「ビジョン」は説明してきたとおりです。生きる目的、事業をやる目的とそれを数値化した目標です。次に「意欲」はできそうもないことに挑戦することだそうです。まさに30年計画のビジョンを支える言葉ですよね。そして「執念」は目標を達成するまで決してあきらめないこと。最後に「好奇心」は常に新しいものを発見しようとすること。だそうです。

いずれの言葉も言葉にすると単なる言葉ですが、意味をかみしめるとすごく重い言葉です。当たり前のことではありますが、やはりこの言葉の深さを理解して、本気で行動しないと結果が伴わないということでしょうね。

現在のニトリの好業績は、まさに5原則に支えられているといってもいいと思います。1994年にプライベートブランドの海外での製造を開始するんですが、中国を拠点にすることが当たり前のような時代に、東南アジアに工場をたて現地で教育し製品の組み立てだけでなく、部品まで自分たちで作り、コストを下げ、業界の常識を超えるような品質を生み出すことを実現したことが現在の大きな競争力となっています。最近、ちょくちょくニュースになりますが、製造だけでなく物流システムや倉庫なども他社に先駆けて様々な工夫をしてコスト削減に励んでいるわけです。まさに似鳥さんが実践してきた工夫の塊のような企業です。

ニトリがこれからはじまるであろうEコマース化の波の中で、アマゾンとどう闘い第2期30年計画を達成するのかほんとうに楽しみなんですが、そんなことをさておいて経営にとって金儲け以外の「なぜその仕事に取り組むのか」そしてそれを「いつまでにどんなか形で達成するのか」というビジョンがいかに大切なのかということが今のニトリからも痛いほど伝わってきます。事業をスタートするきっかけは、金儲けのため、名声のため、偉くなるためという下世話な理由でも一向にかまわないと思いますが、どこかでこの似鳥さんのようなロマンを、哲学を、手に入れないと経営を長く続けることなんてできないんだなと実感させられます。

誰しも仕事には人生の中で多くの時間を費やします。生きる目的とイコールになる人もたくさんいると思います。

「なぜ、自分はこの仕事にとり組むのか」

だからこそ、この思い問いかけを忘れてはいけないのだと思います。もしも手に入らなければ最後の最後までもがき続けるしかないんだと思います。

おわりに似鳥さんだから言える素晴らしい言葉をみなさんに贈りましょう。

「鈍くても遅くても、とにかく前に進め」


@ankeiy


<参考文献>
ニトリ成功の5原則(朝日新聞出版)
運は創るもの(日本経済新聞出版)
いずれも著者は似鳥昭雄さん

21世紀のチェーンストア(実務教育出版)
著者は渥美俊一さん