俺の頭はフリーだ。孫さんは200兆の夢を見る。

昨日、孫さんがまた1歩前進して、生え際がまた1歩後退しました。こうなれば持久戦。孫さんの野望が勝つのか、生え際が勝つのか。一進一退。孫さんと頭髪との戦いはいまこのときも命をかけて続いているのです。

「この無料がいいねと君が言ったから、10月7日はコマース記念日」俵万智もびっくりのYaboo!ジャパンのイベントで発表されたのは、ショッピングモールにかかる費用の無料化でした。孫さんはにこやかに「すべての商品をインターネットで買えるようにします。全部、無料です」と宣言しました。それはまるで無邪気な子供がいたずらをして、大人をビックリさせるような顔をしてです。

これを受けて、ネット業界、株式市場など大騒ぎです。Yahoo!のショッピングモールの無料が及ぼす市場や他社への影響が様々な角度から分析されました。楽天は大丈夫なのか?アマゾンに勝てるのか?ECツールベンチャーは大丈夫か?無料化の恩恵が広告会社や運送業に及ぶのではないか?などなど、様々な思惑が広がりました。

しかし、しかしかしかししかしです。実は孫さんはそんな細かいことはどうでもいいと思っているじゃないかと思います。ぼくは聞き逃しませんでした。孫さんのこのセリフを。

「今までのYahoo!ジャパンは間違っていた」と。

さて、何を間違っていたのでしょう?中途半端な利用料金を取って、国内2位とか3位とかに甘んじていたYahoo!のショッピングモール事業についてでしょうか?

いいえ違います。孫さんはそんなちっぽけな人間ではありません。孫さんは自分自身に一番厳しい男です。自分がここ数年行ってきた行動と自分の抱く野望とのギャップに対して、「Yahoo!ジャパンの扱い方を間違えていた、ジャパン」と郷ひろみばりに自責の念を含めて発言したのだと思います。

孫さんの野望、それは何か。それは今まだかつて世界に存在しえない時価総額200兆円の企業を作ることです。200兆円。人類が想像できないような巨大企業。というのも現在世界最大の時価総額企業はアップルですが、その額まだ43兆円程度。孫さんの抱く野望のまだ1/4にも到達していないのです。続いてエネルギーの巨人エクソン、こちらが38兆円、次がGoogleで30兆円。名だたる企業がそんなものなのです。国内に至ってはまだ最大のトヨタがやっと20兆円です。孫さんの200兆円の野望がどれだけ半端ないかわかるでしょう。

本当に孫さんがそんな野望を持っているのか。はい。2010年の30年ビジョンで「時価総額200兆円企業を目指す」と宣言しているのです。30年後というと、孫さん84歳。すでに髪の毛はすべて失われているかもしれませんが、想像するにまだまだぴんぴんしているんじゃないでしょうか。その妖力は中曽根元総理や石原閣下をしのぐといわれていますので、生きているうちに、いや自分が陣頭指揮を執っているうちに、世界最大のそれも時価総額200兆円に到達していることを夢みているんじゃないでしょうか。

それでは「Yahoo!ジャパンは間違っていた」という件に話を戻しましょう。今のYahoo!ジャパンの時価総額3兆3000億円。国内でこそ、ネット企業の中ではNo1の地位を得ていますが、世界から見たら、Googleの30兆円、Facebookの11兆円、テンセントの10兆円とまったくもって規模が小さい。孫さんの200兆円の野望に対してはたったの数パーセントの時価総額にも届いていない。これが孫さんの言うところの最大の「間違っている」点じゃないでしょうか。

孫さんが200兆円の企業を作る。この母体がソフトバンクであることは間違いありません。ソフトバンクは米スプリントの買収を経て、先日国内第2位の時価総額になりました。それでもまだ10兆円弱です。孫さんの野望の20分の1以下なのです。孫さんが200兆円の野望を実現するためには、ざっくりいうと本体のソフトバンクを世界最大の通信キャリアにして時価総額100兆円、ネット関連の広告やサービスなどアリババやYahoo!ガンホー、インモビなどの連結子会社を含めて50兆円、そしてエネルギーやこれから買収するであろうソフトウェア、次世代デバイスなど企業群で50兆円の企業価値を生み出さないといけないわけです。そんな視点でYahoo!ジャパンのことをよくよく考えると、今の3兆円?あまりにも規模が小さいんです。そんなものじゃ困るんです。少なくとも桁を一桁変えてもらわないと。しかもネットで覇権争いが行われるこの10年余りの間に。そう考えると、ちまちまとオークションやモールの出店手数料で10数億円稼いでもしょうがないのです。もっとドカーンといかないと。だから孫さんはYahoo!の扱い方を「間違っていた」と反省しているわけです。

実際、孫さんなら200兆円企業を本当に作るかもしれません。少なくとも世界最大の前人未到の100兆円くらいは到達するんじゃないでしょうか。そう思えるのも孫さんは「孫さんに足を向けて眠れないネット界隈の話。」に書いたように、次々に行動して目標を実現してきた人だからです。

では、こうした孫さんの野望の最大の障害になるの何でしょうか。それはいまもこれからも人材だと思います。この孫さんの野望にどれだけの人間がついていけるのか。たとえば、孫さんから見れば、極端な話、年間2000億円の営業利益をはじき出すYahoo!でさえも、一銭も稼がなくなってもいいのです。その2000億円をうまく利用してソフトバンクモバイルが通信料で3000億円稼げるようになれば、グループ全体の価値が上がるからです。しかし、こうしたグループ戦略はグループ全体からみると合点がいきますが、現場から見ると、なぜ自分たちの事業が犠牲になるのかが理解しがたいことになります。200兆円を目指すためにグループ感のシナジーを高めれば高めるほど、その事業に携わる人間の気持ち部分のコントロールが難しくなるわけです。

実際、今回のYahoo!ショッピングモールの出店手数料無料に関しても、どれだけ現場がYahoo!全体の利益を考え、またソフトバンクグループ全体の利益を考え行動できるのかという点においては、変化が激しいだけに疑問も残ります。(部外者なので、よくわかりませんけどw。)

まあ、いずれにしても孫さんは戦うのです。200兆円野望に向けて。これからもTモバイルの買収やそれ以上のビッグなニュースを次々に届けてくれんじゃないないでしょうか。そして、それは人類もいまだかつて体験したことのない「禿げしい戦い」になることだけは間違いないでしょう。

@ankeiy