ビートルズとエロ本

昨日から大工原正幸くん、その名前が頭に居座って離れません。

大工原正幸くん、君は、中学1年のとき、ぼくにビートルズとエロ本を教えてくれましたね。Strawberry Fields Foreverを口ずさむ君は、ぼくの大人への階段の扉を開けてくれたんだよ。


そんな君に偶然会ったのは、19才の暑い夏。ぼくが新宿で朝まで飲んでへとへとで新大久保のアパートに帰る途中、そう靖国通りと職安通りの間にある小さな公園だったね。ベンチにうなだれて座っている君をぼくが見つけたんだよ。近づくと君はおどおどしながら、ポケットをまさぐり、「ラ、ライターですよね」と、ぼくを怖いお兄さんと勘違いして火を差し出してくれたね。


次に君を見たのは、TVのブラウン管の中だった。1992年のロス暴動のとき、なぜか君はLAにいて、ワイドショーのインタビューに、確か頭から血を流しながら答えていたね。暴動のさなかとはいえ、元気な君に会えてうれしかったよ。


その次に君を見たのもTVの中だった。夜中に目が覚めてしまい、眠れなくなったぼくがTVをつけると、朝まで生テレビの客席から君が出演者に何かするどい意見を言っていたよ。真剣なまなざしが印象的だったよ。


大工原正幸くん、君はいつも突然ぼくの前に現れる。そしてぼくの記憶に足跡をのこしていく。


ぼくは昨日、オフィスからの帰り道に、車に踏み潰されて表面がくちゃくちゃになったエロ本を久しぶりに見かけたんだよ。そしたら急に懐かしい思いがよぎり、頭の中でサージェントペパーズロンリーハートかかり、君の姿がうかんできたんだ。

今朝、「大工原正幸」で検索してみたら、一人FaceBookに登録があった。写真を見ても君かどうかわからない。なぜなら君はそんなに太っていなかったからね。けれどもこの文章を書いたあと、ぼくは勇気を出して友達リクエストをしてみるよ。33年前に借りた心のエロ本も返したいしね。