失われた20年とネット革命(雑文)

よく、失われた10年とか20年とかいうじゃないですか。これ日本経済の成長が止まってしまって10年たっても20年たっても成長ゼロっていうことを言っているわけですよね。90年バブルが終わって10年たってみたら成長ゼロだったった。じゃあ「失われた10年」と呼ぼう。と思っていたら、あっというまにそのまま20年たってしまったという笑えない、悲しい話でもあるんですよね。

08年のリーマンショックが特にひどくて、名目GDPでいうとあらーーと20年前に戻ってしまったわけですよ。名目GDPが増えないということはみなさんのお給料も何年たっても変わらないような状況ということです。08年には秋葉原殺傷事件もおきて、みなさんもよくご存知の派遣切り問題から、貧困の問題、そして格差問題へとつながっているわけです。

それからもうひとつぼくらはやっかいな問題を抱え込んでいますよ。2000年あたりからモノの値段が下がるというデフレ状態がずっと続いていてる。値段が下がることはいいことだと思いがちだけど、高く売れないと企業が儲からない、だから賃金が上がらない、だから景気がよくならいという悪循環に陥っているわけです。

さらに悪いことにリーマンショックの危機的な状況を回避するために各国大幅な借金をしたものですから、今までも借金だらけだった国が次々にお手上げ状態になってしまって、グローバル的にも大変な状況になんですよね。日本も例外じゃなく既に借金1000兆円、そして今回の大震災と原発事故を抱えているわけですから。

過去20年間の名目GDPを見てくださいよ。

ほら、見事に20年前に戻っていますよね。2000年までは不良債権処理とかマイナスをどうなくすかという状況だったんでまあ仕方ないと思いますけどね。(でも、これも処理の仕方が生ぬるくて批判されました)その後、小泉さんが総理大臣になって竹中平蔵さんとがんばったんですけど、郵政改革とか新自由主義っていうんですかね。国の仕事を民間に渡すことと規制緩和をしてずいぶん景気よくなりそうだったんですよ。ところがですよ。ここでホリエモン事件がおきるわけですね。まだ裁判が継続中ですからなんともいえませんけどね。今となればこの事件、小泉政策を快く思っていなかった人たちの反乱ですかね。象徴的なホリエモンが狙われたように思えますね。これまで規制緩和ベンチャー育成が世の中の元気の象徴になっていたのに、いきなりそれが縮まるわけですね。ホリエモンハゲタカファンドなんかをうまく槍玉に挙げてね。世の中の空気を換えてしまったわけですよ。

結果論ですけどね。もしあの事件がなければ名目GDPは過去最高を超えてきたかもしれませんよ。まあ、その中にはバブル再来と呼ばれる場面もあったでしょうけど、案外うまく切り抜けられたかもしれません。なぜなら、ぼくらはネット革命の真っ只中にいたわけです。当時まだうさんくさい目で見られていたかもしれませんけど、今になってみたらネットが世界の中心ですからね。革命がうまくバブルを吸収してくれた可能性は否定できませんよね。現にあのとき、楽天とかヤフーとか最初に上場した企業の投資先が上場しはじめていた。その上場先がまたさらに次の企業に投資するという循環が出来つつあったわけですからね。

新自由主義にはかなりの批判もあるし、医療や教育に対する民営化はやりすぎだし、セーフティーネットの問題とかしっかり整理しないといけないと思うけど、失われた20年を取り戻すためには、あの時ホリエモンを逮捕せずに、小泉政策を修正して続行させるべきだったと思いますよ。その後、年金問題なんかも不幸なタイミングで出てきてしまったから仕方ないのかもしれませんがね。

ぐちってばかりいてもしかたないので、この「失われた20年」でぼくらは何を得たかという話にしましょう。まずぼくらが得たのは世界最高水準で安いデータ通信回線です。これによってどれだけ新しいコミュニケーションやビジネスの場を手に入れたことか。

ネットユーザー数とケータイ(PHS含む)の出荷台数の推移を見てくださいよ。

この中で大きなトレンドの変化をもたらしてくれたのは1999年にサービスを開始したドコモのi-modeですよ。何しろケータイのあの小さな画面の中でデータ通信が、商売ができることを証明したわけですから、それはすごい発明だったと思いますよ。さらにぼくらの生活はメールだらけにして、コミュニケーションのあり方自体変えてしまったわけですからね。2chがはじまったのも1999年ですよね。匿名文化も負の部分ばかり取り上げられますが、相当ネットを普及させたプラス面も多いと思いますよ。この年は日本のコミュニケーションが変わった重要な年なんですね。

次に大きな変化をもたらしたのは2001年のYahoo!BBの開始ですよね。当時さんざん文句言われながら孫さんががんばって無料でモデム配って、ADSLというブロードバンド回線を普及させてくれたわけですよね。各ISPも追随してくれたおかげで安くて早い回線をぼくらはゲットできたわけですよ。その後、オンラインで買い物したり、動画を見たりという今でいう当たり前の世界が実現したわけですよね。ぼくは孫さんのこと尊敬していますよ。ベンチャー企業家としてやっぱりナンバーワンですよね。

00年代にぼくらが手に入れた最大なもの何ですかね。それはたぶん「情報発信力」ですね。次のグラフを見てくださいよ。

ブログシステムの普及はすごいインパクトでした。いくら簡単だといわれてもね。HTMLとかCGIとかWebのプログラミングは一般人の情報発信の壁なっていたわけですよ。それをブログが一気に壊してしまった。1億総情報発信時代の幕開けなわけですよ。このときにやっぱりGoogleもがんばったとおもいますよ。Googleががんばってくれなかったらいまだにぼくらは無数のブログの中で迷子ですからね。

そして、2004年mixiのスタートで一気にソーシャルメディア時代に突入するわけです。友達の相互承認というスタイルからスタートして、Twitterの片思いでも情報が取得できるシステムへと変貌しているわけです。ニコ動やUstという映像コンテンツと連動することで、さらに情報発信やコミュニケーション厚みが出る世界を実現しているわけですね。

ぼくらが「失われた20年」の間に手に入れた最高のものは「データ通信環境」の大変革によるネットというコミュニケーションツールなわけですよ。この20年間に経済だけじゃなくて文学も音楽も芸術もスポーツもあらゆるものが行き詰まってきたと考えている人が多いじゃないですか。けれども、それはかならずネットの上で形を変えて再生していき、その拡大再生産を目指すためにさらにネット上に市場が作られていく。少なくともものづくりをする人にとって、ネットは自分のコンテクストを作り上げる重要なツールとなったはずです。


ぼくらは失ってばかりではないですよね。元気出していきましょう。


それともう一つ、00年代に忘れてはいけないぼくらのヒーローがいますよ。単身米国に乗り込んで、コツコツと毎年200本以上安打を打ち続ける。それはほんとうに日本人の誇りだと思いますよ。

イチロー今年も200本たのむぜ!