歩道橋に脱ぎ捨てられたズボンが現代社会に語りかけること。

奥さん、お久しぶりです。あまり久しぶりのブログ更新で、どんな語り口だったかも忘れてしまいそうですよ。ぼくは。銀杏があまりに臭いので、二人で金木犀を求めて彷徨ったあの秋のこと、昨日のことのように覚えています。

ところで、奥さん、事件なんですよ。ぼくがいつもジョギングする目黒通りの歩道橋に、紺色のズボンが脱ぎ捨てられているんですよ。ね。事件の匂いがプンプンするでしょ。ぼくもはじめは「誰かの落し物か何かかなあ」って思ったんですけど、1週間経っても誰も取りに来ない。これは大事件かもしれない。と、思ったんですよ、ボス。

「じゃあ、殿下は指紋を取ってくれ」「長さんは聞き込みを頼む」「おいジーパン、これジーパンじゃねえぞ」って、ヤマさんの声が聞こえてきそうですね?もちろん、ボスは歩道橋の真ん中でコートの襟を立て遠くを見ながら煙草をくゆらせているわけですけど。

話を「ズボン」に戻しますけど、このズボンがなぜここに落ちているのか、当然ここに事件を解く鍵があります。そこでぼくは5つの推理を立ててみました。

1)泥酔した誰かがどうしてもズボンを脱ぎたくなって、脱ぎ捨ててパンツ一丁でそのまま帰ってしまった。

2)歩道橋で女性を襲おうとした男が走りながらズボンを脱いでそのままパンツ一丁で追いかけていった。

3)歩道橋の上で露出狂の男が露出していて、興奮してそのままズボンをはくのを忘れて帰ってしました。

4)歩道橋の上でエッチしようとしたカップルがいて、彼がズボンを脱いだ瞬間、誰か来て慌てて彼女のスカートをはいてしまった。(この推理は彼女は何をはいて帰ったのかという疑問が残ります)

5)歩道橋を歩いていたら、急に大きい方を「もよおし」しかたがないから、そこでやり。紙がないからズボンでふいた。(この推理もなぜパンツでふかなかったかという疑問が残ります)

まあ、こんな感じです。どの推理も真実と思えるような内容ですよね。この中のどの行為が行われていたとしても、恐ろしい事件が起きたという事実に間違いはないようです。ところで、このブログでぼくが伝えたかったこと、ここまで書いたらもうみなさんお分かりですよね。

それは「マスメディアの報道に騙されるな」ってことです。

この「ズボン脱ぎ捨て事件」のように一つの事件は様々な物語になりうります。こうした事件はマスメディアのニュースによって社会でストーリー化するのですが、報道する者の考え方ひとつで、私が推理したような様々な物語になり社会に届けられてしまうということです。たとえば古館さんが露出狂だったとします。その場合、自分が露出狂であることが、ばれないように、物語の中から露出狂を排除しようとする意識が働くでしょう。そしてこれは恐ろしいことに古館さん自身も気づかずにやっている可能性が高いのです。

奥さん、今も人知れず歩道の上で申し訳なさそうに脱ぎ捨てられているズボンですが、きっとこんな叫び声を上げていることでしょう。「ニュースを疑え」「自分の頭で考えろ」と。

@ankeiy