ネット広告市場でなくてはならい存在になるために。

あけましておめでとうございます。今年もマイペースでこのブログを更新していきますのでよろしくお願いいたします。さてさて、本年一発目ということなので、私も経営者の端くれとして2015年の経営や事業について少し触れてみたいと思います。今回は「真面目か!」で失礼します。

誰も気づいていない可能性が高いのですが、うちの会社は昨年末にしれっと組織変更をしています。詳しくは開示を見てもらいたいと思いますが、ポイントは、事業部体制と新規事業への取り組みの再構築です。⇒IRリリース(PDF)

ぼくたちが事業をさせていただいているネット広告市場は、2011年くらいからスマホ時代が始まっているのだと思いますが、この数年はモバイルへのシフトというとにかく大きな波がありました。そんな中、スマホの普及が始まった当初は経営的には相当な迷いがありました。というのも消費者はスマホにどんどんシフトするかもしれないが、広告主やメディアはスマホに簡単にシフトすることができないという問題があるからです。たとえば、お正月といえば年賀状ですが、現在は年を追うごとに市場が縮小している年賀状の発行枚数がピークに到達したのが2004年だと言われています。みんなびっくりすると思いますが、電子メールが普及しはじめた1995年から10年間も年賀状市場は伸び続けていたわけです。それと同じようにいくらスマホシフトがいくら早いとはいえ、ガラケーやPCの広告市場は経営的にはなえがしろにできないと思っていました。だからと言ってそこにこだわりすぎると、新しいスマホ市場に後れを取ってしまう。それは厳しい数年間でした。そこで私たちは事業部や子会社に可能な限り権限を持たせその中でデバイスの変化や広告市場のパラダイムシフトを現場感覚で感じ取り、舵をきっていける組織体制を目指しました。コンセプトは「クリエィティブ・カオス」です。混とんとした中でこそ生まれる現場の創造力を大切にするという考え方です。その中から、スマホ向けのアドネットワークのnendやCPI専用のアドネットワークであるadcropsなどのサービスが次第に成長してくれました。

今回、組織変更に至った理由は明確です。スマホの普及期が終わったからです。ある意味、この数年間は「アドノミクス」と言えるような特異な状況でした。アベノミクスになぞらえて説明すると、1本目の矢は新しいデバイスとしてスマホが世の中にばらまかれネットの利用時間がグーンと伸びる金融緩和のような状況。2本目の矢はスマホゲームというマネタイズ手段から供給される広告予算、つまり財政出動。そして3本目の矢がモバイル端末を使った新しい起業やサービスが育っていく成長戦略。といったところでしょうか。そんな中で昨年の4月くらいから1本目と2本目の矢の勢いは徐々に落ちていきました。(今後も市場は大きくなり続けるでしょうが、成長率が低下しているという意味です)、そして今年はまさに3本目の矢が期待されるわけですが、新しい商習慣はそんなに急激に市場を変えるものではありません。これから10年かけて、PCでのEコマースの利用が普及していたったように成長していくことでしょう。

そこで、うちの会社がどのような組織で臨むべきかと考えた際に、そろそろ、この「アドノミクス」という特異な成長の中で育ったサービスの課題を明確化し、それぞれの分野が競い合いながら成長を極限まで上げる必要性があると思いました。言葉を変えると、3本目の矢と共に成長していけるような体制へのシフトです。


そして、当社の事業マップが、以下になります。


ファンコミュニケーションズグループとしては「A8.net」「Moba8.net」「nend」「nex8」そして子会社エイトクロップスが運営する「adcrops」という5つのアドネットワークの価値を最大化していくということになります。また、新規事業を生み出す仕組みもそれぞれの事業部や部門に分散させます。一時的に非効率になってもそれぞれの部門の独立性をできるだけ尊重していこうと思っています。

また、このような2次元のマップにすると、円の大きさが市場の大きさのようにとらえられてしまうかもしれませんが、それは違います。というのも、それぞれの事業には深さがあるからです。深さは海外市場だったり、動画広告やオーディエンスターゲティングなどの広告手法ということになるでしょう。深さを追求した先に限界市場が見えてくるわけです。


今後も新しい組織が成長していくために様々な困難があると思います。たとえばA8.netのようなPC広告市場を中心にしてきた成功報酬型アドネットワークは、急激なスマホシフトが起こった結果、PCに強いことが弱みになります。Googleですらモバイルの検索に対して試行錯誤している中で、検索技術に大きく頼ったコンテンツ群をネットワークしていることも大きな課題です。急成長をしてきたスマホアドネットワーク「nend」も、今後消費者の広告慣れが進む中で、広告を効果を高めるための継続的な改良など次々に課題が目の前に立ちはだかるでしょう。

けれども、ぼくはファンコミュニケーションズの現場の力を信じます。それは「成功報酬型」という他の広告会社がネット広告以前に持ちえなかった「力」です。広告主やパブリッシャーあるいは消費者というお客様に価値が提供できないと、私たちは少しも収入を得ることができない、つまり存在価値がない、顧客と運命共同体であるという「危機感のDNA」の持つ力です。

理想の組織というのはいろいろあると思いますが、ぼくが組織にとって一番大切だと思うのはその自然体だと思います。例えば、手に思い荷物を持てば、その重さを体全体で受け止めるために重心を後ろに移すとか、背中に荷物を背負えば、前かがみになるとか、向い風が吹けばできるだけ体を縮めて風の抵抗を少なくするとか、人間はあらゆる外的な環境に対して自然と体を動かします。これが生き伸びることの基本だと思います。組織にもそうであって欲しいと思うわけです。悪い組織は、この当たり前な自然体ができなくなります。自分がいまどういう状況かわからなくなってしまうからです。

2015年に目指すところは、今回生まれた新しい組織、部門に、まず自分たちが生き残るための自然体を身につけてもらいたいと思います。その上で音楽に例えるなら、それぞれの部門が自分の理想する素晴らしい音楽を目指しますが、気がつくと自分の組織の演奏ばかりでなく他の組織の音もあたかも自分たちが出しているように錯覚するくらい、自分たちの目指す方向性が重なり合うような心地よさ。どこかの部門が小休止していても、その空白は次の音によって気持ちのいい「間」に変わるような深み。そして、それは企業全体ですばらしいオーケストラの演奏のようになり、聴衆としての私たちのステークホルダーの皆さんの心に染み入るようになるようなそんな演奏者でありたいと思います。本年もファンコミュニケーションズグループをよろしくお願いいたします。

@ankeiy