米国のITバブルを楽しむ方法

5月19日にIPOしたビジネス系SNS「Linkedin」(NYSE:LNKD)は、公募価格45ドルのところ、初日に122.7ドルと高値をつけて、順調なスタートを切った。同社は市場から352百万ドル(約285億円)の資金を調達し、80億ドル(約6400億円)という時価総額の企業に一夜のうちに変身した。今後IPOが期待されている世界最大のSNSFacebook」やソーシャルゲーム開発会社「Zynga」フラッシュマーケティングの雄「Groupon」などにバトンをつなぐ大成功な株式公開となった。メモリアルデイ明けの昨日は−7.63%の終値81.58ドルと株価は軟調に推移したが、それでも初日につけた80ドルという最安値は割り込まなかった。今後しばらくは安い展開が予想されるが、米株式市場のSNSを中心とした第2世代のIT企業への期待の大きさがうかがえる。

もう1社、ロシア最大の検索エンジンビジネスを手がけるYandex(Nasdaq:YNDX)も5月24日にIPOした大型新人だ。同社も公募価格に対して55%高の42ドルと初日から値を飛ばし、昨日の終り値も33.45ドルと高い株価を維持している。時価総額は110億ドル(約8800億)と既に楽天に匹敵する評価を与えられている。同社の資金調達額は13億ドル(約1000億円)とネット企業としてはGoogle以来の大規模なものだった。

実は先月はさらに1社注目のIPOがあった。それは中国最大級のSNS「RENREN」(Nasdaq:RENN)だ。同社はソフトバンクが投資したり、Greeと提携するなど日本でもその名前知れた企業だ。しかし、このIPOは成功とはいえなかった。公募価格12ドルに対して昨日の終わり値も12.85ドルと華やかさがない。ユーザー数のかさ上げなど次々に明るみになる不正に投資家が不信感をつのらせた結果だ。おりしもアリババのオーナーがコンプライアンスに関してYahoo!ともめるなど、中国企業全体に対して投資家の厳しい目がむけられていたタイミングだったともいえる。それでも同社の時価総額は40億ドルを上回り、3200億円と、日本のmixi(457億円)などと比べものにならない評価がされている。


こうした大型のIPOが次々に成功すると当然、ITバブルの再来が騒がれるようになる。確かに、Linkedinの2011年の予想利益から現在の株価の倍率を見るとなんと800倍にもなっている。(いまの利益水準だとこの株価での投資額を回収するのに800年かかるということだ)現在、Googleが20倍、FacebookですらIPO時のPERが200倍〜400倍程度と見られているだけに異常値であることは間違いない。しかし、これだけの人気銘柄を誕生させることが米株式市場を世界一のマーケットにしている理由なのだ。Yahoo!やebayといった第1世代のIT企業の上場があったときも同じような状況だった。


それでは、このバブルはいつまで続くのかということになる。明日にもLinkedinやYandexの株価が急落してはじけてしまうかもしれないからだ。マーケット全体に大きな外部的影響がない前提で考えると、2社の株価はあと数週間軟調に推移することは間違いない。問題はその後だ、サイレント期間を経て各証券会社がそれそれの企業価値にレイティングをつけてくる。そのタイミングで株価がどう動くかである。もし上場初日につけた高値120ドルや42ドルを抜けてくるようなことがあれば、そのままFacebookの上場までバブルのバトン(日本的にはたすきですねw)はわたされる可能性が高いように思われる。


日本から見れば、こうした米IT企業を取り巻く株式市場の活況はうらやましくも見えるが、バブルの波は当然日本のマーケットにも時間差でやってくるはずだ。米市場の動向を見ながら、その日に備えてサーフィンの練習をしておくのもよいかもしれない。ただし、津波でないことを祈る。(@ankeiy)