ブランドをもう一度「なんとなくクリスタル」にする方法

告白します。25年前新宿丸井ヤング館で朝8時からバーゲンの列に並んでデザイナーズブランドの服を買っていたのは僕です。支払いは丸井の赤いカードで毎月1万円のリボルビング払いでした。DCブランドを身に着けることがカッコイイ生き方だと思っていました。

恥ずかしい歴史も朝から告白するとすがすがしい気持ちになるもんですね。奥さん。


いいわけすると、ぼくはもちろんブランドだけで服を買っていたわけじゃないですよ。いちばん大切なのはデザインや着心地なんですからね。でもね。好きなブランドの服はどうしても良く見えちゃうんですよね。買った服を入れてもらった紙やビニールの袋まで大切に取って置きましからね。やっぱりブランドに侵略されていたわけですね。ぼくの身も心も。


昭和って時代はまさにブランド全盛の時代でしたよ。デザイナーズブランドがパワーを失った後も、老舗のブランドに群がったりして、ヴィトンやシャネルなんて、憧れの的でしたからね。女子がみんな同じようなバッグ持っていてもなぜか許せてしまいましたよ。普段は天邪鬼なのにねw


もちろん、平成に入ってもブランドはパワーがありますよ。表参道や銀座では専門店がしのぎをけずっていますしね。でもね。なんか最近、その力にかげりがみえているような気がするのですよ。3.11以降その感じは高まるばかりですよ。ファッションブランドだけじゃなくてね。家電、車とかあらゆるブランドの影響力が低下しているような。景気が悪いとか、ファスト化とかエコロジーだけじゃない何かがぼくらに影響していると思うんですよ。きっと。


ブランド力って、なんといっても信用力と認知度ですよね。そしてこの信用力のなかにかっこよさとか新しさとか丈夫さと希少性とかかさまざまな人間の欲望が安心というオブラートに含まれているんですよね。この前、新聞を読んでいたら日本のブランド力も低下しているって記事がありましたよ。記事が指摘しているのはまさにこの信用力でした。原発事故が低下に拍車をかけているそうですよ。


でもね。ぼくがいまブランドに違和感を感じているのは、信用力の低下なんじゃないんですよね。今までブランドを構成してきた信用力と認知度というキーワードより、別の圧力がブランドを左右しているような気がするのですよ。何だと思います?それは「共感」なのですよ。


この「共感」っていう視点で見ると、今までの有名ブランドってちょっとパワー不足なんですよね。グッチやエルメスにどんな共感があるかっていわれると考えちゃいませんかね。でね。少し注意深くブランドを観察すると、「共感」ってキーワードの裏にはかならず「人」の存在があるんですね。

いつも短くまとめようと思っているのに、ちょっと長い文章になってしまいましたね(汗)でも続けますよ。

たとえば、いま飛ぶ鳥を落とす勢いのアップルもね。考えてみると、ジョブスっていう神がかった経営者(人)がいるからそのブランドがパワーを持っているんじゃないですかね。固有名詞じゃなくてもいいんですよ。ディズニーランドも今だにすごいブランド力ありますよね。それも、あそこで働く人たちの前向きさや躍動感がぼくらに対して共感を与えているんじゃないですかね。


いままでのいわゆるブランドはね。ロゴマークでね。信用力と認知度を表せばよかったかもしれないけどこれからはそうもいかないってことですよね。ちょっと話がずれますけど、ミッキーマウスもネズミのくせに、ほとんど人間のスタイルですよね。もしあれが単なるネズミのイコンだったら、いまごろ人気が衰えてきているかもしれませんね。だって共感できないもん。でもね。「人」だからって今までのようにタレントをつれてくればいいってもんじゃないですよ。ブランドに影響を及ぼす共感は「中の人」からしか生まれないんじゃないですかね。作られたストーリーじゃなくて、実感しか届かないんですよ。


なんて考えているとね。日本のブランド力が本当に下がっているかどうかってのも怪しいものですよね。日本が世界からどう「共感」を得ているかというのはなかなか難しい評価ですね。たとえば震災の時に、中国人を救った佐藤充さんや力強く復興している東北の人々が日本のブランド力をすごく高めてくれているかもしれないんですよ。クールジャパンだ、漫画だ、アニメだってのもいいですけど。ブランド力を上げたければフォーカスしなければいけないのはアニメキャラクターではなくて「人」そのものなんですよね。


これからの企業は良い会社や商品のイメージを作るブランド戦略の中で、この「人」をどううまくブランドに織り込むかということがすごく大切なんだと思いますよ。じゃないと、ぼくらはその企業や商品に共感を持つことができないんじゃないかなと。これってまさに人間と人間のつながりの中で情報をつぐむソーシャルネットワーク時代と符号するんですよね。日本コカコーラの広報ブログがスタッフを前面に押し出して本年トークしているのも、まさにそこがブランド作りの基点になるって気づいているからですね。きっと。


エステー消臭力のTVCMでね。男の子にポルトガルリスボンをバックに歌を唄わせたCMがちょっと話題になっていましたけどね。昔、大津波にあったことがあるリスボンの街がいまはしっかり復興している映像に東北復興のメッセージを込めていた、なんて話がTwitterで広がるとね。あのCMを作っている人たちにね。やっぱり「共感」が生まれるのですよ。そうするとね。消臭力エステーっていう会社にね。なんだか大きなブランドパワーが宿るわけですよね。

個人もね。もし自分のブランド力を高めたいと思ったら、表面を飾るんじゃなくてね。周りにどう「共感」してもらうのかっていうことが戦略ですよね。共感してもらうって別に難しいことじゃなくて、自分自身をありのままに、本音をぶつけることですよね。少なくとも、ぼくはそういう人に共感しますね。
ということで、ぼくにも共感してくださいね。奥さん。