「6年で株価が1/3になりました」という件について

むかし、真木準さんが「働けば働くほどビールがうまくなる」って書いてましたけど、ぼくは2011年に言いたい「働けば働くほど株価が下がってる」・・・。

本日11月30日は、ぼくが代表をしている会社のサラダ記念日、じゃなかった上場記念日です。IPOからはやいもんで、なんと6年です。(みんな、おじさんになるわけですねw)何はともあれ、ステークホルダーの皆様、6年間もささえていただいてありがとうございます。会社設立12年目ですから、これからは社歴で上場時代のほうが長くなるということですね。

せっかくなので、うちの会社の業績の歴史をちょっと並べてみましょう。売上げと経常利益の推移はこんな感じ。手元に正確な資料がないんで上場前の数字はそんな感じということで。   

      <売上>   <経常利益>
1999年   800万くらい  (3ヶ月決算でちょっと赤字、まだ事務所もなかったです)  
2000年   7500万    ▲7000万くらい(資金調達でなんとかしのぐも、白髪が増えるw)
2001年   2億4000万  ▲1億1500万(会社倒産の危機数知れず、死ぬかと思いました)
2002年   4億8900万  ▲7400万(キャッシュフロープラ転、なんとか一息つきました)
2003年   10億4400万   2500万(やっとこさ黒字、ふー。ようやく上場準備へ)
2004年   23億4000万  3億300万
2005年   42億7000万  7億6500万(JASDAQ上場!)
2006年   53億6700万  9億9400万
2007年   56億8700万  9億7300万(調子こいて事業方向性失う。初減益)
2008年   60億4400万  9億6500万(1年かけてリストラ敢行、リーマンショック!)
2009年   80億1600万  14億2300万
2010年   87億2200万  15億
2011年(予)106億     17億4000万(連結決算開始!これからどうなるんだw)


ITバブルがはじけた2000年とか9.11があった2001年とか、スタートアップに重なるんで、かなりしんどかったんですけど、つらさを乗り越えるってのは組織も人も強くしますよね。ここだけで笑いと涙が満載の本がかけますよ。書きませんけどw

そして、なんとか事業計画より2年遅れくらいで、上場準備に入るんですけど、上場ってわかってはいたんですけど、準備だけでとんでもなくめんどくさいわけです。まず、法令に添った形で、あらゆるドキュメントがきちんとしていないといけないです。それも過去にさかのぼってね。これ普通、非上場企業だとかなりいいかげんですよね。さらに社内の業務分掌をしっかりさせて、機能を明確にしてくんですよ。業務フローやリスクの管理もきちんと文章で起こして、ある一定の基準を満たさないといけないわけです。いろんなことをルールで縛りあげる感じです。業務にかかる負担ってのはぐっと重くなるんですね。

あと一番困ったことは、上場準備期間ってのは新しい事業をしづらいんですよ。なんでかっていうと、新しいことをはじめちゃうと事業計画が変わっちゃうじゃないですか。事業計画が変わっちゃうと審査の範囲が変わるし、投資家は混乱するしでね。それより何より赤字になったら上場できない。だから約1年半くらいおとなしく新しいことをできるだけスルーするわけですよ。
それがきついんですよね。新しいアイディアが次々に浮かぶぼくとしてはw当時、リスティング広告用の検索エンジンとか、SNSとかひっそりやりましたけど、どれも中途半端になってしまいました。(関係者のみなさんごめんなさい)


あと、上場っていうとね。株主や取引先に反社会的勢力がいないかとか徹底的に調べなきゃいけないし。そのためのコストもみんな会社もちなんですよね。それにいろんな利害関係者が登場するわけですよ。変な誹謗中傷を始める人とかね。こういうのをきちんと整理していかないといけないんですね。これはもうストレスの塊のような毎日なんですよね。

ときどき、何でそんな苦労までして株式上場するのかって言う人がいるんですけどね。ほんと、何でだろうっておもちゃう人がいても不思議はないプロセスですよね。来月、25歳で上場っていう人がいるらしですけど、ほんと若いのに感心しちゃいます。

でも、ぼくらには上場させないといけない理由があったんですよね。まずはぼくたちに資金を支援してくれた人をハッピーにさせたいという思いがありました。何でかって言ったら、そりゃ一応事業計画を書きますけど、そんなものうまくいくかどうかわからないじゃないですかw未来のことですしね。誰か強烈なライバルが出てきたら事業なんて一発で吹っ飛んじゃいますしね。そんな中で、まったく経営のキャリアがないぼくたちにお金出してくれるんですよ。ぼくらのことを信じてね。だから、これはお返ししないとダメだと思うわけですよ。これは義理人情の世界です。特に個人で出資してくれる人たちには頭が下がりました。企業から出るお金と個人のポケットから出るお金じゃ同じ金額でも価値が違いますからね。

次にですよ。上場しないとぼくの生活が破綻するんですよね。資本政策のために個人で銀行から借金してますし。会社が受ける融資もぼくが個人保証していますからね。ほんと、会社の財務が家庭の財務に直結しているわけですよ。かわいい子供(今は生意気だけどw)を路頭に迷わせるわけにいきません。

それにね。上場の目的をよく直接金融(資金調達)だっていう専門家の人いるんですけど、確かに教科書だとそうだと思いますけどね。もっと大切なことは、「株式の通貨化」だと思うんですよ。上場させることで株に値段がつきますよね。それで流通できるマーケットがあるわけですよ。つまりお金と同じになるんですよね。ところが非上場だったりしたら、株式ってなかなか取引が大変なんですね。土地と同じで相対取引ですからね。もしですよ。自分の持っているお金が自由に使えなかったらどうですかね?そのお金に価値感じますかね。そんなことも考えながら上場を目指したわけですよ。

あと、企業の信用力があがるとか、リクルーティングに有利だとか。確かに上場企業のメリットになりますけど、逆にベンチャースピリッツが減ることを考えると本当にプラスかどうかわかりません。昭和な人たちがまだ多い証券業界ですから、とにかく金儲け以外の理由がいろいろ付けられるわけです。

あとね。証券市場の上場審査を通過した後が大変、ロードショーっていって(映画じゃねえだろw)投資家の皆さんに事業説明をするんですよ。1日に4〜5箇所、2週間くらいかけてまわるんですよ。来る日も来る日も同じ説明をするわけです。これは結構きついすよ。まるで苦行のようです。でもこれやらないと、IPOするときの株の需給がわからないっていうんですよね。値段もつかないって。そんなことないと思うんですけどね。不思議な慣習ですよね。

いずれにしても上場後も投資家に対して説明するっていう機会はぐっと増えるわけですよ。これも上場していたらしかたがないんだけど、すごくコストと時間を奪われちゃいますよね。

ああ、こんなことだらだら書いていたらきりがないですね。

それでね。今日のうちの会社の株価なんですけど、だいたい9万5000円くらいなんですね。発行済み株式数が10万ちょっとだから、時価総額で100億円の価値がついている企業ということになります。(市場が付けている値段ですね)

ところがですよ。IPOしたときの株価はいくらだったかっていうと30万円なんですね。なのでその時の時価総額で300億円なんです。

6年前、売上げが42億7000万で、経常利益7億6500万円で、企業価値が300億
6年後、売上げが106億円で、経常利益17億4000万円(予想)で企業価値が100億円


あれれれれ、売上げも利益も2倍以上になっているのに(純資産も2倍以上、財務も当時よりずっと安定しているのに)企業価値が1/3になっちまっているぜ。

なぜこんなことが起こるのか?それはね。ぼくが経営ベタかもしれないってこともありますけど、時代の波でサーフィンしちゃってるってことですよ。

6年前はホリエモンがテレビで大活躍していて、ミニITバブルとか呼ばれていて、上場しているネットベンチャーの株価収益率が平均で80倍とかついていたんですよね。株価収益率ってのは、その会社の利益を積み重ねて何倍でその株価になるかっていう指数。つまりですよ。80倍ってのはその会社がその年に生み出す利益の80年分の株価ってことですよ。すごいですよね。80年先までの利益を取り込むわけですから。もちろんその企業が毎年利益を倍々で増やしていければ6、7年で回収できるんですけど、そんなすごい企業めったにねえですぜ旦那。

だから、うちの会社がIPOしたときも、もちろん急成長するだろうって期待されていたともあるんだけど、やっぱりそういう時代の中で過度に期待されたということですかね。

逆にうちの会社の今の株価だと株価収益率9倍くらいですから、今の株式市場は「この会社はそんなに成長しない会社だ」と見られているんですよね。株主の方に「おい何やってんだ早く株価を上げろ」っていつも怒られていますね。

ちょっと経営者としては悔しいわけですね。もちろん、虎視眈々と狙っていますよチャンスを。
チャンスってそんなたくさんないですけどね。

でもですよ。ぼくはには時代に翻弄されずに、会社の価値をあげて行きたいという明確な理由があるんですよ。それは申し訳ないですけど、いま株式市場で投資してもらっている投資家を喜ばせるためじゃなくてですね。(だって市場の株価あがろうと下がろう投資家はみんな自己責任ですからね。その点お間違えなくw)上場以来、毎年、従業員に出しているストックオプションがあるんですけど、右肩下がりの株価の中で、一度もそのオプションが行使できるような株価になっていないんですよ。ストックオプションだけじゃなくて、株価があがれば従業員に還元できることってたくさんあるんですよね。けれども、みんな一生懸命がんばって業績上げているのに、株式上場しているメリットを従業員になかなか還元できていない。これは経営者としては由々しき事態です。


あらゆるお金儲けって、お金儲けのためにしたらダメだと思います。社会に価値があるものを
生み出した結果として、お金がついてくるって感じじゃないとね。
ところが株式市場ってやつは、将来の価値を取り込むんですよ。価値を作り出す前に。だから悩ましいんですよね。生まれたばかりの赤ちゃんを美人に見せるようなことをするかどうか。経営者としては。


上場してよかったのか悪かったのかよくわからない話になっちまいましたけど、上場を目指す人たちは、もちろん、どんどん目指したほうがいいですよ。価値が生み出せたら、そのリターンは圧倒的ですから。日本で金儲けしようと思ったら、土地神話が崩れた今、株式しかありませんからね。どんなに大会社に入って、出世街道まい進しても年収増やしても、生涯年収じゃあ足元にもおよびませんからね。6年で株価3分の1になっちゃったうちの会社ですら、もし創業時に投資していたら、今の株価でも40倍ですからね。


と、誰に読んで欲しいんでしょうか?思いながらも、なんとか6年上場していられていたことに感謝して、書いてみました。

ともかく、皆様の健闘を祈ります(何のw)

@ankeiy