バカにされるエネルギーは先見性をはるかに超えるという件について

何か商売をスタートするとき、それをはじめるタイミングがすごく大切だというのは間違いないと思います。よく「流行の一歩先くらい」がちょうどいいって言いますしね。あまりに早くスタートしてしまうと、まだ市場が立ち上がっていないから失敗するし、遅れると先に誰かに果実を奪われてしまうというイメージなんだと思います。

ぼくもこの事業のタイミングを当然すごく意識してきました。たとえば今手掛けているネット広告のサービスも、まずネットユーザーが育って、Webコンテンツが増えてそこで事業を展開する広告主が増えて、はじめて「それじゃあ、広告でも利用してみるか」となるわけで、早く始めすぎると「あれ、市場がないぞ」ってことになるわけです。ぼくたちがアフィリエイト広告の仕組みを引っ提げてネット広告市場に参入したのは、2000年ですが、実際に市場が立ち上がった感触を得るのは2002年過ぎです。2年間は亡霊のようにさまよっていましたw市場が立ち上がった最大の理由は孫さんたちが火蓋をきったブロードバンド(ADSL)の使い放題のインターネット接続サービスが全国にいきわたり、楽天をはじめとするECビジネスが成立し、ようやくネット広告という話になったからです。

「ちょっと早すぎましたね」っという話は業界ではよくある話で、スタートが早すぎたために時代が追い付いてこれなかった。結果まったく儲かりませんでした。こういう昔話は酒のつまみにはいいんですが、ただそれだけですwそれじゃあベストのタイミングではじめることができれば、商売はうまくいくのかというと話はそう単純じゃないというのが今日のブログのテーマです。

ぼくは1994年にインターネット接続サービス「リムネット」の立ち上げに参画しているのですが、その時、マーケティングや広報全般を取り仕切っていました。サービス開始前からすごく意識したのは「日本初」というメッセージです。1994年当時、電話回線を利用してダイヤルアップでインターネットに接続できるサービス(後にプロバイダーと呼ばれるようになります)は既に1社ありましたが、とても高額で、一般人が利用できるようなものではありませんでした。そこで我々は3分間10円で利用できるという低額従量課金のサービスを「日本初」でスタートするわけです。これは大変受けました。あっという間に会員1万人をこえ、日本最大規模のプロバイダーになったわけです。もちろん、その道筋は平たんではありませんでしたがw。日経新聞日経BP系の雑誌にまだインターネットという言葉がほとんど登場しない時代ですから、取材もたくさん受けました。とにかく「日本初」を引っ提げて注目を浴びたわけです。ニュースリリースを出すと、新聞にどんな風に紹介されるのか翌朝は楽しみだったものです。

(余談ですが、先日、とあるお店で買い物をしてレジで並んでいると、前に並んでいた人が、会員登録か何かでメールアドレスを記入していて、ちらっと見えてしまったんですが、アドレスのドメインが、st.rim.or.jpでした。これリムネットが最初に設定したドメインです。ということはこの人20年以上リムネットを使っている人だということで、思わず声をかけそうになりました。そう、驚くことにwリムネットはいろんな会社を転々としながらまだサービスを継続しているのです)

ところが、このリムネットもあっという間に大資本が参加するレッドオーシャンに飲み込まれます。その後は皆さんもご存じのとおりNTTやKDDIという通信キャリア、あるいはソフトバンクという新規参入があり、一気に市場は寡占化していきます。TVでどかどかCMされて、街角でタダでモデム配られたらかないませんよね。リムネットは先見性もありベストのタイミングで市場に参入したはずなのに、その知名度や競争力を維持できたのは、結果としてわずか数年でした。(その後は表舞台から去るわけですが今日もサービスが続いているというのは、通信事業いう会員ストックビジネスが堅牢なモデルであることがわかりますw)

世の中では、リムネットのような話は山のようにありますよね。何かしらのきっかけで新しい時代が動きはじめたとき、そういう新しいことに敏感な連中から行動力がある一部の人間が立ち上がる。そして注目を浴びるがやがて市場ができ競合が生まれ、強いところが生き残っていく。まあこれが資本主義経済ですよね。たとえタイミングよく市場参入できても、先見性があってもそこで得た競争力っていうのは案外続かないわけです。たとえゼロから始めてキャズムを乗り越えたとしても。そしてその早くはじめる強みはソーシャル時代に入りさらに弱くなっていると感じます。グロースハックとかネットワーク効果とかどうもそっちに気を取られ過ぎているような気もします。

それでは、ビジネスの継続性や競争力を高めるために何が必要かという話です。結論か言うと「バカにされるエネルギー」がすごく重要だと思います。この量と期間が長ければ長いほどその事業は強くなると思います。例えば、いまでこそ世界の小売りの頂点に立とうとしているアマゾンですけど、創業から10年あまりは「利益の出ないビジネス」とさんざん投資家やアナリストからバカにされてきました。社会からそのやり方じゃあ儲からないと烙印を押されるような状態ですよね。もちろんECビジネスは新しいビジネス形態ですからそれなりに注目されるわけですが、アマゾンがバカにされるたびに、競合として参入する企業はアマゾンと同じことはしないようにしようということになるわけですw極め付けはITバブル崩壊前後にアマゾンは自社で倉庫を抱え、在庫を持つ方向へ大きく舵を切ります。赤字でまったく儲かっていないのにさらにとんでもな投資をして在庫を抱えるなど世間からみたらまったく不思議な話でした。せっかく無在庫のネット企業の身軽さを自ら捨てるわけですから。これまた社会から「バカの烙印」を押されるわけです。競合はそんなアマゾンを見てバカだな、あの企業とは同じにならないようにしょう、と思いますよね。ところが現状を見れば明らかなように「バカだな」と思われることが、アマゾンという企業のその後の長期的な競争力になっているわけです。

同じようなことは日本でもたくさんあげられます。例えば楽天楽天以前にもモールビジネスを立ち上げたベンチャーはありましたがどこも上手くいっていませんでした。さらにモール型のビジネスは極めて近い将来に競合ECがひしめくことでモール内競争が発生し、撤退が増え、ビジネスの天井は近いだろうという見立てをする人もかなりいました。当時、モールビジネスは儲からない理由を探す方が簡単だったといえるでしょう。そのおかげでやはり社会から「バカにされるエネルギー」をかなり得ていたのだと思います。ところが、現実はモールが大きくなればなるほど集客力を高めることになり、まるで横浜中華街や秋葉原のような発展をしていくのです。気が付いた時は誰もなかなか追いつけない位置づけになっているわけです。もちろん、戦略の組み立てには三木谷さんならではのアイディアがたくさんあったと思いますが。これは大きなトレンドの話です。例えば、カカクコムもそうです。カカクコムの創業者ははじめ秋葉原パソコンショップを回ってパソコン価格を調べそれを手入力してデータベース化していくわけですが、このデータベースを入力している姿を見てみんなどう思ったかというと、「バカだなあそんなことして」だったと思います。そのビジネスのやり方を見て「よし、俺もやってみよう」という人が長い期間いなかったわけです。今でこそ立派になったカカクコムを見て、やっぱりデータベースビジネスだよなあとか後付けでストーリーを語る人はいると思いますが、2000年前後の「バカにされるエネルギー」は巨大だったのだと思います。

バカにされるエネルギーが大きければ大きいほど、期間が長ければ長いほどその企業の競争力は高くなり、必然的に競争力がアップするはずだ。というのがこのコラムの趣旨ですが、そういう話をすると、ビジネスを大きくするための資金や人材はどう集めるのだという話になります。そうです。そんなバカにされるような企業に「金」や「人」は集まらないという問題です。しかし、これは心配に及びません。一握りの理解のある投資家が存在すればいいのです。バカにされるような現在の先にある夢を語れる経営者がいればいいのです。

もうひとつ、バカにされるようなビジネスがなんで利用者の支持が得れるのかということも疑問ですよね。それはひとえにそういう経営者は自分たちの利用者のことを徹底的に見ているからです。社会全体を見ているわけではありませんw社会(マスメディア、アナリストや株式市場)から見ると、一見不合理に見えるようなことも、経営者としては大まじめに自分の顧客をどう喜ばせるかという一点に合理的にフォーカスされているわけです。結果として、この社会と顧客の意識のギャップが、ライバルの戦意を喪失させ、圧倒的な競争優位を生むのだと思います。

時代のあだ花のようにパーと華を咲かせる事業はあると思いますし、先行者利益というのも当然あると思いますが、事業にとって大切なことはやはり継続すること、つまりは自分の市場で競争力を維持することなではないかと思います。そうでなければ、雇用して多くの人々を巻き込んでいく本気の覚悟なんて経営者になかなできるもではありません。事業にとって先見性よりタイミングより大切なことは、自分が未来に信じる世界感を社会からどんなにバカにされても、じっと顧客のことを見ながら、間違いに気づけば修正しながら、持ち続けるエネルギー(ビジョン)なんだと思います。

年始にウォーレン・バフェットさんの本を読み返したのですが、バフェットさんははっきりと「投資は長期の競争力が極めて重要なので、売上より営業利益率だ」と言っています。つまり、たとえ売上が縮小傾向でも営業利益率(つまり市場における競争力)が維持できれば、その企業は彼の投資候補となるということです。そしてバフェットさんがCEOとしてバークシャーハザウェイを何十年も成長させてきたのは、この「売上より営業利益率」だという考えと、その投資の成功確率を上げるために、この競争力を左右するリスクができるだけ少ない企業を選別して投資してきたということだということです。ある意味、マイクロソフトインテルのようなスター企業に何で投資しないんだとパフォーマンスが悪いときにバカにされながらも、そんなことをどこ吹く風で自分のやり方を何十年もやり通してその競争力を維持してきたんだなあとあらためて思いました。

ちょっと長くなりましたが、みなさん、2017年もバカにされながら、コツコツがんばりましょうw

@ankeiy

ぼくの病気と自分のために生きていることについて。

今年も残すところあと数時間あまりになりました。みなさん本年もお疲れ様でした。「さて2017年の準備でも始めましょうか」と言いたいところですが、本年中に書いておかなければならないことがありました。それは私の病気の話です。このブログも1年間ほとんど更新できなかった理由も、ややそこにありますが、そもそもブログなど書いている余裕がなかったのでありますw

ぼくも50歳を超え、病気の一つや二つは付き合いがあります。大切な友人も若くして何人か病気で失っていますし、そのたびに乾いたぞうきんを絞るような嫌な思いをしてきました。古い友人に久しぶりに会うと、自分や家族の病気や治療の話に花が咲いたりしますwそのくらい病気ってのは身近なものでありますが、元気なときはだいたい自分ごとになっていないません。自分だけは大丈夫、病気にならないと心のどこかでいつも思っているわけです。ぼくもまったくそういう人間であります。しかし、著名人の突然死のニュースじゃないですけど、ある日、突然、それは自分ごととなって自分の前に現れる。それは決して他人事ではないわけです。

まあ、病気の話なんて縁起でもないのでブログに書くようなことではないかもしれませんが、病院のベッドで寝ているときに、ネットで検索して自分の症状に近い人や治療をした人の話などを読んでいました。ネットの医療情報の信頼性がどうのこうのというニュースが話題になっていますが、いざ病気になると、治療方法とかこれからどうなるのかなんてことは医者に聞くしかないんですけど、実際に病気を体験した人の話はその人しか感じえなかった不安や希望を感じ取ることができるので大変心強いものがあります。病気ってのは心の問題がすごく大きいわけです。心の支えになるっていうのはある意味、西洋医学の知識や薬なんかより元気をもらえたりするわけです。
ということで、ぼくもこれからぼくが体験した病気をこれから体験するであろういくばくかの人々のために、記録としてブログを残しておかないといけないなあと思った次第です。記録的な意味もあるので事実の記載に文字数をさいたのでいつもよりとんでもなく長文ですw

「2016年ぼくの病気」事件は、どうも体調がよくないので2016年4月9日に近所のかかりつけの内科で受けた血液検査から始まります。結果を聞きに病院を訪れると、いつもニコニコしている先生が真顔で「柳澤さん、どこ行っていたんですか?」「電話しても全然つながらないから心配していたんですよ」と。「え、電話したんですか、、、」その病院に登録してあった電話番号はもう使ってない電話だったんでそもそもつながるはずないですけど、これはただ事じゃないないと思いました。案の定、検査結果は肝臓の数値が軒並み高く、先生は肝臓の異常を心配してできるだけ早く再検査を受けたほうがいいということをとにかくぼくに伝えたかったようです。


<4月9日の肝臓の数値>

特に医者が気にしたいたのはCPKという筋肉の破壊を示す数値が高いところです。この筋肉の破壊の数値が高い理由は2つです。ひとつは筋トレなどの激しい運動で筋肉が破壊される場合ですが、もうひとつは筋トレ以外の何らかの理由で筋肉が破壊されているということです。筋トレの直後だとこの数値は当然高くなるわけですが、ぼくが最後に運動をしたのはもう1週間も前。体調が悪くて血液検査を受けているわけですし、他の数値も正常値を超えていることを考えると、筋肉でなんらかの異常が起きていることを疑いたくなるわけです。そもそも、ここ何週間か体調が優れない理由に「手の指がこわばり」というのがありました。あと、身体がぎくしゃくして柔軟性がなく、それがなんとなくしんどいんわけです。この症状を改善するために3月はトレーナーについてストレッチをしたりしたんですが、まったく効果なく逆に身体のますますぎくしゃくするようになっているという説明を先生にはしているわけです。

この身体のこわばりとダルさは5年ほど前に一時期もあり、その時はリュウマチも疑い検査をしたんですが、特に問題なく、パソコンとスマホをやりすぎると疲労がたまってこんなことになるのかなあ、自律神経がおかしいのかなあくらいに思っていました。

肝臓の数値が悪いことで、かかりつけの医者がまず疑ったのは「膠原病」でした。膠原病、いまこの瞬間もこの病気で苦しまれている方が多数いらっしゃると思いますが、膠原病そのものは病名というよりも自己免疫疾患の難病全体を示すような病態で、難治性の症状も多く、病気との付き合いに相当苦労するような病気です。そこで、ぼくはかかりつけの医者に駒沢公園横にある東京医療センターへの紹介状を書いてもらい、まずは膠原病の詳しい検査を受けることにしました。

4月の中旬、新緑がまぶしい春の日差しがいっぱいの中、重くてだるい身体をひきずってやっとのおもいでタクシーで東京医療センターまでたどり着き検査や診察を待っていたんですが、その時すでに椅子に座っていることが辛くてできず、長椅子に横になるような状態でした。春先ですから気温もさほど高くなく病院内はまだ暖房が入ったりしているんですが、とにかく寒くて仕方がなくて、体調がどんどん悪くなっているような気がして、すごく恐ろしい気持ちに取り囲まれ始めていました。

検査の結果は、幸いにも膠原病ではなさそうだというものでした。内臓の検査も血液、エコーなどで見る限り、特に腫瘍とか肝炎とか緊急性の高い病巣はないという結論でした。内科の医者は、しばらく休めば数値は改善するんじゃないかというような見立てでした。

結果を聞いて安心すると同時に「じゃあこの具合悪さはなんなんだああ」という不安がめりめりと頭をもたげてきました。そしてその晩あたりから次第に夜もよく眠れなくなります。眠りに落ちそうになると身体全体がこわばり、そう、疲れて足がつるような状態になり、痛くて目が覚めてしまうのです。こうなると夜が怖いです。夜も眠れないばかりか、次第に昼寝もできないようになってきます。寝ることが怖いというのは恐ろしいもので、このままじゃ死ぬんじゃないかという恐怖すら頭をもたげてきます。

こんな中で、ネットを検索しながら自分の症状と同じ病気を調べていくと、これは筋肉の病気ではないかというように思うようになりました。筋ジストロフィーとかで知られるミオパチーではないかと疑い始めたわけです。

不幸中の幸いで友人に筋肉系の難病と戦っている男がいまして、その友人に電話をして状況を説明し、脳神経内科の先生を紹介をしてもらうことにしました。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター (NCNP)のO先生です。

自宅から車で2時間近くかかる場所にあるんですが、ここは藁をもすがるつもりでタクシーに乗り込み、紹介してもらったO先生のところをたずねます。待合室で寒さと痛さとだるさに耐えながら長椅子に横たわってまっていると、O先生のもとには、筋肉の難病の患者さんが次々に訪れます。そういう人々を見ながら「ああ俺もこういう病気なのかもしれないなあ」と考えると絶望感に打ちのめされるのですが、具合悪さがそうした感情より勝っているので、なんとかこの苦痛を止めてくれ、そのあとのことはそのあとで考えようというくらいつらい時間をすごすわけです。

血液検査をしたり、肺活量の検査をしたり、やっと診察の時間になります。O先生の見立てでは、症状は確かに近いものあるけど、筋肉系の病気にも思えないという感じでした。うーん。これは単に疲労から肝臓が疲れて、身体全体が調子悪くなっているのかなあ、と都合よく考えて帰宅するのですが、その日からも体調は下り坂を転がるように悪くなります。そして目の前にはゴールデンウィークが迫ってくるわけです。気温が上がり頬にあたる風がやさしくなればなるほど、ぼくの皮膚の裏側は苦痛を蓄積していくような感じでした。

そこでゴールデンウィーク直前に一縷の望みをかけて、もういちど精神・神経医療研究センターのO先生を訪ねます。もし数値が改善傾向なら、辛さも我慢すればいつの日か元にもどるわけですから。そうした淡い期待をもって血液検査をします。しかし、結果はよくなるどころか、さらに悪化しているわけです。かれこれ20日間くらい苦しんでいます。これは間違いなく原因不明の難病です。とにかく先生ともっと話したい、何んでもいいから原因の糸口をつかみたい。O先生も翌日からゴールデンウィークで病院が機能しなくなるので、ネットを使っていろいろ一緒に調べてくれます。病院の診察時間はもうとっくに過ぎているというのにです。そんなとき、ぼくがぽろっと言います。

「先生、私、下垂体腺腫があるんですよ」

先生の目の色が変わります。「うーん、何でもっとはやく言わないの」「それが原因かもしれないよ」と。ということで、下垂体腺腫と肝臓の数値についての他の医療機関のデータとかをネットで調べてくれたりするのです。

下垂体腺腫とは、脳の中心付近にある下垂体という部位に良性の腫瘍ができる病気で、まあ、わかりやすく言ちゃえば脳腫瘍の一種なんですが、この下垂体というほんとに小さな小さな「のどチンコ」(失礼w)のようなものが、身体中のホルモンをコントロールするという極めて重要な仕事をしていて、車で例えるならオイル系統の司令塔のようなもので、ここの調整がうまくいかないと、いずれ部品がぶつかり合い、摩耗して動かなくなってしまうような。そんな機能をつかさどっているわけです。

下垂体は下垂体そのものが個体として仕事をしているわけではなく、下垂体にある細胞が個々にそれぞれの細胞が持つ固有の能力を発揮しているという複雑さで、その腫瘍のできる部位によって、それぞれ症状が違うわけです。って意味わかりますか?w。例えば成長ホルモンをつかさどる細胞部分が腫瘍とともに肥大すると、成長ホルモンの分泌が多すぎて、手や足が巨大になってしまう。末端肥大がおきたりするわけです。ジャイアント馬場さんはこの病気だったといわれています。逆に腫瘍に圧迫されて思うように成長ホルモンが出なければ、身体が小さく成長できなくなります。男性ホルモンの細胞がやられていれば、当然男性機能がダメになるというような具合です。

この下垂体腺腫は、この「2016年ぼくの病気」事件から、さらにさかのぼること1年2か月前、2015年2月に偶然発見されました。土曜日の朝、ソファーで新聞を読んでいると突然ぐるぐると目の前が回り始めて、横になって目を閉じてもぐるぐるが止まらず、これはおかしいということで近所の脳神経外科を訪ねたわけです。MRI撮影をして、診察室に入ると「柳澤さん、めまいは耳からきているから大したことないけど、目の調子おかしくない?上の方が見づらいとか?」と先生が言います。「はあ?特に」「あなた、脳のここんとこに腫瘍ができているのよ」といってMRIの画像を先生がさします。「がーん、脳腫瘍かあ」。ぼくらの世代といえば「脳腫瘍=死」これは赤い糸シリーズで築き上げられたステレオタイプなわけです。「・・・・・・」とぼくが動揺していると、先生が「まあ、ここはまずほとんど良性だから、死ぬことないから心配しなくていいよ。ただ、あなたの腫瘍はかなり大きくて視神経にくついているから、視覚障害がおきていても不思議はないんだよな」「最近、脳ドックで発見される人多いんだよね」とか言われたわけです。心配するなと言われても心配しますよ、なんてったって山口百恵世代なんですからw


そこでこの脳神経外科の先生から下垂体腺腫では日本で一番症例を持っているという虎ノ門病院の間脳下垂体科に紹介状を書いてもらいすぐに診察に行きました。またMRI撮影をし、ホルモンなどの検査をしました。虎ノ門病院の先生の所見はこういうものでした。

下垂体に17ミリほどの腫瘍があり、視神経に接触しそう、もしくはしている。ホルモン検査の結果は、成長ホルモンが通常の3割ほどしか出ていない。しかし、他のホルモンは正常値にあると思われる。

ぼくの選択肢は2つありました。

1.思い切ってこの腫瘍を外科手術でとってしまう。
2.目に不調が出るとか、体調不良がない限り経過観察

1を選ぶこともできますが、手術は手術そのもののリスクがありますし、手術で腫瘍を切除したことで、現在特に問題がない状態を逆に悪くしていまうリスクもあるわけですし、そもそも腫瘍がどんなスピードで成長してきたのかわからないわけですから、これ以上大きくならないかもしれないし、逆に小さくなる可能性だってゼロじゃないのでぼくは迷わず経過観察を選びました。問題がない限り半年から1年に1回MRIで撮影をし腫瘍のサイズを確認し、成長ホルモンの数値をチェックするという道を選んだのでした。

ということで再び話を2016年4月28日に戻します。うーん長いw。精神・神経医療研究センターのO先生は、この下垂体腺腫が肝臓の数値を悪化させている可能性があるというのです。しかし、ここまでぼくがなぜ下垂体腺腫を原因として疑わなかったかというには理由があります。というのも下垂体腺腫が発見されてから8か月後くらいに、再びめまいがまたしたことがあり、同じ近所の脳神経外科を訪ねてMRI撮影をしたのですが、そのときの所見では腫瘍はまったく大きくなっていなかったわけです。そのとき「これ以上、腫瘍は大きくならないかもしれない。ラッキー!」と思ったわけです。それにぼくの腫瘍は視神経に接触するようなサイズです、仮に腫瘍が大きくなればまず目に症状がでるはずだと思い込んでいました。つまり肝臓の数値が悪化したこと=具合悪いこと=下垂体腺腫が悪さをしているという発想には、目に症状が出ていないためまったく至らなかったのです。後から考えてみれば、下垂体はホルモンをコントロールしているわけですからホルモン調整がおかしくなれば身体がおかしくなるって当たり前のことなんですが、目がおかしくなる方が先だという先入感から下垂体との関係を疑うことをやめてしまっていたんですね。それにこの話は東京医療センター膠原病科の先生には説明していたんですが、その関連性について特に言及されなかったので、すっかり下垂体は今回の病気の蚊帳の外においてしまったたわけです。今から考えると馬鹿な話ですが病気の時とはこんなものかもしれませんね。

というわけで下垂体腺腫が原因かもしれないと確信したのが4月28日の夜なんですが、翌日からGWが始まってしまいます。しかも翌29日はとにか今までにないくらい具合が悪くなり、すでにじっとしていられないような状態に陥ります。そこでタクシーで虎ノ門病院の救急に行くのですが、血液を採取して、問診しただけで、急患担当の医者は「今日は我々では何もできません」の一点張りです。「GW明けにもう一度来てください」なんて悠長なことを言われるんですが、こっちはとにかく苦しいわけですから、「何とかこの苦しみに効く薬とか何か打ってください!」という感じなんですが、この人たちは役に立たないということ絶望のまま帰宅します。

家で苦しさのためのたうち回りながら、そうだ最初に下垂体腺腫を見つけてくれた近所の病院に行ってみよう思いつきます。(もっと早く思いつけよですけどねwそれが病気です)タクシーでやっとのおもいで病院にたどり着いて、最後の力を振り絞ってMRIに入り、診察を受けると、先生は「ああ、腫瘍が一回り大きくなってるね。これが辛さの原因だと思うよ」って軽くおっしゃるわけです。「ホルモン異常だよ。これは。よく今まで我慢してたね。これ辛いんだよなあ」って。「つらいです」早く教えてくださいよw先生ー!先生のところにまず来ればよかったwと後の祭りですね。そして「とりあえず入院してください。GW明けに虎ノ門に転院すればいいから」ということになりました。

近所の脳神経外科に入院してまずはステロイド(副腎皮質ホルモン)の点滴してもらったら、やっと身体の痛みがとれて楽になって一息ついたんですが、MRIの画像にはもう一つの懸念があって、それは抗利尿ホルモンにも異常があるんじゃないかという点でした。おしっこの回数なんかを管理しているホルモンなんですが、これも下垂体にあるんですよね。ここがダメージを受けていると尿崩症といっておしっこダダ漏れで脱水症状になる危険もあるということで、その日から尿量を図るようになりました。トイレに行くたびにしびんにおしっこして、軽量瓶に入れるわけです。これが案外精神的にも大変で、脱水症になるといけないからたくさん水分をとると、尿が余計にでるということの繰り返しで。まあ、とにかく点滴と薬でなんとかGWを乗り切ることができたわけです。治療機能が低下する連休というのは病人にとっては本当に大変です。

GWが終わると、さっそく虎の病院に行って、入院の手続きです。入院先は内分泌代謝科です。ここでどんなホルモン異常が発生しているのかを正確に把握して、その後の対処を決めるということになります。検査の結果は副腎皮質刺激ホルモンがほとんど出ていないとか甲状腺刺激ホルモンが半分くらいになっているとか、成長ホルモン、男性ホルモンもかなり数値が下がっているとか散散の結果でした。特に副腎皮質刺激ホルモンは副腎ホルモンをコントロールしていて、この機能を失うとショック状態に耐性がなくなり、場合によっては死に至るという恐ろしい状況です。尿崩症の可能性もあるので相変わらず尿の量も図り続けます。ということでついた病名が「下垂体前葉機能低下症」です。この病気は特定医療費の支給が受けられる難病指定を受けていて、要はこの病気になる人はあまりいないということです。下垂体外科の先生たちも下垂体の上部にある視神経を圧迫することで問題が発覚するケースは多いが、前葉の機能が低下することは少ないし、あなたの画像から機能が低下しているようには見えないというお話しをされていて、とはいえ、実際ホルモン分泌の数値が悪いわけですから10万人に何人という難病なわけです。


ここで私にはまた選択肢が発生します。

1.薬を服用しながら下垂体腺腫としばらく付き合う。
2.手術で切除する。

これだけ具合悪くなったわけですから1の選択肢はないような気もするんですが、この病気はしっかりと薬があるんですよね。副腎皮質ホルモンはステロイドという有名な薬で補えますし、甲状腺ホルモンも良い薬があります。つまり薬を飲んで生活するということも十分考えられるわけです。実際、副腎機能不全や甲状腺の機能を失ってしまっている方も、この薬でほぼ支障なく日常生活を営んでおられる多数おられます。しかも、仮に手術をした場合も、必ず機能が回復するいうことではなく、機能が戻らないケースも多いわけです。つまり下垂体の細胞が腫瘍に押しつぶされてすでに死んでしまっている細胞は回復しようがないということもありうるわけです。でも、ぼくとしてはあの苦しさを体験しているわけで。できることならもう腫瘍と生活を共にするのは御免だという気持ちに当然なっています。それにわずは数か月の間に腫瘍が大きくなったわけですから、放置するとまたいつ腫瘍が大きくなって、いまはまだ無事な機能すら奪われる可能性も否定できないわけです。

「1日でも早く手術で切除してください!」

というのがぼくの最終結論です。ところがです。虎ノ門病院の脳間下垂体外科は全国でも1,2を争う下垂体腺腫の手術を抱えている機関なわけですから、手術のスケジュールはすでにびっちり埋まっているわけです。順番待ちなんですよね。いつ手術してもらえるかわからないわけです。そこでぼくは「急激に症状が悪化したということは、腫瘍が急激に成長しているということなので、1日も早く切除しないとどんどん悪くなる緊急性があるはず」というロジックで、内分泌科の先生方にとにかく外科の先生に1日でも早い手術をお願いしてもらうという作戦で、とにかくお願いしましたwそのがんばりあってか、運が良かったのか、入院から2週間後の5月23日に手術ということなりました。


下垂体腺腫の手術というのは、昔は開頭手術が一般的だったようですが、ここ数十年は鼻の穴から内視鏡を入れて切除するという方法が中心になっているようです。もちろん部位や状況によっていろいろなアプローチがあるわけですが、ぼくの場合はこの鼻孔からの手術が選択されました。といっても、鼻の中を切り開き下垂体につながる間にある頭の骨を砕き、その先の下垂体にある腫瘍を切除するわけですから大変な手術です。下垂体の周辺には大きな動脈や視神経があるわけですから間違ってそこを傷つけてしまうと大変なことになります。それからこれはよくあるケースなのですが、視神経や血管を傷つけないために腫瘍を取り残すしてしまうと、再びその腫瘍が成長をはじめ何度も手術をしなければいけくなるというケースもあります。

余談ですが、先日のドクターXでまったく同じアプローチで手術しているシーンがあって「ああこれは神の手が必要な手術なんだよね」とあらためて思いました。

(うー。ちょっとこのコラム長すぎますね。かれこれ2時間くらい入力してます。クラウドソーシングなら相当稼げてるんじゃないでしょうかw)

虎ノ門病院に入院中にある別の事件が起きます。それが名付けて「トラトラ事件」です。自宅の隣の家との境の部分に野良猫が子猫を産み落としたのです。なんとその数5匹。しかも5匹ともキジ「トラ」、ぼくがトラの門病院に入院している最中にトラ猫が突然現れたのです。なんだか不思議な話ですよね。まずは母親を確保して去勢をしようという獣医さんのアドバイスで家族がトラップを仕掛けたんですが、残念ながら、子猫がかかってしまい、警戒した母親が子供たちを連れて行ってしまい、結局2匹しか確保できませんでした。もし、ぼくが入院中じゃなければ5匹確保できたのにと悔やまれる出来事でしたが、その2匹はいまも我が家で元気に暮らしています。

<トラトラ事件の子猫たち>

手術の前は、とにかくいろいろ検査したり、いざという時の輸血用の血液を自採血したり、リスクを免責する様々な書類にサインしたりと、病人なんですが、具合が悪くなるようなことを次々にこなさなければなりません。けれど、ぼくが入院していた内分泌科では、ぼくよりはるかに重い症状の患者さんがたくさん入院していて、そういう人たち比べれば、手術をすれば治る可能性がある病気なのだからと、前向きに考えられるほどには精神状態は安定していました。病院では検査以外はとくにやることないですから、昼間はTVを見たりして気を紛らわすわけです。ちょうどそのとき舛添知事問題で大騒ぎしてましたから、ちょっとした舛添さんのことなら何でも僕に聞いてください詳しいよ状態になっていましたw

まあ、そんな感じで手術当日を迎えるわけですが、全身麻酔で手術を受けるなんてのは初めての体験で、もちろん、緊張感あるんですが、印象はTVドラマで見る感じそのもので、室内はとても寒くて、ただ手術台には暖房が入っていて、背中からあたたくて、そのまま麻酔ですーと寝りに落ちます。手術時間は3時間半くらいでしょうか。といっても、本人は寝ているのですからまったく記憶がありません。意識がしっかりするのは、そのあとICUに運ばれてからです。何か緊急事態がないとも限らないのでICUで過ごすわけですが、意識がはっきりすると、とにかく息苦しい。鼻に詰め物がされているわけです。看護師さんが口で呼吸してくださいというのだけれど、口だけで呼吸しようと意識すればするほど苦しい。そう、水泳していて溺れそうになるような苦しさなんですよね。
ぼくはジョギングが生活の一部になってしているし、マラソンなんかも出たことあるんで、どちらかというと鼻呼吸を意識して口で呼吸をしないように生きてきたような男なので、口だけで息をしろと言われると余計に苦しいわけです。麻酔が切れてくると鼻から頭のあたりがじわじわと痛くなってくるし、鼻から血が出てきそうになるので、ときどき看護師さんに鼻につけた脱脂綿変えてもらうんですけどね。最初担当してくれた太っちょの看護師さんはすごく優し人で天使のように思いましたが、深夜に担当した看護師さんはなんか冷たい感じで、ああ、ぼくはやっぱり太った人がすきだなあとか思ったりしたものです。ICUはいろんな機材をつけた緊急性の高い患者さんばかりいるわけですから、一晩中騒がしくほとんど眠れないまま過ごしました。


<ぼくの下垂体腺腫:上部が術前、下部が術後のMRI画像、腫瘍がきれいなくなった>

翌朝には車椅子に乗せられて自分の病室に戻ることができました。相変わらずの口呼吸ですが、手術が無事終わったという安心感で、ちゃんと生きていることを実感しながら、ただただこの鼻の痛みと息苦しさが去ってくれるのをベッドで身体を丸めながら待ちました。術後3日目くらいに突然執刀医の先生が病室来られて、調子はどう?と聞くなりに鼻の詰め物を一気にピンセットで抜いていきました。この詰め物がいつとられるのか、きっと痛いだろうなとか想像していたので、あまりにもあっけなくてびっくりしました。詰め物を取ってもまだまだ鼻は詰まっているんですが、それからは鼻洗浄液でただただ毎日、鼻の中を何回も洗いました。次第に膿が取れて空気が通るようになってきて。少しずつですが、それはうれしいですね。一方で相変わらず尿の量を計測し続けるていたんですが、やっぱり量が多くて、刺激を与えるので術後一時的に量が増えるという説明は受けているんですが、やっぱり尿崩症になっちゃうとこれはまた抗利尿ホルモンの薬を飲まなきゃいけないのでいろいろと面倒な心配も残っていたわけです。


手術後の経過も順調だったので、1週間後くらいにはいよいよホルモンの状態がどう変化しているかの検査を受けることになります。ところがそのころにはホルモンの数値が改善していることをなぜか確信していました。というのも、ベッドで明け方、目が覚める直前にこんな夢をみました。ぼくはタクシーに乗っているんですが、運転手さんが「お客さんつきましたよ」とぼくに言った瞬間、フロントガラスの向こうから黄色い暖かい光がぼくに向けてパーっと差し込んできて、思わず「うおおおお」と声をあげるような夢なんですが、この夢から目覚めた瞬間「ああぼくは回復している」となぜか実感できました。その予想どおり、検査の結果は数値が大幅に改善していて、成長ホルモン以外は正常値に戻っていました。おかげでその翌日から薬を全部やめることができました。

こうして2016年6月上旬、1か月と10日あまりにわたる入院生活に終止符をうつことができて、無事退院することができました。しかも、一時は一生薬を飲む生活もやむなしだった可能性も高かったのに、まったく薬が必要のない身体に戻っていて非常に運がよかったと思います。執刀していただいた先生によると腫瘍もきれいに取れたとのことで、その後の腫瘍そのものの病理検査でも特に悪いものはなく普通の腫瘍だったとのことで安心しました。肝臓の数値もみるみる元に戻り、またお酒が飲める状態に戻りました。しかし約2か月の禁酒はぼくの飲酒史上最大の空白であり、ぼくはお酒なしでも生きていけるのだという自信が持てましたw


しかし、病気というのは、恐ろしいもので、それまで何もなく明日も今日も延長線上にあるのだろうという考え方を、わずかな時間で覆してしまいます。ぼくの脳腫瘍が良性じゃなくて悪性だったらもうぼくはこの世に存在していないかもしれないですしね。もしぼくが筋ジストロフィーだったら今ごろ運動する喜びを失っていたかもしれません。自分は健康だと思いたい気持ちは自分でもよくわかるんですが、こんなのほんのわずかな確率の問題でどっちにころぶかなんてほんと神様しかわからないです。それが証拠に何万人に一人という難病に簡単にかかってしまったぼくがいるわけですから。

病気になるとあらゆる思考がマイナスに回転します。ブログなんて書こうなんて気持ちにまったくなれないし、ツイッターなんてもってのほかです。元気な人と話をすることもいやなりますし、元気な人たちの姿を見るのも湯鬱なものです。将来の目標や希望のようなものが一気に見えづらくなるわけですね。1日1日をどう生きるかということで精いっぱいですし、痛みがあればそれすらも考えられないわけです。しかし、悪いことばかりではありません。普段はまったく気にも留めなかった病気側にいる人たちの気持ちが痛いほどわかるようになります。どうやってこの苦しみから抜け出すかということを必死に考えると自分がいまやらなきゃいけないことの順番も次第に明確になってきます。もし平穏な暮らしの中にいたらそんなこと考えないであろう思考状態にたどり着くわけです。周りの反応にもいろいろ発見があります。普段はぼくのことになんかまったく関心を示さない息子たちが、すごく心配してくれて、いろいろ手伝ってくれたりして、家族のありがたみというの痛いほど感じることができました。


この年末に、今もこの瞬間も病気で苦しんでいる人が世の中にたくさんいると思います。ぼくたち健康な人間がそういう人たちに思いを寄せるというのはすごく大切なことだと思いますが、そういう人たちの気持ちを感じとろう、共感しようということより、自分が病気になったことで、もっともっと大切なことがあると感じるようになりました。それは「自分の残りの人生をしっかりと自分のために生きること」という感覚です。

人間はいつか必ず絶対死にます。今日の延長線上に明日があるわけではなく明日はたまたま運よくやってくるんだと思います。だからこそ今日をしっかりと自分のために生きることがかけがえもなく大切なのだと思います。少しくらい傲慢な奴だと思われてもいいと思います。わがままな奴でも自分のためにがんばっていたらいいんじゃないでしょうか。「自分のために今日を生きた」といえるような生き方の奴にはどんな優しい人もかなわない気がします。

病気の記録といいますか、同じ病気で悩む人が年間で1000人くらいはいそうなので、その人たちの少しでも気持ちの上で参考になればと思い、長文を年末にまとめました。そろそろ年が変わってしまいそうなのでこれで終わりにします。「いま病気で苦しむ人にも来年は希望の光が差しますように!」「2017年も自分のためにしっかり生きられますように!」という願いをこめて。


@ankeiy

あれから1年半、日本のネット企業はどうなったのか?

少し体調を崩していました。お久しぶりです。体調を崩した時の話は別の機会にまとめたいと思っていますが、久しぶりにネット企業のことを少し書いてみました。ネット系上場企業のランキングです。前回から既に1年半近く書いていないんですね。時のたつのははやいものです。

この1年半に何があったのか?まずは2016年10月21日の株価終値による時価総額ランキングをみてください。

単位は億円。2016年10月21日と2015年4月24日の終値から算出。億以下は切り捨て。赤字は1年半前から伸びている時価総額

今回のランキングからリクルートを入れてみました。いまやほとんどのサービスが紙媒体じゃなくてネットでしょうからね。日本最大のメディア企業と言ってもいいと思います。Lineもついに上場しました。おめでとうございます。

全体の話をしますと、しょっぱい局面です。というのもネット産業全体に大きな追い風となったスマホ旋風がこの1年〜2年で失速しているため、時価総額を落としている企業も多いからです。リクルートの2兆3千億円、Lineの1兆円を加えて、ようやく前回測定の2015年4月の総時価総額を上回ることができたというような状況です。

個別にみてきますと、医療情報サービスのエムスリーがついに1兆円企業の仲間入りしました。おめでとうございます。思えばこの企業数百億円しか時価総額がないときにぼくは投資していました。あのまま売らないでいればよかったと後悔しきりですが、まあ人生とはそんなものでありますw

次に気になるのが、スタートトウディの躍進です。みなさんご存じのZOZOTOWN運営企業です。スマホの普及でぐっと売り上げを伸ばしてきました。国内のECとしては別格。まさにモバイルの勝組ですね。

前回までは上位に陣取っていたスマホ関連ゲーム会社もスマホ需要の一段落で、向かい風の中にあるようです。そんな中でDeNAは数字を伸ばしています。これは任天堂との提携によるところが大きいようです。さすがの筒香ですw

中堅どころで目を引くのがディップとエン・ジャパンの急伸です。ここ数年、労働市場はタイトなわけですが求人転職メディアを運営する両者は業績を大きく伸ばし、株価を伸ばしてきています。同じく不動産市場の活況を追い風にネクストも数字を伸ばしていますね。アベノミクス銘柄と言ってもいいかもしれません。一方、アベノミクスの失速でオンライン証券会社が軒並み時価総額を落としています。厳しいですね。

おやおや、ちょっと変な現象が起きています。親会社のGMOインターネット時価総額を子会社のGMOペイメントゲートウェイが抜いちゃっていますね。本来親会社の価値が大きくないとおかしいですが、株式市場とはこういうものですw親会社が過小評価されているか?決済とかフィンテックとかテクマクマヤコンとかいろいろな原因がそうさせているのか?

ネット広告系では、セプテーニ、DAコンソーシアムが数字を伸ばしていますがフェィスブック広告などのソーシャル系広告の取り扱い拡大が追い風の要因のようです。


最後に、33位のファンコミュニケーションズにブルーの網掛けがされていますが、これは何を意味するのでしょうか。不思議です。同社は成功報酬型のアドネットワークを運用している企業のようですが、良い会社のようです。よろしくお願いします。

と、ざっと1年半の流れを振り返ってみましたが、日本のネット企業、50社合わせて時価総額の合計が15兆円。フェィスブック38兆円、アマゾンの39兆円の半分にもなりません。ネット産業はこれから経済の要にならなければいけない分野です。各社一層の奮起が必要だということだ思います。あらためて、がんばれー!日本のネット企業ということですね。

ただ、みなさまにお伝えしたいのは、こういうコラムを書くと、なんだ日本のネット企業しょぼいなとか、ネット産業ももう成長が終わりかとか想像してしまう人がいるかもしてませんが、それは誤解です。米国でもまだEC化率10%程度、日本に至ってはまだ6%程度、地上波とネット動画の垣根がようやく取り払われ、これからユニクロやセブンなどの小売業も本格的にネットに参入し、まさに20年後、30年後は今とはまったく想像できないネット社会が誕生していることでしょう。勝負はこれからです。

最後に、17年前にぼくが会社を立ち上げて資金集めをしていたときに、とあるベンチャーキャピタルの方がぼくへの投資を断り、帰り際に言い放った言葉をみなさんに贈りたいと思います。

彼はこう言いました。

「日本にほんとにECなんて流行ると思っているの?(大丈夫?)」

この方、1999年に本気で国土が狭い日本ではネット通販など普及しないと考えていたわけですけど、そう思っていた人も当時多かったと思います。ところがECはいまや生活になくてはならいものになりつつあります。常に未来の現実は今の想像を超えるのです。と、ぼくを含め読者のみなさんへの戒めの言葉で閉めたいとおもいますw

@ankeiy

愛、それは渋谷一丁目一番地。

ぼくが代表を務める会社、ファンコミュニケーションズの本店所在地は渋谷区渋谷1丁目1番地8号。「1丁目1番地」とは今も昔も物語の原点。そう、まさにここが渋谷の中心地であります。

10年ほど前、ぼくは知り合いに紹介してもらった風水師にオフィスを見てもらったことがあります。社長の席はどこにしなさいとか、グリーンをどこに置きなさいとか、黄色い置物を買いなさいとか、いろいろアドバイスしていただいたんですが、そんな話、ほとんどうわの空で聞いていました。けれども、その風水師が怪しげな日本語で放った次の言葉にぼくは惹きつけられました。

風水師「これからは風水的に8の時代です。」

ぼく「まっ、まじですか!!」

何の文脈から数字の話になったのかよく憶えていませんが、この一言は鮮烈でした。何せ我々が展開しているサービスはA8ネット。「8」がつくじゃないですか!!!さらにオフィスの住所も8号じゃないですか!!「やったー!、勝ったぞー!」(何がw)

それからです。ぼくが「8」にこだわりだしたのは。パチンコではあえて確変の7を狙わず8を狙い、桃栗3年柿8年の柿を好んで食べ、七草には1品加えて8草にし、北に七五三の家族がいれば8年目のお参りも勧め、ビリヤードではエイトボールをポケットに入れることだけにすべてをかける。そう、まさに「8」を中心に生きてきたのです。

そしてぼくは今、当社のオフィスがある渋谷1丁目1番地8号にある青山ダイヤモンドビルの8Fで犬と一緒に仕事をしているわけです。

そうそう。数字の話と言えば、当社の証券コードは「2461」です。ここには8がありません。少しがっかりしましたが、よく考えると246で1、246号線で1番。おおおっ!そう、私たちのオフィスは国道246号線沿いにあるのです。俗称、青山通り。なんと覚えやすい数字でしょうか。投資家の皆さんも決して忘れることはないでしょうw

それと同時に「これはとんでもない数字をもらってしまった」と思いました。国道246号線沿いで1番にならなければならない運命の企業になってしまったのです。初めはこのプレッシャーで夜も眠れない日が続きました。「俺たちは何で1番になればいいのか?」自問自答が続きます。売上か?利益か?社員数か?オフィスにいる犬の頭数か?本当に悩みました。そしてこの苦しみから抜け出すために、とりあえずいつものようにいい加減に決めましたw

「そうだネット企業と言われる分野で1番と呼ばれる会社なろう」と。

すると、もう一人の自分が言いました。

「おいおい、IT企業というと246号沿いにはあのお世話になっているGMOグループがあるぞ。」
「熊谷社長ごめんなさい」(何がw)

おっと、話がずれました。今回はそんな話をするためにブログを書いているわけではありません。
愛です。渋谷区渋谷1丁目1番地に対する果てしなく、そして深い私たちの愛の話です。私たちはこの地をこよなく愛してます。

まずはこの愛が溢れる写真を見てください。

私たちはこの地を愛するあまり、2004年に4Fワンフロアを借りたその日から「渋谷1丁目1番地物語」を紡ぎはじめ、今やオフィスのオーナーが所有する9F、店舗が入る1Fと地下を除いて、ほとどんのフロアを事務所に使っています。そしてこの愛は今や頂点に達し、そろそろ5Fを借りている会社にも届いて「ファンコミさんがそんなにこの場所を愛しているのなら私たちは引っ越しますからこのフロアもぜひ使ってください」と言っていただける日が来るような気がしてなりません。

ちなみに先日、総務の人間が5Fを訪ね「あのー、」といった瞬間に、

「私たちに移転の予定はありません」

ときっぱりと断られてきました。


まだ愛が伝わっていない・・・・。

それでも私たちの渋谷1丁目1番地に対する愛はさらに日に日に大きくなるばかりです。そんでもってそんな思いを、ぼくと副社長で組む音楽ユニット「ファンクスブラザーズ」で曲にのせたのでした。

今回はその紹介でブログを書いているのです。ぼくらの渋谷1丁目1番地に対する愛を70年代の形で表現してしみました。そう、もう一言付け加えるならぼくらの青山通りに対する思いは70年代からなんら変わっいないのです。曲名はズバリ「ようこそ、渋谷一丁目一番地」です。

ちなみにこの曲はファンクスブラザーズの2曲目です。1曲目をまだ聞いていない方はそちらも聞いてみなければなりません。こちらはネット広告会社の「広告トラッキングの悲哀と革新」を唄った「Tracking Sensation」です。2曲聞いていただければ、ぼくらの音楽に対する一貫したコンセプトを理解していただけるはずです。

それでは今年もあととわずか。風邪など召さぬよう皆様には素晴らしいキューティクルが輝く山下達郎が奏でるクリスマスが訪れますようお祈り申し上げます。

@ankeiy

ナスダック高値更新記念!いま日本のネット企業で何が起こっているのか。

ついに米ナスダック市場の指数が高値超えましたね。前回の最高値が2000年3月ですから、15年ぶりの出来事ですね。思えばこの15年間、ITバブルの崩壊、911テロ、リーマンショックと数々の困難を乗り越えてのようやくの高値です。感慨深いですね。個人的にも15年前は、2歳の子供を膝に抱えて早朝、ナスダックに上場する企業の株価をチェックしていたんですけど、その子がもう高校3年生になるんですよ。時の流れとは速いものです。

日経新聞に高値更新に関する記事が出ていたんですけど、ナスダックもこの15年でいろいろあったようです。まず、上場企業数が4800社から約半数になっているそうです。ナスダックといえばITやバイオなどの新興企業が多いですから、出入りが多いのは仕方ないと思いますが、数がそんなに減っていたとは驚きです。多くの新興企業が退場を余儀なくされ、また上場のハードルが上がっている(あるいは上場する前に企業売却する動きが広がっている)ということがいえると思います。ツイッターやアリババのようなIT企業がNYSEに取られてしまうなんていう市場間の競争も激しくなっているのでしょう。

ナスダック高値更新をけん引する銘柄もずいぶん変わりました。昔はマイクロソフトとかオラクルとかのソフトウェア開発企業が中心だったんですけど、今はグーグル、アマゾン、フェイスブックなどのネット企業が中心です。しかも、それもそれぞれの企業が時価総額数十兆円というとんでもない規模の企業になっています。

さて、これから高値を突破したナスダックはどうなるのでしょうか?米国の金融引き締めやギリシャ破たん懸念などに左右されることは間違いありませんが、高値達成感でいっぷくなんてこともあるかもしれません。いま、第一四半期の決算の真っただ中なので、個別の銘柄の状況にも触れておくと、フェイスブックもグーグルもすごく数字はいいんですが、利益の伸び率がちょっと落ちているんですよね。これはモバイル化や動画化で広告のクリック単価が下がっているということもあるんですが、開発や買収競争が激化していてコストの上昇も激しいんですよね。広告中心にビジネスが成り立っている企業はレッドオーシャンで戦うという宿命をもっているので仕方ないんですけどね。一方相変わらず赤字継続中のアマゾンですけど、こちらは再評価されているようです。赤字なのに再評価って変な話なんですが、急成長しているクラウドサービスの利益に言及したらしいんですけどこれが思った以上に利益率が高かったということが好感されているようです。世の中わからないもんですね。こんな流れが指数に影響を及ぼしていくことでしょう。

さてさて米国の話はこの辺にしておいて、日本のネット企業について少し書きましょう。まずは以下の表をみてください。私がやっているネット企業時価総額上位50社の定点観測です。前回が昨年の10月17日の終値ベースですから、今回4月24日の終値はちょうど半年後の動向ということになります。


*時価総額は2015年4月24日の終値Yahoo!ファイナンスより引用しています。*単位は億円です。千万以下は切り捨て。*プロバイダー専業を除くキャリア、ソフトウェア開発(セキュリティ・会計など)やSI中心の企業は 除いています。*基本サービスや販売ルートがネット中心の会社をセレクトしています。*この他にも知らないすごい会社があるかもしれませんがご容赦ください。*リクルートトランスコスモスなど微妙な会社は除いています。あと任天堂スクウェアなども。


まず全体の動きですが、50社全体の時価総額総計が半年で約44%上昇しています。すごいですね。でもこれはアベノミクスの恩恵も大きいと思います。日経平均もこの間大きく上がっていますので、ネット企業のセクターだけが高いパフォーマンスだったととは言えないですね。

それではもう少し個別に見ていきましょう。まず、この半年間の出来事としては楽天がヤフーの時価総額を抜くなんていう局面がありました。今回の数字では残念ながら楽天は2位ですが、この半年間の株価上昇が光りますね。国内事業の業績が順調ということもありますが、いままで海外に積極的に投資している分が今後回収に向かうのではないかという期待が大きいようです。

エムスリー、カカクコム、スタートトウディなどの企業も順調な業績から株価を伸ばしました。Monotaroも大きく値を飛ばしています。ゲーム関係はまちまちですかね。その中でネクソンは躍進していますね。あと、サイバーエージェント。こちらはゲーム、広告、投資とまんべんなく業績を伸ばし、高い評価を受けていますね。DeNAが大きく伸びたのはご存じ任天堂との提携ですかね。Aiming、Gumiという直近IPO組もランクインしています。

その他、ネット企業の老舗、GMOグループの株価が大きく見直されていますね。GMOクリックホールディングスも初登場しています。業界的に元気なのは、ぐるなび、一休などでしょうか。こちらは本年1800万人に到達するのではないかという旅行客のインバウンド消費期待でしょうか。逆に元気がないのがネット広告業界ですかね。サイバーエージェントをのぞいては軒並みダウン、ランク外にはずれてしまった企業も数社ありました。これはスマホ普及が一巡してしまったなどの理由で市長の成長期待がしぼんでしまっているのでしょうか。まだネット広告1兆円市場になったばかりじゃないですかw

あれあれ、また27位にあるファンコミュニケーションズという会社に青い網掛けがされていますね。不思議ですね。これは何でしょう?ブログ書いていると、この会社にはなんか頑張ってもらいたいと思ってしまうんですよね。謎ですね。そんな思いが網掛けに化けるのでしょうかw

さてさて、ざっと書いてきましたが、時価総額、株価というのは企業の業績+その企業の持つ将来への期待で決まります。業績がいいからと言って必ずしも株価は上がるものではなく、大きな夢ばかり語っても業績が追いついてこなければ必ず市場から見放されてしまいます。投資をする際はとにかくまずは自己責任をしっかり確立して、投資先の企業を良く調べ、業界を調べ、過去の株価を調べ、市場の将来性を調べ、調べ調べすることをお勧めします。短期でちょこっと儲けようという人はちょこっとだけリスクも高いので十分お気を付けください。このブログも一切投資を勧誘するものではございませんのでご自分の頭で考えて日本の未来を買ってくださいね。

先週末現在時価総額1兆円を超えている国内企業は131社、その中でネット企業はまだたった2社です。ネット経済の大きさを考えればまだまだその可能性は大きいはずです。しっかりと足を固めつつ、日本のネット企業にはこれからも頑張ってもらいたいと思います。

現場からは以上です。

@ankeiy

動画がどうがしましたか?という話。

Lineの前社長もなんだか動画のサービスをはじめるらしいですね。動画のビジネスがいろいろ出てきてますね。年収数億円を稼ぐYoutuberの登場も衝撃的ですからね。ぼくが驚いたたのはぼくが代表をしている会社をフォローしてくれていた証券アナリストが突然Youtuberをとりまとめるプロダクションに転職したことです。さぞ高給だったろうに・・・w。うちのレポートはどうなるんだw

米ネットフリックスの躍進もすごいですね。レンタルビデオがなくなり次はTV局かなって?話もちらほら。スマホの登場でダブルスクリーン化したテレビは延命しているように見えますが、本気でネットの波が来たらひとたまりsですむにゃむないrkふ。・・この辺の話は危険なのでw

今日ははそんな話をしようと思ってブログを書いているわけではありません。動画時代に対応すべく、我々も日々動画づくりに励んでいることを紹介したくなったわけです。そう、動画づくりの楽しい世界。

まずはこちらの動画を観てください。

これは昨年ぼくが製作した、たぶん日本で初となる東証一部上場企業の社長と副社長がユニットを組んでヒップホップしているという動画です。恥ずかしいですね。普通、上場企業の社長は、ラップなど歌いません。黒塗りの車が家まで迎えにきて、オフィスに向かい、難しい会議を数々こなし、夜は銀座のクラブで頭の大きなおねーさんたちと飲むというようなイメージじゃないでしょうか。ラップなどという反社会的な香りを感じさせるようなことをしてはいけません。カラオケでは人情一筋の演歌がいいに決まっています。
しかし、何なのでしょう。この文章を書いているときの違和感。なんか他人事のように書いていますね。そう、何を隠そうこの動画でスタジャンを着て、「ちょっと普通にしたなぎら健一風」の男がぼくというわけです。そこをまずお伝えしなければなりませんでした。まさに黒歴史決定!。欽ちゃんが出てきそうです。ぼくも駒澤大学からやり直したいくらいです。きっと、ぼくの葬式のときにはたぶん多くの人がこの動画を振り返り「やっちまったなあ」とつぶやくことでしょう。

しかし、ここで歌っている動画の中の恥ずかしさのころもに包まれた深い森の底には、重い意味を持つリリックの川が流れているのです。そこで「おーいまったく意味がわからないぞ」的な方のために今回はこの曲の歌詞の持つ意味を紹介したいと思います。そもそもそんなこと知りたくもないと思いますが、誰も知りたくないなんてことはぼくからしてみれば知ったこっちゃありません。

この歌詞はぼくではなく、副社長が作りました。彼はある種の天才なので、コンテクストが宇宙を突き抜けておりますので、そのあたりを中心に解説させていただきたいと思います。

まずは歌詞の全文をご賞味ください。(長いのでとばしちゃっても文章は読めますw)

クークッキー
クークッキー
(Cookie Cookie)

食べちゃえ!食べちゃえ!さあ食べちゃえ!
(eat it! eat it! Let's eat it!)


食わない。食えねえ。寿司食いね。
(won't eat it, can't eat it, How's Sushi?)


嫌だ嫌だも好きのうち。
("dislike" means "i like this")

プライバシー?あんたの?
(privacy? Yours?)

興味ねえよ、知らねえよ。
(no interest! who's care?!)

俺はただ人類を結び付けるだけ。
(i just wanna make people connected)

便利に買い物させたいだけ。
(just make their shopping more convenient)

わかってくれよ。
(trust my passion)

くれよ、くれよ、
(mission, action)

クレヨン、欲しい。マーキングしなきゃ。
(i just need magic crayon to mark it)

お前は、ブルー。
(you are blue, one is blue)

あいつは、グリーン。
(he is green,another is green)

わかってくれたら、結構毛だらけ、クッキー食い倒れ!
(if you got it, just fine!
you will be falling love with cookie)

                                    • -

せせ成果
せせ成果

(CPAction CPAction)

上げちゃえ!上げちゃえ!さあ上げちゃえ!
(buy it! buy it! Let's buy it!)

下げない。上げねえ。どっちだよ。
(keep it?cancel it?which one?!)


右下げないで、顔上げて!
(don't get confused! face it wisely!)

何買った?あんたが?
(bought what?who did buy? you?)


興味ねえよ、知らねえよ。

俺はただ人類を結び付けるだけ。
便利に買い物させたいだけ。

わかってくれよ。
くれよ、くれよ、
クレヨン、欲しい。
マーキングしなきゃ。
お前は、ブルー。
あいつは、グリーン。

わかってくれたら、
結構毛だらけ、成果上げまくれ!
(you will be falling love with CPA!)

                                    • -

クークリック
クークリック
(CPClick CPClick)

押しちゃえ!押しちゃえ!さあ押しちゃえ!
(push it push it Let's push it!)

押さない。押したれ。押し問答。
(wanna push it? won't push it! push quarrel away!)

押し売り反対、気持ち優先!
(no pushy salespeople! push with your feeling!)


何押した?あんたが?
(pushed what? who did push? you?)

興味ねえよ、知らねえよ。

俺はただ人類を結び付けるだけ。
便利に買い物させたいだけ。

わかってくれよ。
くれよ、くれよ、
クレヨン、欲しい。
マーキングしなきゃ。
お前は、ブルー。
あいつは、グリーン。

わかってくれたら、
結構毛だらけ、モアクリック!
(you will be falling love with CPC!)

                                    • -

ハッハ配信
ハッハ配信
(CPMille CPMille)


配っちゃえ!配っちゃえ!さあ配っちゃえ!
(deliver it deliver it Let's deliver it)

配れ。配らん。気配り大事。
(deliver it right, deliver it fast, deliver it with care)


ご不在時には、再配送。
(when nobody is there, redeliver it later!)

何を送った?あんたに?
(delivered what? to whom? you?)


興味ねえよ、知らねえよ。

俺はただ人類を結び付けるだけ。
便利に買い物させたいだけ。

わかってくれよ。
くれよ、くれよ、
クレヨン、欲しい。
マーキングしなきゃ。
お前は、ブルー。
あいつは、グリーン。

わかってくれたら、
結構毛だらけ、全力配信!
(you will be falling love with CPM!)

                                    • -

ダッダウンロード
ダッダウンロード
(Download Download)

落としちゃえ!落としちゃえ!さあ落としちゃえ!
(get it down get it down Let's get it down!)

落ちれ。落ちない。落とし前。
(wanna get it down? won't get it down? let's settle it down)

落語大好き、オチ最高
(love Rakugo! it's getting into the punch line!)

何を落とした?あんたが?
(get what down? who did? you?)

興味ねえよ、知らねえよ。

俺はただ人類を結び付けるだけ。
便利に買い物させたいだけ。

わかってくれよ。
くれよ、くれよ、
クレヨン、欲しい。
マーキングしなきゃ。
お前は、ブルー。
あいつは、グリーン。

わかってくれたら、
結構毛だらけ、フルダウンロード!
(you will be falling love with Download!)

                                                                                                                      • -

ながい。長すぎる。しかし気を取り直して解説しましょう。

この曲のタイトルは「トラッキングブルース」と言います。トラッキングというのは、ネット上のユーザーの動きを追跡する仕組みでネット広告ビジネスのコアテクノロジーとなっていることはご存じの方も多いと思いますが、そう、何を隠そう、隠していないwこの曲はネット広告のビジネスの悲哀を歌ったものなのです。


このトラッキングテクノロジーの現在ベースになっているのがクッキーと言われる技術です。この技術でユーザーの動きを追跡できるのです。そこで、「クッキー、クッキー、食べちゃえ」のフレーズです。高度に食べ物のクッキーとダブルミーニングされ、食べちゃえというオチになっているのです。最初から笑えますね。笑いすぎて喉の渇きを覚えると思います。

そして、突然くる「プライバシー、あんたの」のフレーズ。そうこのトラッキング技術は常にプライバシーと表裏一体、ユーザーからは常に俺の行動を追跡しやがってという白い眼で見られる危険性をはらんでいます。そこですかさず「興味ねーよ、知らねえよ」と。ぬべもなく否定します。そう、ネット広告の事業者はクッキーを利用しているだけで、ユーザーのプライバシーには興味ないということなのです。

そして、決め台詞はこれです。「俺はただ人類を結び付けるだけ。便利に買い物させたいだけ。」そう広告事業者は人類をクリックによって結び付け、オンラインの便利な買い物を提供しているだけという叫びがここにはあるのです。熱いですね。暑すぎますw

なんて、書いていたら疲れてきましたので、ここらで歌詞の解説は終わりにしたいと思います。おっ、最後に大切なことを忘れていました。「お前はグリーン、あいつはブルー」という歌詞ですが、ぼくは「お前はホワイト、あいつはブラック」の方がいいんじゃないかと言いました。なぜなら、ネットメディアの世界では、「ホワイトハット的な人とブラックハット的な人が存在している」と言われているからです。本当か嘘か知りません。そういう噂です。けれども副社長は言うのです。「ここでブラックとホワイト」を使うと人種差別を連想させ、世界の人々から批判を受けるかもしれないと。そう、世界です。誰も見ていない動画でも世界を見ていた副社長をぼくは見直しました。と同時に、一時でも世界のことを忘れていた自分を恥ずかしく思いました。それで無難に肌の色がないグリーンとブルーになったわけです。宇宙にはグリーンの生物もいるかもしれませんが、今のところ宇宙のことは意識しないことにしました。

まあ、意味もなく英訳を表示しているところなんか。まさに世界を意識した動画と言えるでしょう。ネットの動画の世界とはなんとすごいのでしょうか。誰に見られることなくても勝手に世界を意識できるのです。最後の最後にこの動画を上げて、やはり気になるのが4分という尺の長さです。この動画は最初の30秒で観る人を完全に飽きさせているのに、4分も引っ張るというとんでもない構造になっているということです。動画ビジネスというのは、ユーザーの大切な時間をそれだけのために占有するという厳しさを持っているのです。もし、ぼくがLineの前社長の新しい仕事にアドバイスするなら、いらないと思いますが、「動画は短くしとけ」ってことです。

さて、ぼくたちの動画の旅は始まったばかりです。次回作はサブちゃんをほうふつさせる演歌になるのか、はたまたNSPを思い出し涙するフォークソングになるのか、サーカスになるのか神のみぞ知るということでしょう。

追伸、歌詞中、yo-yoというところで、副社長がやっているヨーヨーはこのために100円ショップで買ってきたヨーヨーで、両手で同時にヨーヨーするためにかなりの努力を要したことも申し添えておきましょう。

@ankeiy

環境が人を作る、人が環境を作るという件について

何年か前に、ぼくの先輩が「肺がん」になってしまって、まあ若いときからタバコと酒がんがんでしたからやっぱりって感じもするような遊び大好きな人なんですけど、もちろん今も、片肺がなくなっても元気に飲み歩いているんですけどねw。その先輩が癌になったときに、高3の息子さんがいてね。それまで反発して、学校行かなかったり、髪の毛青くして相当やんちゃしていたらしんだけど、父親が「がん」で死ぬかもしれないってなったときからね。「突然、俺医者になる!」って言いだして、猛勉強し始めて、浪人して、難関校の医学部入って、今や立派なお医者さんになっているんですよね。聞くところによると救命で寝る時間もないらしいんだけど、先輩は命を救うためにがんばっている息子のことをすごく誇らしげに話してくれました。

きっかけと環境って違うと思うんですよ。モノゴトには必ずきっかけがあって、例えば華やかなアイドルをTVで観て、アイドルを目指すようになった。立派な経営者の本を読んで経営者になりたいと思った。これみんなきっかけだと思うんですが、そこから先、本当に華やかなアイドルになれるのか?、立派な経営者になれるのか?っていうのは、その人の持って生まれた環境に由来すると思うんですよね。「きっかけ」はそこらじゅうに転がっていると思うんですが、環境ってのはその人にひとつしかない。世界に一つしかないアイデンティティを生み出すわけですよね。父親が癌になって医者を目指す子供がどんな環境で育ってきたのかはよくわかりませんが、そうさせる何かがその子の環境にあったわけですよね。きっと。

なんで、こんな当たり前の話をするかっていうと、最近、ほとほと、人間を成長させるっていうか、生きさせる力っていうのは環境にあるんだなあと痛感しているからですよ。人間の成長には教育が大切だっていうことで知識詰め込んだり、教え方がどうだこうだとかいろんなところで議論していますが、環境の力はあらゆる教育手段を超越しているとあらためて思うんですよね。

この前、信州大学の学長が、「スマホやめますか?信大やめますか?」って話題になっていましたけど、スマホやめることで変わる環境なんて大したことないと思うんですよ。Lineができない?ゲームができない?人を生かす環境としてはどうでもいい話のように思いました。それより、信大やめて全く違う場所でまったく違うことをする環境の選択もある、そういう観点から、そのもう一つの環境に負けない覚悟で大学で環境を作ってくださいというくらいのほうが共感できるわけです。ぼく的には。

日経新聞の「私の履歴書」でニトリの創業者の壮絶な人生が話題になっていますが、貧困、虐待、いじめ、今なら一つでも大騒ぎなりそうな社会問題のデパートのような生い立ちを持つニトリの創業者が、歯を食いしばって生きていく。その中で生まれたコンプレックス、反骨心や様々な生きぬくための工夫が、急成長していくニトリの源泉になって名経営者になっていくんだと思いますが、このニトリの創業者の生まれ育った環境はこの人だけのもので、誰も手に入れることはできないわけです。そして確実に言えるのは、この環境がなければ今のニトリはなく、創業者がゼロから築いた数千億円の資産もあり得なかったわけです。

もうひとつ、先日孫さんが留学する日本人に贈ったスピーチを動画で観ました。
まだの人は見てください。これです。⇒トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム 第1期派遣留学生壮行会 支援企業からの激励メッセージ ソフトバンク株式会社 代表取締役社長 孫正義様:文部科学省 - YouTube
話を要約すると、孫さんのお爺さんが韓国から船底に隠れて日本に渡り、勝手にJRの土地に住み着く、そこで生きていくためのいろんな商売をする、貧困、いじめ、孫少年を襲う数々の苦難。そんな中で父親が倒れる。高校生の兄は、学校を止めて家族を支える決意をする、そんな中で孫さんは米国留学をする。「今は兄貴頼む。将来は俺が支えるから」という覚悟のもとに。孫さん家族が住んでいた場所には番地がない。「無番地」。人の住む場所じゃないからだ。孫さんは今でも自分に問いかける。中国、韓国、日本、俺のアイデンティティとは何だ?グローバルとは?まあ、話を聞くだけで、とんでもない環境をくぐり抜けてきているわけですよ。
ぼくも孫さんを経営者としてものすごく尊敬しているんですけど、どう考えてもいま日本で一番のアントレプレナーであり、経営者であることは間違いないですよね。憧れている人も多いと思います。俺もあんな経営者になってみたい?俺も孫さんと同じようなグローバルな企業を作ってみたい。イノベーションを起こしてみたい。けれども、あの孫さんの壮絶な環境から生まれている孫さんを動かしていくエネルギーは残念ながら、そう思う人の大半には手に入れることはできません。真似できるのはハゲくらいですw

テスラのイーロン・マスク、ペイパルマフィアw、こうしたアントレプレナーが日本でもヒーロー的に扱われますし、よし日本でもそんなイノベーションをと思う人もいるでしょう。でも、残念ながらアメリカという国で生まれ、どんな環境で育ったかわからないですけど、世界を変えなきゃいけないというか世界は俺たちが動かしているという風土の中で生活してきた人、ヒューマニズム、宗教そんな環境をぼくたち日本人は絶対手に入れられないんですよね。つまり、作り出すモチベーションの源泉がまったく違うわけです。「火星に移住しなければ人類の存続はない」などという日本人をみたこともありませんw

最近気づいたんですが、「きっかけ」を探すことに一生懸命になっていて、環境を作ることを怠っている人って結構多いんだなあということです。生活や仕事で規則やモラルにがんじがらめになりながら、どんなに「イノベーションを起こす方法」という本を読んでも、どんなに偉い人に会って良い話を聞いても、決してイノベーションを起きないわけです。けれどもそういう本を読むことで、人と会うことで自分が変わるきっかけをつかみたいと思う。気持ちはわかりますよ。けれども、きっかけをどんな積み重ねてもあくまできっかけ、環境はもっと根の深いところにあるんです。そして、環境からしか未来の自分は生まれないということです。

とりとめのない話になってしまいましたが、ぼくも仕事がら就活生と話す機会がたくさんあるんですけどね。就活も大企業とかベンチャーとかどこに就職しても生きていくために対して差はないと思うんですよ。でもね。重要なのは「環境」です。もし苦労しそうな環境だからやめる。と、考えるなら思いとどまった方がいいかもしれません。厳しい環境は未来のあなたを作る大切なリソースだからです。まあ、「苦労は買ってでもしろ」なんて言うと、おやじ臭が強烈ですけど、実際に、未来で何かすごいことをしたいと考えるなら、今はわからないけどその源泉となるエネルギーを手にいれたいと思うなら、綺麗でかっこよくて優しい先輩に囲まれて長く勤められるような会社は選ぶべきではないでしょうねw

ぼくたちは毎日仕事をしています。この仕事もぼくたちの未来を作る環境の一つです。無難に、失敗のないように、減点されないように、誰にも怒られませんように。あー今日も無事に終わった。この環境から未来の自分を作り出すエネルギーが生まれるかどうか、考えてみてください。120パーセント全力で上司や顧客にうざがられ、怒られ、それでも自分の仕事の目標を忘れずに愚直に突き進む、社内では他部署と揉める。もうこんな会社いたくないと苦しむ。でも悔しいから高い目標を掲げる。健康な心と肉体を持っている限りは、厳しい環境を作り出せば作り出すほど、それは未来のエネルギーになるはずです。

まあ、世の中にはぬるま湯好きな人も大勢いますから、そういう人はぬるま湯を転々とする技術を磨けばいいと思いますが。

残念ながらというか、当たり前ですが、ぼくらは生まれも場所も、時代も選べません。そこから生まれる環境は動かしようがなく、背伸びをすることもできません。ニトリの創業者にも、孫さんにもなれません。けれども大人になった今は自分で環境は選べます。昔、アイデンティティの経済学という本を読みました。行動経済学の本です。その本の中で印象的だったのは、「行動は無意識の規範で決まる」という言葉です。そう、未来で何をやるのかというのはぼくたちが環境の中で育てた無意識そのものだからです。

また、まじめかw

@ankeiy