会社に残って10倍返しをする方法について

昨日やっと、半沢直樹が5億円を回収しました。おめでとうございます。この夏の暑さとともに視聴率はうなぎのぼりですね。「半沢直樹は現代版の赤穂浪士じゃないか」とか、「バブル崩壊で抱えた日本人のフラストレーションを10倍返ししてくれているんじゃないか」とか、「島耕作に引導を渡したサラリーマンコンテンツ」とか、賞賛の声がやみません。そんな中で、『「倍返し」している暇があるなら、会社辞めて起業すればいいのに』って言ってのけたのはぼくらのアイドル、イケダハヤト氏。同氏の考えでは、銀行の課長職なら年収1000万円程度、だとすれば嫌な上司とさっさとおさらばして、独立して年収2000万、3000万を目指したらどうかというのです。まあ、確かにそういう考え方もありますよね。「会社に残って組織を変えるか」「会社なんかさっさと辞めて新しい人生を目指すか」サラリーマンをなら一度は考えたことがありそうなテーマですね。

そこで今回は会社を辞めて独立するほど勇気なんかさらさらないが、会社に残って一生嫌な上司の下で働くことも納得がいかないあなたにおくる「会社に残って10倍返しをする方法」を考察してみました。まったく尊敬できないけれども、世渡りだけで出世して、偉そうにふんぞりがえっている上司、どこの会社にも必ずいますよね。そういう人間を10倍返しで見返してやろうというわけです(笑)

結論から先にいいます。はっきり言ってそんなムシのいいこと考えて、10倍返しする方法は一つしかありません。(半沢直樹のように5億円がバイク便では届きません)そう、それは「株式投資」しかないのです。けれども誤解しないでください。株式で一発当てるというようなギャンブル的発想ではダメです。それではたぶん「10倍しっぺ返し」をくらうからです。下手を打つわけにはいきません。ここはやはり株式投資の王道、オハマ賢人バフェットに従って、10倍返しのパフォーマンスを長期投資で目指すのです。

バフェットに言わせると「いいなあと思った会社に投資して、あとはじっと待つのだ」で終わってしまうので、ここは不詳株式投資歴20年のぼくが少し解説したいと思います。

ぼくが株式投資って「すごいかもしれない」と思った理由は2つあります。一つは税金が安いことです。所得税だと最高税率40%とか取られちゃいますが、キャピタルゲインだと20%台ですむわけですからね。単純な計算だと同じ1億円稼いでも、給料でもらえば手取り6,000万円なんですが、株式売却益で得れば8,000万円になります。この2,000万円は大きいですよね。さらにキャピタルゲインって景気が後退するといろいろ優遇税制がからむわけです(笑)資本主義経済で生きるためには株をやらないと損なわけですよ(笑)

2つめは長期投資の魅力です。ぼくがはじめに気付かされたのは、マイクロソフトの株価を調べた時でした。マイクロソフトNASDAQに上場したのが、1986年3月、この月の同社平均株価を現在の株数で計算すると、1株0.0929ドルになります。それが5年後の91年3月には15倍になり、さらに5年後の96年3月69倍になり、ピークの99年12月には627倍になります。もしIPO直後にマイクロソフト株を100万円購入していたとすると、1999年には6億2700万円の資産に変わっていたというわけです。13年間で年末ジャンボの当選金を超えるわけです(笑)、先週末のマイクロソフトの株価を見ると32ドル70セントですから、下がったとはいえ、今もゆうに3億円を超える優良資産を保有できているということになります。10倍返しどころじゃないですね(笑)

ほかの企業もみましょう。まずはネットの雄Google、2004年8月19日米NASDAQに上場をしています。IPO価格は1株85ドルですが、先週末の株価を見ると890ドルになっています。上場から9年で10倍返しを達成したってことですね(笑)100万円投資していれば1000万円です。アマゾンドッコムはもっとすごいです。NASDAQに上場した1997年5月の平均株価を現在の株数で考えると、1ドル54セント程度、先週末の終値が297ドルですからこちらは16年目で192倍、100万円投資していれば1億9,200万円です。

結構10倍返しなんてちょろそうですね。もちろんこれ以外にもITの老舗インテルやデータベースのオラクル、おなじみのアップルとか、とんでもないパフォーマンスを発揮している企業はたくさんあるわけです。

ところが、我らの師バフェットはIT企業にはあまり投資していません。投資しない理由は「サービスや商品がよくわからないから」ということらしいですが、それはバフェットがお年寄りだからです。デジタルネイティブなぼくらはやはり果敢にIT企業に投資するべきだと思います。IT企業投資の魅力は長期投資の中でも、比較的短期間で大きなパフォーマンスを得れるところだと思います。なにせ世の中にイノベーションど真ん中にいる企業群ですからね。成長スピードが違います。

ここまで読んでもらって気が引けますが、じゃあどこに投資したらいいかって話なると残念ながらよくわかりません。投資を考える上で手がかりはあります。それは過去のパフォーマンスの良かった企業をよく見ることです。3つ大きな特徴があると思います。

1)価値観の変革のど真ん中にいる企業であること。
マイクロソフトのパソコンやGoogleの検索のように新しいサービスの時代が大きく動かすタイミングがあるんですがそのパラダイムシフトのど真ん中にいるということが大切です。
2)他社の追随を許さない強みをもっていること。
経営者のビジョンでも技術でも何でもいいですけど、その企業だけが持つ志の高さが競合企業とどれだけ差別化されているのかということが大切です。
3)ビジネスがストック型であること。
顧客になってっくれた人たちが、常に滞留し、さらにその上に新しい顧客が上積みされるビジネスになっている必要があります。


ここまで米国企業について書いてきましたが、もちろん日本のIT企業だってチャンスがあると思います。けれども、残念ながらIT分野では米国企業が有利な点も見逃せません。ぼくの考える理由は以下の3つです。

1)英語圏=商圏が広い。米国には人口流入が続いている。
2)グローバル化された米国企業が多い。つまり米国企業をサポートすることでベンチャー
成長できる。
3)圧倒的に優れた人材が多い。

とあるベンチャーキャピタリストの方が、ブログで日本のIT企業の時価総額の小さいことを嘆いていましたが、無理もありません。マーケットの質が全く違うためビジネスのコスト構造がまったく違うからです。(投資環境や規制なんてのは後付の理由だと思っています)Skypesupercellのような企業の成功を例に出してなぜ日本人はダメなのかも的外れです。世界第2位の母国市場があるにもかかわらず、いきなり世界で戦うような北欧の企業と同じようにふるまう日本人の経営者がいたとしたら、かなり変だと思います。(笑)

まあ、お盆休み中にでもいろいろ考えてみましょう。

先日、ぼくがTwitterで「半世紀クラブ」として予想PER50倍以上で評価されている日本のIT企業名を挙げたら、関心を持ってくれた人が結構いました。PERとは、予想される一株あたりの利益(EPS)の何倍で今の株価が評価されているか示す指標ですが、50倍ということは、言い換えると「その年の利益を50年続けるとようやく今の株価が正当化される」ということです。これが半世紀の意味ですが、50年も待とうと考えている投資家などいません。

投資家の頭の中はこんな計算で満ちています。

例えばEPS予想1000円でPER50倍、5万円の株価になっている企業があるとすると、この企業が毎年20%増益の成長をすると、EPSは1200円、1440円、1728円、2073円・・・と増えていき12年〜13年で回収が可能だなとか(笑)50%増益だったら、EPSは1500円、2250円・・8年で回収だなとかです。経営者の苦労を知らずに(笑)なんともムシがいい計算なんですけど、その企業にはそれだけ投資家を期待させる何かがあるというわけです。

ちなみに、ぼくがそのとき上げた半世紀クラブのメンバーは、カカクコム、リブセンス、エムスリー、MonotaRO、クックパッドです。これらの企業がへの投資がアマゾンやGoogleのようなパフォーマンスを発揮してくれるかどうかはよくわかりませんが、長期投資先を検討するにあたって、なぜ高い評価をされているのかは十分参考になるのではないでしょうか。


疲れてきたのでこのあたりで終わりにしますが、「上司への10倍返し」や「組織への10倍返し」はたまた「自分のコンプレックスに対する10倍返し」がもちろんお金だけの問題でないことは十分承知しています。けれどもお金が自分を再確認する手段あり、社会の様々な現実から少しだけ自分を自由にしてくれるわけですから、10倍返ししても誰も文句言わないでしょう。

半沢直樹を見て、留飲を下げる思いをするだけでなく、自分の行動で何かを変える。株式投資なら、そんなに難しいことではないかもしれません。

@ankeiy